スイス訪問時は、いつも親友がすべてアテンドしてくれるため、これまで様々な場所に連れて行ってもらったにも関わらず、その場所の名前すら覚えていない有様。やはり、自分で目的地を定めて、自力で何とかたどり着かないと、旅の記憶としても定着しないことを実感。
親友と別行動となった期間に、スイス連邦鉄道のフレキシブルタイプのレイルパスを利用して、フランス、ドイツ、スイスの3つの国との国境が重なるトライアングル地帯のあるバーゼルへ向かう。
レイルパスで快適な鉄道旅

バーゼルという都市を認識したのは、かつてこの地で時計の国際見本市が開催されていたから。残念ながらそのイベントは2019年をもって終了。最近の腕時計ブームを考慮すれば、もう少し我慢すれば、活況を呈するイベントを継続できたような気もする。もっとも、同じくスイスのジュネーブで開催されるWatches and Wonders (W&W) がその代わりとなっているので、もはや時計のイベントがバーゼルへと回帰する気配はない。
それでも、バーゼルという都市が頭から離れず、スイス訪問の際にはいつかは訪れたいと思い続けて、ついにその時が回ってきた。
事前のリサーチでバーゼルで訪れたい場所、やってみたいことをチェック。リストには、まずはフランス、ドイツ、スイスの国境が交わるトライアングル地帯に立つこと。バーゼル美術館、バーゼル大聖堂、シュパレン門を巡りながら街歩きをして、日帰りで親友宅まで戻ってくる計画。
バーゼルまではチューリッヒ中央駅から列車で1時間ほど。購入の際はトラブルに見舞われたレイルパスだったが、ひとたび有効化できれば、便利そのもの。

スイスは駅に改札もないため、そのまま列車に直行して乗車できる。
移動中に携帯の充電ができるように、コンセントの近くの座席を確保したら、いざ出発。
定刻通り出発し、文字通りあっと言う間にバーゼルに到着。親友のアテンドなしで挑戦した1人旅だったが、拍子抜けするほど簡単に目的地までたどり着けた。

バーゼル駅を降り立ったら、まずはフランス、ドイツ、スイスの国境が交わるトライアングル地帯を目指す。歩いても行けそうな距離だったが、列車を降りた瞬間からここはスイスか?と疑うほどの暑さ。
この日の最高気温は36度に達するくらいの天気。さすがにこの炎天下では歩く気にもならず、市街地を走るトラムに乗って移動。

市街地のバスやトラムの利用は、旅行者にとっては長距離列車と比較すると難易度が上がるが、バーゼルのトラム網は分かりやすく、乗り場も行き先ごとにはっきりと区別されているので、グーグルリサーチを頼りにすれば、難なく利用できた。
トラムもレイルパスでカバーできるので、運賃がかからないのもメリット。トラムを降りて、ライン川沿いを歩いていくと、フランス、ドイツ、スイスの国境地帯を示すモニュメントが現れる。

厳密には、国境が交差する地点は川の水面上ということで、その地点に立つということは叶わないが、スイス側から見て、川を跨いで右手がドイツ、左手がフランスということになる。
島国出身なので、こうした国境地帯、ましてや3ケ国にまたがるとなると、旅情が沸き上がる。これまでにも南米大陸でペルー・ブラジル・コロンビアの国境が交わる場所を訪れた経験もある。
親友にこの地点を訪れる予定を話すと、日常的に国境をまたぐスイス人にとって、わざわざバーゼルまでその目的のために行かなくてもという反応だった。しかし、思いのほか、ほかの観光客の姿もあり、観光スポットとしてはそこそこ認知され、盛り上がっている雰囲気。
最大の目的を果たしたので、あとは気の向くままリラックスしてバーゼルの街を楽しみたいところだが、いかせん暑い。
この気温が街歩きを阻む。

