暮らすように旅するカーボベルデ#6 ノスタルジー溢れるアナログな社会

カーボベルデ

カーボベルデに降り立った瞬間、お世辞にも国が発展しているという印象は受けなかった。しかし、AIをはじめとする技術革新が進む現代においては、リープフロッグ現象と言われる、先進国がある程度の時間をかけてきた開発や発展の段階を最新技術の導入で一気に飛び越える現象が現れる国がある。

一見したところ開発の面では途上国に分類されるカーボベルデにも、既に最新技術が導入され、社会に革新がもたされているかもしれないとも考えたが、暮らすように旅をして垣間見たカーボベルデは、ノスタルジーに包まれたアナログが溢れる社会。最新技術が導入されていない故に、人と人との心の繋がりを感じられる場所だった。

タクシー配車アプリなし

乗り場に待機するタクシー

公共交通機関が発達していないカーボベルデ・サル島では、ビーチ界隈は徒歩で十分移動できるが、空港や島の他の町への移動はタクシーを利用することになる。

配車アプリ Uber や Grab を開こうにもサービス提供外エリアの表示。カーボベルデ・サル島ではまだ配車アプリは導入されていないようだ。とは言え、人々はスマホを所持しており、動画やメッセージのやり取りをする姿は、他の国となんら変わりない。

配車アプリがない状況では、道行くタクシーを止めて乗車するか、運転手から名刺をもらい、ワッツアップなどで連絡を取って配車をするか。あるいは、サル島のビーチ・サンタマリア地区にはタクシー乗り場のような一画があり、そこから乗車することになる。

世の中は配車アプリ、自動運転と技術進化は枚挙にいとまがないが、カーボベルデでは、まだまだアナログな方法でタクシーを利用することになる。

当然ながら、乗車前に料金のチェックをしたり、行き先を伝えるなどのコミュニケーションが運転手と必要となり、それをきっかけにして会話が弾むことも。こうした現地の人との交流は旅の醍醐味の1つ。

魚の売買は台帳に記入

台帳にメモされる鮮魚のやり取り

島国カーボベルデのサル島では、観光業が主要産業になったとはいえ、食料の確保という観点からも、漁業は不可欠。

朝の桟橋には、その日獲れた魚が取引され、収穫量と値段が付けられていく。

専用の端末やアプリなどで管理するのかと思いきや、担当の女性が1人、ペンを片手に重量と値段をノートにメモしていく。紙と書く文化がいまだに現役であることに、個人的には共感を覚えて、テクノロジーのない空間にほっこりしてしまう。

テクノロジーのリテラシーが皆同じであれば、最新技術が導入されても疑心暗鬼なく、調和が保たれるだろうが、そうでなければ、このノートに書かれた数字を目の前でチェックできることが、安心と信頼を担保する最善の方法なのかもしれない。

メニューはQRコード?黒板メニューが現役

レストランの黒板メニュー

技術革新は飲食業界にも波及しており、コロナ禍の影響もあり、いまや注文はQRコードからメニューを取り込み、スマホから注文を済ませる店も増えてきている。

しかし、サル島のレストランの前を歩いていると、黒板に書かれたメニューがノスタルジーさを助長している。滞在中、いくつかのレストランで食事をしたが、QRコードメニューは一軒も見かけなかった。

スマホから注文できれば、料理の写真などもチェックでき、特に言葉が通じない場合、値段を注文前にしっかりとチェックしておきたい場合など、旅行者にとってのメリットはある。

一方、テクノロジーが進んでいないのを逆手に取って、注文する際に、お勧めの料理を尋ねたり、日替わりランチの魚の種類をチェックしたり。そこから「ポルトガル語が話せるの?」という会話がスタートして、異文化交流に繋がることもある。こうしたやり取り1つ1つは、現地の人との繋がりを感じられる貴重な機会。

メニューや注文に関してはテクノロジーはさほど導入されていないカーボベルデだが、多くの店舗でクレジットカード払いは可能。タッチ決済に対応している店舗も多く、この点は便利。

DIYジム

ビーチ沿いのDIYジム

空が晴れた日にビーチ沿いを散歩していると、開けたスペースに、いくつかの器具が置かれ、地元の人たちが何やら筋トレに励んでいるのが目に飛び込んでくる。

一年中ほとんど雨の降らないサル島では、屋根がなくても問題ないのかもしれないと思い、その “ジム” らしき空間に近付いてみると、マシン1台1台が DIY で作られたようなもの。

左右、微妙に重さの異なる重量や、水平とは言えない少し傾いた鉄棒など、手作り感が満載。様々なマシンが次々と開発されるジム業界にあって、こうした1台1台 DIY によるジム作りは、ジムに通える費用がないと片付けることもできるが、誰にでも開けた施設を提供できるのは、アナログな手法ゆえだろう。

サル島のジム

もちろん、街中には会員制のジムもあり、レッドミルなどのマシンが兼ね備えられ、利用者がマシンの上を走りながら汗を流す姿は、万国共通。

便利さとはかけ離れたノスタルジー溢れるカーボベルデ・サル島。テクノロジーがない故に、コミュニケーションなどでイライラが募るかもしれないが、旅の間くらいは、アナログな世界に戻って、ゆっくりとのんびり過ごすのが、カーボベルデ旅の楽しみの1つかもしれない。

 

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