甘いものには目がない身にとって、毎日でも食べたくなるチョコレート。世界中で嗜好されるお菓子は、その国ならではの製品があり、ローカルな商品を探求するのも海外駐在生活の楽しみの1つ。ベネズエラは高品質なカカオの生産地として国際的な評価が高く、そのチョコレートに俄然興味が高まる。ベネズエラのチョコレート事情を紹介する話。
チョコレートは不人気?
カカオの生産量としては世界的には影を潜めるベネズエラではあるが、希少種のクリオロ種に限ればは世界でも有数の生産地として高評価を受ける。
そんなカカオ生産地のベネズエラだが、チョコレートが日常生活に浸透しているかと問われれば、ちょっと寂しい印象を受ける。
例えば、スイスのスーパーように大々的なチョコレートセクションが存在するわけでもなく、ローカルなチョコレートよりもネスレやハーシーといったグローバルサプライヤーの製品が目に付く。
隣国のコロンビアではスーパーでもローカルなチョコレートを取り扱っている店舗も多く、板チョコとして消費する以外にも、ココアとして消費するのも一般的で、食後やお茶の時間にココアを提供されることもよくあった。
しかし、ベネズエラではコロンビアに負けずコーヒーを提供されることはあっても、ココアはまずない。
山岳地帯を除けば、熱帯・亜熱帯地域が多く、かつ電力の供給が不安定で停電が頻発するため、チョコレートの管理には向かないという事情もあるせいか、板チョコをおやつとして食べているのを目にする機会はほとんどないのが実情。
カカオの生産地にも関わらず、チョコレートは不人気なのかと思いきや、アイスクリーム屋さんには必ずチョコレート味の選択肢はあり、その人気は他の味と変わらないようだ。
チョコレートは高級品
カカオの生産国は、輸出に専念して、最終製品のチョコレートの製造まで手掛けることは少なく、地元のカカオから作られたローカルな製品に巡り合う機会は貴重。
ベネズエラで、ローカルなチョコレートに出会う機会になかなか恵まれなかったが、同僚を通じてSant Reyのチョコレートに巡り合った。
パケ買いしたくなるようなデザイン。日本へのお土産にも最適かもしれない。
ローカル製品との出会いに高揚感に包まれたのも束の間、その値段に一瞬、腰が引ける。板チョコ1枚5米ドル(=約750円)。円安に加え、カカオの国際取引価格が上昇しているとはいえ、なかなかのお値段。
日本で100円そこそこでチョコレートが楽しめていたのが遠い昔の記憶のかなたへ消えていく。
とはいえ、地元の産業の支援や生産者への正当な支払いの観点からすれば、妥当なお値段なのかもしれない。今回は、同僚の紹介で生産者の方から直接”仕入れ”の形で購入させてもらったので、卸売り価格で少し割安に手に入れることができた。
純粋なカカオの味わいが漂うチョコレート
今回購入したチョコレートは、ダークチョコレート70%、ホワイトチョコのニブス入り、ダークチョコレートのオレンジ味の3種類。
カカオ本来の味わいを探るべく、80%、90%のダークチョコレートを探していたが、70%の濃度までの商品展開という。
パッケージのフィルムが薄いせいなのか、あるいはカカオの香りが強いせいか、チョコレートの匂いが伝わってくる。高まる期待。パッケージを開けて、ワインのように香りから堪能。まずは酸味が鼻を突くような刺激に迎え入れられ、じわりじわりのその後にカカオの香りが広がっていく。
この印象は食べたときにも変わらず、チョコレートを噛んだ瞬間は、まずは柑橘系のフルーツを含んだかのような酸っぱさが一瞬、口の中に広がる。その酸味が収まったのか、あるいはその酸味に口が慣れた頃合に、カカオの香りがゆっくりと口の中に充満していく。
ハイテクな製造機で作られた洗練されたチョコレートとは一線を画して、素朴なカカオの味が楽しめるような印象。
続いて、オレンジ味。チョコレートとオレンジの愛称は言及するまでもなく、ベストカップルといっても過言ではない。ダークチョコレートの酸味が口の中に広がった後、カカオとオレンジが一体となった香りに包まれる。期待を裏切らない。
最後のホワイトチョコとニブス。ニブスが含まれていると、他のメーカーではお値段が少し高くなる傾向があるが、こちらの商品は他の商品と同額。
ホワイトチョコレートのまろやかさが口の中を満たしていき、少し物足りなさを感じるころに、ニブスがパンチを効かせるようにカカオの味わいを補完してくれる。
初めてのベネズエラのローカルなチョコレートは、リピート買いしたくなる満足度で締めくくられた。