物価の高いスイスをリーズナブルに楽しむため、ランチを持参。親友宅に宿泊しているので、キッチンが利用でき、簡単な食事を準備できるのはありがたい。
ライン川越しのフランスとドイツの領土を眺めながらサンドウィッチを頬張る。今でこそ、フランスとドイツはEU加盟国だが、かつては戦火を交わすよどの関係だったのを、隣国のスイスはどのような目でその争いを見ていたのだろうか?とこの3国の国境地点に立って考えを巡らせる。
避暑対策も兼ねて美術館、教会巡り
再びトラムに乗って中心部まで戻って街歩き再開。しかし、この暑さ。10分とも歩いてられない。暑さから逃れるべく、美術館へ逃避しよう。
目指すはバーゼル美術館。1671年から一般公開が開始された世界最古の公立美術館。350年以上の歴史を感じるべく美術館を目指すも、開館していないことが判明。
暑さも相まって一気に気力が失せる。

しかし、意気消沈して屋外にとどまるわけにはいかない。とにかくどこか室内に入って涼まねば体力が持たない。
街の中心部でひときわその塔が目立つ大聖堂に流れ込む。

外の気温はここが本当にスイスなのかと思わせるくらいの暑さだが、湿度が低い分、いったん建物の中に入ってしまえば汗ばんだ体が冷やされる。
大聖堂内は天井の高さもあるので、ひんやりとしている。大聖堂の美しいステンドグラスに見とれながら、休憩もかねて大聖堂内で一息。
レイルパスは美術館が無料になるので、そのメリットを享受すべく次なる目的地へ。

13世紀にまでさかのぼる歴史のある修道院・教会を再建し、博物館としてオープンしたバーゼル歴史博物館。
外観は教会そのものだが、中に入ると、地下展示室も兼ね備える列記とした博物館。

夏休み中の自由研究の一環だろうか、児童のグループが熱心に調べものをしている姿も。博物館には地下の展示スペースもあり、ソファも設置されていたので、見学を一通り終えたら、暑さで奪われた体力の回復のために再び休憩。
スイスと言えども夏の観光は身に応える。

博物館で体力を少し回復させたら、街歩き再開。
バーゼルの歴史的建造物の1つであるシュパーレン門を目指す。この門は1400年に建てられ、アルザス地方から食料などの物資が運ばれてくる際に、この門を通過してきた歴史がある。
門といっても、円柱の建物の間に三角型の屋根が挟まれたような構造で、城塞としての役割も果たしていた模様。
日本では室町時代にあたる600年以上も前に、21世紀まで遺る建造物が建てられた歴史のロマンを感じる。

シュパーレン門の近くにはパン屋さんがあり、通りに出された看板を見ると、スイスと言えど、案外リーズナブルなお値段。
パンを2つ購入して、ベンチを求めて近くの公園へ。

シュパレン門から少し歩いただけなのに、吹き出る汗。公園の木陰で体を冷やしながら、ベンチに腰掛けて、先ほど購入したパンを頬張る。
公園周辺の建物に目を向けると、バーゼル大学のようだ。先ほどのパン屋の商品がリーズナブルだったのは、学生街だったせいなのかもしれない。

バーゼル大学の校舎には、モザイクの壁画があしらわれており、モザイク画ハンターの心をくすぶる。
1460年から教育機関として君臨するバーゼル大学、アカデミックな雰囲気も少し味わえる街歩き。キャンパス内を少し散策することも考えたが、それを阻む猛暑。
さすがにもう体力の限界に近い。ここは無理をせずに引き返そう。


ライン川に架かる橋の上を歩いていると、川泳ぎを楽しむ人の姿。さすがにこの暑さでは、水の中で体を冷やすのが最も効果的かもしれない。
友人とグループで水遊びを楽しむ人たちは、体にに浮き輪のようなバッグを身に着けながら水面を進んでいる。
水面から上がってきたスイマーを観察していると、どうやらウォータープルーフバックのようで、中に着替えや貴重品を入れて、泳いでいる間は、体に結び付けて携帯するようだ。

バーゼルの街では、魚を形どったウォータープルーフバッグが販売されており、親友も購入したといい、トレンドのようだ。
いつからか、時計の国際見本市が開催されるニュースを見て知ってバーゼルという街。長年の思いの末に、ようやく訪問が叶った。
トラムの路線網が街の中心部に網羅されているので、観光もしやすい。しかし、いかんせん夏の猛暑時には、気温が35度以上に達し、街歩きどころではなくなってしまう。
天候に体力を奪われない時期の観光であれば、数ある美術館や博物館を中心に巡り、バーゼルの街をより楽しめるだろう。
