巡礼宿で素敵な出逢いに恵まれたセルナデロを出発し、巡礼旅は中盤に差し掛かる。これまでのルートと比較すると、巡礼者の数も少しずつ増え、この日から、ポルトガルの第2の都市ポルトまで、スペイン人たちと一緒に巡礼をすることに。その記念すべき初日のセルナデロからアゲダまでの 23.5km 道のり。
室温、物音、巡礼宿では熟睡不可能?
休息日を設けたコインブラで個室の民泊に滞在したせいか、セルナデロの巡礼宿の相部屋では、同じ部屋の他の巡礼者の同行が気になり、あまり熟睡できず。
まずは室温問題。日中は猛暑だが、夜は気温が下がり、少し肌寒さすら感じたので窓を閉めて寝床に就いたが、同じ部屋のスペイン人にとっては、夜もまだまだ暑くて寝苦しかったようで、いつの間にか閉めたはずの窓が全開になったいた。おかげで、夜中に寒さで目が覚めるほど。
室温問題に続いて騒音。騒音というか物音。相部屋の宿命、各自のアラームが室内に鳴り響く。アメリカ人巡礼者は、ポルトガル北部から南下してきて、ファティマを目指すようで、彼女の目覚ましが4時45分にドミトリーに鳴り響く。
結局、熟睡はできないまま朝を迎え、冷蔵庫のある宿の特権を活かしてヨーグルト、パン、フルーツ、紅茶のフルコース朝ごはんを済ませる。
久しぶりに出発時間の自己記録を更新して、5時55分に巡礼宿を出発。
スペイン人との巡礼のスタート

気になる体のコンディションは、右足のマメは完治したようだが、これまでその痛みをかばうように歩いたせいか、脛の外側が攣ったように痛む。ただこの手の痛みは、体が温まり、筋肉がほぐれてくると収まるだろう。
左足の踵の靴擦れの痛みは相も変わらず。よくなる気配がない。脚全体は、前日にストレッチをよく施したので、幾分、軽快さも感じられる。
巡礼宿にいたスペイン人たちとフランス人のおばさんはとっくに出発した模様。日が昇らないうちにできるだけ距離を稼ごう。
道路標識にもポルトガル第2の都市・ポルトの文字が現れ、いよいよポルトガル中部から北部へと向かう。
出発から2時間ほどでいつものようにカフェ休憩を取りたかったが、この日は一向にカフェが現れず。結局、足より荷物を背負う肩と背中の痛みから、ベンチで休憩。バナナで栄養補給をして現在地をチェック。巡礼の地図アプリを手にしてからは、道に迷う不安が解消され、精神的に随分と楽になった。
束の間の休憩で体を労わり、気合を入れ直して歩き始めると、すぐにカフェが現れる。これなら、ここまで我慢して歩いてくるべきだった。先に宿を出発したスペイン人の一行も休憩中。仲間に入れてもらいこの日初めてのコーヒーで体を目覚めさせる。
ここからこの5人とポルトまで数日間、一緒に歩く巡礼旅が始まる。

この休憩のポイントでこの日の目的地のアゲハまで半分近い距離を進んできたが、スペイン人のエネルギーのみなぎり方は別の次元。全員がサンティアゴ巡礼の経験者ということもあるが、歩き疲れは何のその、一向に止まらないおしゃべり。
喋るのにもエネルギーが必要になる。無駄な体力を消耗しないためにも、よほどの疑問や日本のことについて尋ねられない限りは、聞き手に徹する。
しかし、スペイン語を話す日本人に皆、興味津々。体力温存の目論見は外れ、巡礼中、おしゃべりにも勤しむ。
これまでの巡礼旅は、道に迷ったり、猛暑と足の負傷に耐えたりと、“ 修行 ” のような一面が強かったが、このスペイン人との出会いによりその厳しい概念が一転、おしゃべりをしながら巡礼そのものを楽しもうとする姿勢に変わっていった。
身長のせいか、歩いていると他の巡礼者を抜き去ることがほとんどだが、このスペイン人たちのペースはなかなか。巡礼経験者ということもあり、一緒に歩くのにも心地よいペース。

残り半分の巡礼路にもカフェは見当たらず、そうこうしているうちにアゲダの街に到着。巡礼宿にチェックインする前に、中心地のカフェで休憩。再びおしゃべりタイムがスタート。なんともスペイン人らしい。
テラスが心地よい巡礼宿

この日の巡礼宿・Santo António は、巡礼始まって以来、初めてカードで宿泊費が支払えた。

巡礼宿の相部屋・15ユーロ(=約2,550円)ベッドの距離が近いのが気になったが、室内は掃除がしっかりと行き届いていて清潔。さらに、客室の前には、広々としたテラスが備わっており、巡礼旅の疲れを癒してくれる心地よい空間。
今回の巡礼旅でも記憶に残る巡礼宿の1つとなった。
映えのアゲダの街並み

巡礼宿にチェクインを済ませたら、スペイン人たちと昼食に出かける。人数が増えると、どこのレストランに行くかがなかなか決まらない。集団行動の定。
先程、休憩を取ったカフェの隣のレストランに決定。午後2時を回っていたせいか、いくつかのランチメニューは終了していたのが残念。

チキンカツを選択。8ユーロ(=約1,400円)とお手頃ではあったが、味はイマイチ。それを補うかのように、スペイン人との会話が弾み、楽しいランチタイムを過ごす。
ランチの後は、傘のアートで彩れたアゲダの街を少し歩いて観光。巡礼までは聞いたこともない街だったが、2012年に始まった「Umbrella Sky Project」により、夏の芸術祭りに合わせて7月から9月の期間中、街のいくつかの通りが傘で彩られる。小さな村々を歩いてきた巡礼旅に突如インスタ映えスポットが現れた感じ。
カラフルな街の中を歩きながら、スペイン人たちとそれぞれの今回の巡礼の目的、これまでの巡礼の経験などの話を聞き、とても有意義な時間を一緒に過ごすことができ、同じ巡礼のタイミングを共有できた運命に感謝。

レストランが集中する中心部までは宿から少し距離があったので、夕食を食べに出かける気分にはならず。近くのスーパーで材料を購入して、サラダで軽めの夕食。
メニューはシンプルでも、巡礼宿の心地よいテラスでの食事は何にも代えがたい。ワインを手に、スペイン人との談笑は夜まで続き、辺りが闇に包まれ始めるころ、翌日の巡礼のため、お開きとし、それぞれが寝床の準備に取り掛かり1日を終える。