暮らすように旅するオーストラリア、パースで数日過ごした後、西海岸沿いの町・フリーマントルへ向かう。事前のリサーチでは、世界遺産にも登録されているフリーマントル刑務所のほか、週末のマーケット、ロットネスト島へのフェリー乗り場と認識した町だが、滞在してみると、思いのほか魅力的な場所に引き込まれる。
オーシャンビューを楽しむ車窓

フリーマントルは、西オーストラリア州都のパースから西へ約20キロほどに位置する。パースとフリーマントル間は鉄道網でカバーされており、30分ほどの列車旅を味わうことができる。
料金は 3.5 オーストラリアドル(=約400円)と、リーズナブルな印象。観光列車というよりは、在来線のような位置付け。
パースを後にした列車は、しばらく閑静な住宅街を走り抜け、Claremont 駅を過ぎ、フリーマントルへ南下を始めるあたりから、オーシャンビューの景色が車窓に広がる。
地元の人には見慣れた景色で、車内のほとんどの乗客は、その車窓の変化に注意を払うこともなく、携帯電話に視線を落としたままである一方、初めて訪れる観光客の身には、その車窓の景色の変化に心を動かされ、フリーマントルへの旅の期待が高まる。
世界遺産フリーマントル刑務所

フリーマントルを訪問する目的の1つが、世界遺産フリーマントル刑務所を改築したホステルに宿泊すること。その宿泊の様子は、暮らすように旅するオーストラリア #2 旅の宿 5つ星ホテルからドミトリー部屋までを参照。

同刑務所は、すでに刑務所としての役割は終えており、観光客向けの館内ツアーが実施されている。訪問者は個人で自由に館内を見学することはできず、いずれかのガイド付きツアーに参加することになる。

主に5つの見学ツアーが組まれており、ツアー開始時刻もそれぞれ異なるため、希望のツアー内容をチェックした上で、訪問のスケジュールを立てるのがおすすめ。フリーマントル刑務所内のホステルに宿泊する場合は、見学ツアーの割引も受けられる。その割引を利用して「Behind bars tour」に参加。見学ツアー料金は22オーストラリアドル(=約2,600円)



見学ツアーのガイドによる説明で、最も衝撃を受けたのは、独房内に水洗トイレや水道の設置がなかったこと。これは、刑務所としての運用が開始された1855年当初だけの話ではなく、刑務所が閉鎖された1991年まで、その状態が継続されたという。
囚人たちはバケツを利用して排泄物を処理する環境下に置かれていた。刑務所の外でも十分なインフラが整備されていない国ならともかく、オーストラリアの刑務所でこのような環境が20世紀まで続いていたことに衝撃を受ける。

また、刑務所の閉鎖が決定した後、囚人たちは独房内の壁に絵を描くことが許され、いまでもその鮮やかなペイントが残されている。

刑務所を取り囲む塀や建物の外観からは、モダンな印象を受けた施設も、その中では劣悪な環境に囚人が苦しんでいたことが伺い知れて、貴重な学びとなった。

見学ツアーが終了すれば閉館となるフリーマントル刑務所。上述のように、その一画はホステルとして改築されているほか、製菓を学ぶコースの学校としても利用されている。
夜には、正門がライトアップされフリーマントルの夜空に重厚しい姿が浮かび上がる。
ビーチでサンセット

コンパクトな印象を受けたパースよりさらに、中心部に見どころが集約されたような町・フリーマントル。その中心部から Bathers Beach までは徒歩圏内。
フリーマントルに到着した日の天気は快晴。もしかしたら、水平線に沈んでいく夕日がみれるかもしれないと、そのビーチを目指す。
南モール灯台(South Mole Lighthouse)に隠れるように太陽が徐々に高度を下げて、一日の役割を終えていく。ビーチの周りにはバーもあり、美しい夕日に思わずワインが飲みたくなったが、QRコードから注文しなければならないということで、煩わしさから断念。
日常生活ではなかなか朝日や夕日に注意を払う余裕がないのが現実だが、こうしてゆっくりと太陽と向き合う時間を持てるのは旅をしている時ならではの特権。
ハーモニーを感じさせる街並み

パースは西オーストラリアの州都ということもあり、シェブロンやリオティントなど名だたる企業の高層ビルが立ち並んでいる一方、フリーマントルの中心部には高層ビルがなく、空が広く感じられる。
中心部は調和のとれた雰囲気の一画に、レストランやパブなどの飲食店やショップ、ホテルなどが立ち並ぶ。

店に立ち寄らずに中心部を街歩きするだけなら、1、2時間もあれば主なエリアは回れてしまう規模。統一感のある街並みに思わず、街歩きの足取りも軽快になる。

中心部からビーチの方に足を伸ばす途中、アトリエのような倉庫の建物の前を通過。思わず、色とりどりの扉に目を引かれ、カメラのシャッターを切る。

フリーマントルの目玉の1つが金曜日から週末にかけて開かれるマーケット。1897年にオープンした歴史ある市場。残念ながら今回の滞在中は、スケジュールが合わず。それでも味わいのある建物は、市が立っていなくてもその雰囲気を少しばかり感じ取ることができる。
こだわりのショップ巡り

そんなフリーマントルの街歩きで目に留まったショップを紹介。まず最初はレコード店。ストリーミング全盛の時代に、あえてアナログなレコード。レトロな佇まいの店の雰囲気が味わい深い。レコードのジャケットを眺めるだけでも楽しいお店。

続いては食材店の「KAKULAS SISTER」フリーマントル駅から宿泊先までの道のりで前を通りかかった際、外から見えた店内の雰囲気に思わず見とれる。

量り売りのナッツや調味料など、ディスプレイがアートの域に達している。フリーマントルに住んでいたら、こういうお店で食料品の買い物をしたいと思わせる空間。
食べ物には目がない旅人としては、店内をくまなく見て回っていると、思わず時間が経っているのを忘れてしまうくらい、魅力的な店舗。

最後はフリーマントルアートセンターのギフトショップ。アートセンターは中心部から少し離れているが、それでも徒歩圏内。入館料は無料で、アート作品の展示を楽しむこともできる。

アートセンターそのものは、それほど大きな規模ではないが、そのサイズを考慮すると、ギフトショップの充実ぶりが目を引く。思わず手に取ってみたくなる雑貨やアクセサリーのラインナップが充実している。
刑務所とマーケットくらいの事前情報しか得ていなかったが、フリーマントルの調和の取れた雰囲気は街歩きを存分に楽しませてくれる。ビーチまでの距離も近く、旅先としては期待以上のデスティネーションという印象を残してくれた。
