フィリンピン料理と耳にして思い浮かぶものは何かあるだろうか。正直なところ、マニラへの赴任が決まった時点で想像できたフィリンピン料理は何もなかった。同じ東南アジアでもタイならトムヤムクン、グリーンカレー、パッタイ、ベトナムならフォーにバインミーなどご当地グルメがイメージできる一方、フィリピン人出稼ぎ労働者が世界中に散らばる割には、そのグルメの存在感は案外薄いのかもしれない。
個別のフィリピングルメは別の機会に紹介するとして、今回はフィリピンの主食であるコメにまつわる話を紹介しよう。
絶対的な主食の位置をキープ
フィリピンの地での稲作は、イフガオ族によって2000年以上前に始まったという説や、数百年前からという説もあるが、いずれにせよ、古の時代からコメが主食であった。
同じく主食がコメの日本では、昭和、平成、令和と時代の移り変わりとともに、食生活も変化し、農水省によると、1人当たりのコメの消費量は、1962年度の118.3キロをピークに、2024年度には53.4キロまで半減している。
同じようなフィリピンの公式データは見つけられなかったが、フィリピン政府公表の関連データによると、フィリピン人の1日のエネルギー摂取量のうち58%はコメからもたらされているということで、コメが主食であることは間違いなさそうだ。
フィリピンには300年以上のスペインによる植民地、約50年に及ぶアメリカの支配という歴史があるが、それでも、その間に主食がコメから小麦に置き換わり、パンやパスタが台頭するという歴史はたどらなかったようだ。
マクドナルドのメニューにもコメ

フィリピンのコメ文化に適応させるかのように、マクドナルドにはハンバーガーの代わりにコメがセットとなるメニューがあるくらい。
さすがに、この看板を見かけたときは、驚いて思わず写真を撮ってしまった。
オフィスでフィリピン人の同僚のお弁当を観察してみると、やはりほとんどの人がコメを消費している。ランチは軽くパスタやパンで済ませるというよりは、しっかりとコメを食べてエネルギーをチャージしている印象。

レストランで食事をする際には、前菜やメインを選ぶと、ライスの有無を店員さんから尋ねられることがほとんど。時折、尋ねもせずに暗黙の了解でご飯が運ばれてくるくらい、食事にとってコメは不可欠なのだ。
時には、大胆に文字通り山盛りになって運ばれてくるコメの姿に、メインのおいしそうなシーフードよりも視線を奪われてしまうこともしばし。
ヤシの木と田園風景

マニラ中心部のオフィス街で仕事をしている限りは、フィリピン人が大量に消費するコメがどこからもたらされるのか疑問に感じるかもしれないが、マニラを離れて少し地方都市に足を運べば、稲作の風景が広がる。ヤシの木をバックに稲穂が垂れる姿は、南国のフィリピンらしい景色。
常夏のフィリピンでは2月から3月の乾季の時期と9月から10月の雨季の時期にコメの収穫が行われる模様。日本では冬の時期に、辺り一面に稲穂が黄金色に色づいている光景は、なんとも不思議な感覚に晒される。
地方では、大規模化されていない田園も多く、鎌で稲の束を刈って、その束をまとめて稲こきする光景をあちらこちらで見かける。
見るからに重労働の作業には、農家自身もコメを食べてしっかりとエネルギーをチャージしなければならないので、主食の座はコメが譲りそうにもない。

田園風景を通り抜ける道路を走っていると、道路脇は脱穀前に水分を下げるために籾が天日干しされている。時には数十メートにも及ぶその籾のカーペットが続く姿に、フィリピンでの主食がコメであることを再認識させられる。
農家が丹精を込めてコメ作りに励む一方、フィリピン統計局のデータによると、フィリピン国内のコメの生産量は国内の供給量の約71%にとどまり、一部は輸入に頼らざるを得ないのが現状。
それでも、主食としてのコメの位置づけは変わらず、コメなくしてはフィリンピンでの食事は始まらないと言っても過言ではないくらい。
コメそのものは、味わいはあまりなく、味付けの濃いおかずを共にしてご飯をかけこむのがフィリピン人のスタイルのよう。主食がコメということで、日本の食文化とも繋がる部分が垣間見れて、フィリピンとの距離感が縮まったような気分にさせてくれる。
