ポルトガルの古都・コインブラまでたどり着いたサンティアゴ巡礼。この日はオフを取り、欧州で最も歴史のある大学の1つであるコインブラ大学などを巡り、巡礼旅の束の間の休息日を楽しむ。
オフ日は豪華な朝食でスタート

巡礼中は午前5時起き、6時頃に出発というのが体に染みついてきたせいか、7時にセットした目覚まし時計が鳴る前に目が覚める。この日の午前中に、前日の宿に忘れてしまった翡翠のブレスレットを届けてもらう約束があったので、それまでに朝食と洗濯を済ませる。
民泊からカフェまで思ったより距離があったが、前日の巡礼の途中では巡り合えなかった生絞りのオレンジジュースに気分が上がる。パンにチーズを挟んでもらい、ほうれん草のパイ、カプチーノを注文して合計 8.5 ユーロ(=約1,450円)朝から豪華。巡礼中は、太陽が昇り切るまでに出発するため、朝はゆっくりとしていられない。
せっかくの休息日くらい、カフェでのんびりと朝ごはんを食べるため、少し贅沢に時間を過ごす。
カフェを後にして民泊に戻ると、電話が鳴り、予定より早く、前日に宿泊したホテルの関係者が忘れ物を届けにきてくれた。

特別に高価なものではないが、それでも家族からプレゼントされて大切にしていた物なので、手元に戻ってきてくれて感動。わざわざ届けてくれた方に感謝。
700年を超える歴史を感じるコインブラ大学

コインブラ観光の目玉である大学は、もともとは1290年にリスボンに創設されたが、12 – 13 世紀にポルトガルの首都として栄えたコインブラに1308年に移転された経緯がある。
これまでの2度のポルトガル訪問では、コインブラを訪れる機会に恵まれなかったので、この巡礼の旅では、何としても1日休息日を入れて、コインブラ大学を訪れることを事前に計画していた。
大学内を見学するにはチケットを購入する必要があるようで、宿泊していた民泊からその売り場まで徒歩20分ほど。いつもの巡礼で歩く距離と比較すると、何でもない距離だが、この日も、すでに午前中から日が照り出し、窓口に到着することには汗が噴き出る。入場料は16.5ユーロ(=約2,800円)
歩いている道中、人の流れが少ないと感じたのは、この日はポルトガルの祝日のよう。大学の敷地内にある教会で結婚式が執り行われるため、午前11時30分から午後2時までは閉鎖されるとチケット売り場の係員に説明を受ける。
それまでの時間に教会を先に訪れ、図書館、王宮として使用されていた場所を巡ろう。

教会のサイズはこじんまりとしているが、中に入ると思わず声を上げてしまうほどの美しい装飾があしらわれている。天井の色とりどりの壁画、側面のタイル、正面の聖堂と、1つ1つそれぞれの個性が上手くハーモニーを奏でて、教会という1つの空間としての美しさを演出している。

側面に設置されたパイプオルガンは、教会の規模とはに似つかわしくなく、その大きさゆえに、落下してきそうなくらいの迫力を見せつける。この日、この場所で挙げられる結婚式の主役たちの幸せを祈ろう。
コインブラ大学観光のハイライト、ジョアニナ図書館はツアー形式での訪問になっており、チケット購入時に参加する時間帯が割り当てられる。
図書館に通じるまでのスペースも歴史を感じさせてくれ、かつて牢獄として使用されていたスペースからツアーの案内がスタート。光の届かない独房のスペースは数十秒滞在しただけで気分が沈む。中二階を越えた先がいよいよジョアニナ図書館。残念ながら館内の撮影は禁止のため、写真はない。
ジョアニナ図書館の設立は大学創設から遅れること数百年、1717年に建設が始まり、12年の月日を経て完成。
館内には15-18世紀の資料を含む約6万冊が所蔵されており、その圧巻のスケールが訪問者を迎え入れる。貴重な資料を後世に引き続くべく、そのデジタル化に取り組んでいるという。
さらに、害虫被害を食い止めるため、本棚などにはオーク木材が使用されているほか、図書館にはコウモリが棲みついており、害虫駆除に一役買っているという。コウモリの役目は数百年の間、脈々と受け継がれ、その活動が活発になる夕方の時間帯には、図書館内の巨大な机などにはシートが架けられ、コウモリの排泄物から、調度品を守る措置が取られる。
ジョアニナ図書館に滞在できる時間はわずか10分。できるならば、2,3時間くらい滞在して、古書独特の匂いが漂う空間で、コーヒーでも飲みたいところだが、それは叶わぬ願い。

図書館への訪問の興奮冷めやらぬまま、旧王宮のスペースへ。現在も、博士号授与の際に使用されるサロンなどがあり、久しぶりにアカデミックな雰囲気を味わうことができ大満足。数百年に及ぶ歴史を誇るコインブラ大学だが、世界遺産に登録されたのは2013年とまだ日が浅い方。

照り付ける太陽を避けるべく、大学構内の植物園で少しの納涼を楽しむ。東洋を彷彿とさせる竹藪が現れたり、南米の熱帯雨林らしい植物が生息している箇所があったりと、大航海時代に世界の主役だったポルトガルの繁栄が感じられる。
グルメは外れの1日
最大の目的だったコインブラ大学を見学し、さらに他の観光名所も訪れることも考えたが、いかんせんこの強い日差しと猛暑に、その気力が阻まれる。丁度お昼時だったので食事にしよう。
前日の魚料理が忘れられず、同じレストランに行くか迷う。しかし、それでは芸がないと思い、ググって前日のレストランよりもコメントが多く寄せられている場所へ。
コインブラ観光の中心、フェレイラ・ボルゲス通りから少し入ったところにあったレストラン。店主もサンティアゴ巡礼を何度か実施したということで、フレンドリーに迎え入れてくれる。
メニューからお勧めを聞いて、オリジナル料理というオーブン焼きを注文。

見た目は悪くなかったが、料理が冷たく、あまり火が通っていない様子。それもそのはず、お会計の際に、キッチンが覗き見えたが、オーブンではなくトースターで調理しているだけ。
味もそれほどインパクトはなく。前日の魚料理のレストラへこの日も行くべきだった。グーグルの評価は必ずしもあてにはならないことを改めて実感。
味は好みもあるので、レストランの名誉のためにも名前は伏せておこう。
スーパーで夕食と翌日の朝食の買い物を済ませたら、あとは午後の猛暑を避けるべく、民泊で休憩。
夜は簡単にサラダだけにしようと思っていたが、昼食の満足度が低かったせいか、サラダだけでは物足りない。翌日もまた巡礼で歩いて体力を使うのだ。と自分に言い聞かせて、民泊の近くにあったピザ屋さんでマルゲリータをテイクアウト。

ピザなら大外れはないと焼きたての匂いのピザに期待が高まるが、バジルの葉っぱ4枚。もうちょっと載せてくれてもいいんじゃないか?味は可もなく不可もなく。この日はグルメという面ではツキに見放された1日となってしまった。
1日休息日を挟んだサンティアゴ巡礼、翌日以降、どんなドラマが待ち受けているのだろうか。