暮らすように旅するスイス#1 円安がとどめを刺すスイスの物価

スイス

世界で最も物価の高い国の1つとして名前の挙がるスイス。おまけに円安下でのスイス訪問となると、真っ先に気になるのが現地の物価。為替相場での対スイスフランの円安は歴史的な水準に達しており、ただでさえ物価の高いスイスでは、円に換算すると恐ろしいほどの値段になる。今回は、円安がとどめを刺したスイスの物価について紹介する。

為替相場のスイスフラン円は歴史的水準

出典:Google Finance

経済ニュースで為替相場が取り上げられる際、米ドル/円、ユーロ/円の日々のレートが紹介され、スイスフラン/円の相場が一般的なニュースで取り上げられることは日常的にはない。

足下で、ユーロが通貨導入以来、円に対して最高値となる1ユーロ=180円台を突破したニュースを記憶している方もおられるかもしれないが、その陰でスイスフランも対円に対して史上最高値となる1スイスフラン=195円台(2025年11月時点)を記録した。

上記に示したスイスフランと円の為替チャートから一目瞭然だが、近年はスイスフラン高、円安のトレンドとなっている。

マーケットの世界では、有事の際の通貨として、日本円はスイスフランと肩を並べていたと思っていたが、いつの間にかスイスフランの独り勝ちとなっていた。

初めてスイスを訪問したのは10年以上も前の2012年。その頃は歴史的な円高で、1スイスフラン=80円台のレートだったと記憶している。世界でも物価の高いスイスへの初訪問ということで、内心びくびくしていたが、当時は意外にもスイスの物価はそれほど高くないという印象を受けたのを鮮明に記憶している。

しかし、10年以上の月日が流れた後、状況は一変。足下のスイスフラン高が日本人旅行者にとっては、スイスの物価高をさらに押し上げているのが現実。

スタバ指数 コーヒー1杯1,000円超え

1杯1,000円を超えるスタバのコーヒー

世界各地の物価を計るにはマクドナルドのビックマック指数が一般的だが、ファーストフードはあまり食べない上、好きでもないハンバーガーにスイスのような物価の高い国で、いくら調査のためとは言え、お金を費やすわけにはいかない。

代わりにスターバックス指数として、アメリカーノのトールサイズの値段からスイスの物価を計る。6.2スイスフラン=約1,200円。スタバのコーヒー1杯が1,000円を超える。

期間限定の○○フラペチーノの特大サイズではなく、一番ベーシックなアメリカーノで北里柴三郎氏が1人飛んでいく。珍しく暑さに負けてアイスを頼んだが、氷1つも惜しくなるような値段。

果たしてスイス人にとってのこの値段は妥当に感じられるものなのだろうか?

スイスには国が定める最低賃金は存在せず、州ごとに規定されている。スイスの中でも物価が高いとされるジュネーブ州政府によると、同州の最低賃金は時給24.28スイスフラン(=約4,700円) 

コーヒー1杯1,000円超えで驚かされたが、スイスの給与水準に当てはめて考えると、このアメリカーノのトールサイズを1杯飲むためには、最低賃金の場合、15分ほど働けば、コーヒー1杯にありつけるという計算。

従って、給与水準からみれば物価はそれほど高いとは言えないかもしれない。

物価高のスイスを楽しむ方法

ハイキングはスイス人にも人気の趣味

こうも為替レートが日本人に不利な状況下では、旅行する気も失せてしまう。それでもスイスを訪れるのは親友との再会に加え、その親友がホームステイをさせてくれているおかげで、なんとか物価高のスイスを訪れることができた。

腕時計やチョコレート、チーズとスイスを代表する名品は数多くあるが、スイスではショッピングを楽しむという旅にはなりそうもなく、旅を楽しむ代替案として、雄大なアルプスの自然を存分に満喫するためのハイキング!

交通費やハイキングコースを上るゴンドラなどの料金はかかるが、ハイキング自体は無料で楽しめるアクティビティ。スイス人にも人気の趣味で、チューリッヒなどの中央駅では、トレッキングブーツにバックパックを背負ったハイカーの姿をよく見かける。

サンドウィッチ持参でハイキング

物価のそれほど高くない国でハイキングをする場合、歩き疲れた後はカフェやレストランで一服ということも珍しくないが、物価高のスイス、おまけに足下の円安の状況では気軽に外でコーヒーを飲んだり、外食なんてもってのほか。

ただ、美しい山々の風景を楽しむことは我慢したくないので、親友宅でサンドウィッチを作って持参。簡単な軽食でも、目の前に広がる景色のすばらしさが、その味を何倍にもしてくれる。

スイスにもお買得品は存在する

エビアンのミネラルウォーターは1.5リットル6本入りで約950円 1本あたり160円ほど

物価高のスイスでは、そもそもスイス人の最低賃金、平均給与は日本よりも遥かに高い。また、親友は長期休暇は物価の安い国で過ごして経済的な負担を抑えながら、バカンスを楽しむという。

それでも、そんな物価が世界一高いとも言われるスイスにも人々が暮らし、生活を営んでいる。スイスと言えども、国民全員が富裕層というわけではないはずだ。

実際に、スーパーを覗いてみると、案外、商品によってはお買得感を感じられるものも存在する。例えば、エビアンのミネラルウォーター。1.5リットル入り6本で5.1スイスフラン=約950円、1本あたり160円ほど。

スイスは水道水も飲めるほか、街のいたるところに、湧き水が汲めるポイントがあるのでわざわざ水を買う必要には迫られないが、リーズナブルな値段の商品が存在することに親近感を覚える。

スイスを代表する製品の1つチーズ
旬のフルーツはリーズナブル

水以外にも、酪農大国スイスのチーズや旬のフルーツは案外リーズナブル。日本の高級なマスカットの値段と比較すれば、ひと房400円弱でマスカットが購入できるスイスが天国に見えてきた。

野菜中心生活を送れば物価高のスイスも怖くない

実際に野菜やフルーツはお手頃な値段のものが多く、自炊用にパプリカやアボカド、バナナ、マスカット、レタス、マッシュルームなどを購入して13スイスフラン=約2500円 安くはないが、目が飛び出るほどの値段でもない。

高速道路の年間パス

安いものが存在しないようなスイスにあって、声を大にして唯一、「お得!」と言えるのは、高速道路料金。年間パスはわずか40スイスフラン=約7,700円 

民主党政権時の高速道路休日1,000円よりも割安感のあるスイスの高速道路年間パス。短期の旅行者にはあまり恩恵がないのが残念。

現下の円安の状況ではスイスは気軽に楽しめる海外旅行先ではないと言えるだろう。しかし、そこに暮らす人たちは生活を営んでおり、その知恵を少し拝借することで、短期間の旅人でも、アルプスの美しい自然に囲まれたスイスを楽しむ余地は残されている。

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