人生のバケットリストの1つ、サンティアゴ巡礼を決意したら、準備に取り掛かる。ヨーロッパ各地からスペイン北部のサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼路のうち、どのルートを選択するか、持ち物リストなどを紹介する話。
ポルトガル縦断ルートを選択

数あるサンティアゴ巡礼のルートのうち、人気があるのはフランスからスペイン北部を通るルート。映画やドラマのシリーズの舞台ともなったことも影響している。
人が多いのは少し苦手、かつ人気ルートとなると避けたくなる性分。巡礼路の地図とにらめっこしながら、候補を絞っていく。
ルート選択の鍵となるのは、所要日数、巡礼路の難易度、予算など。1ヶ月ほどの日程でサンティアゴ巡礼を考える中、最適な候補として挙がったのがポルトガルの首都リスボンからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの634キロメートルに及ぶ道のり。
友人や知人の中にはサンティアゴ巡礼経験者が数人いるが、ポルトガルルートに挑戦した人はいない。
ポルトガルはこれまで2度訪れたことがあるが、いずれも首都リスボンと第2の都市ポルトを訪れたのみ。複数回訪れるくらい好きな国の1つだけれども、この2都市以外は知らないので、巡礼はポルトガルの小さな村から他の都市までを訪れる絶好の機会。
さらに、地図上ではリスボンからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでポルトガルを文字通り縦断していく形となり、「ポルトガル縦断ルート」という響きにロマンを掻き立てられる。
サンティアゴ巡礼に向けて、出発の数カ月前から運動習慣を生活に取り入れ、ここ数年のうちで体の状態を最適に仕上げた。ポルトガル縦断ルートは起伏はそれほどなく、平坦な道のりなので、体のコンディションと照らしても難易度はそれほど高くないと読む。
せっかくの巡礼の挑戦が、難易度がマッチしないことで途中リタイアとなるのは回避したいので、現実的な選択。
予算の面では、フランスやスペインと比較すると、ポルトガルの物価は割安。お財布にも優しいサンティアゴ巡礼ともなれば、このルートを選択しない理由はない。
個人的なサンティアゴ巡礼の目的は、宗教やスピリチュアルな意味合いというより、巡礼を通しての地元の人との交流、ローカルな文化に触れること、グルメを楽しむことなど。これまでの2度のポルトガル訪問は、ポルトガル語が話せない状態での旅で、現地の人との交流も限定的だった。
ブラジルでの数年に及ぶ生活を経て、ポルトガル語もある程度操れるようになった今、言語の鍛錬、地元の人の交流にポルトガルは最適な選択肢。
軽量化のための持ち物リスト

ルートが決まったら、巡礼の持ち物の絞り込み。旅行の際には、荷物が多くなる性格なので、厳選して軽量化に努めなければ、重い荷物を背負って1日数時間歩くのは自業自得となる。
巡礼者の中には、巡礼宿に荷物を届けるサービスを利用する人もいるが、今回は自力でバックパックを背負って巡礼に挑む。まずは、バックパックだが、これは軽量化された物を選ぶのが最も賢明な選択。巡礼の為に新調する気にはなれなかったので、持ち合わせの60リットルのバックパックを持参。正直これは誤算。スペースがあると、荷物を詰め込みたくなってしまう。他の巡礼者を観察して、40リットルサイズの軽量化されたバックパックが最適だったと後から後悔することになる。
バックパックよりも大事になるかもしれないのが靴。ポルトガルルートはアップダウンが少ないので、本格的な登山シューズまでは不要だが、ある程度のハイキングシューズは必須。その上、1日数時間歩くことになるので、巡礼前に履き慣らしておくことが重要。
衣服はTシャツ5枚、下着4枚、靴下3足、部屋着などを準備したが、これほどの量は不要だった。夏の巡礼では、1日のハイキング終了後、巡礼宿に着いてすぐに洗濯すれば、翌日には衣服は乾く。究極は、巡礼用1枚を着用して、宿で過ごす用の1枚を荷物に入れ、計2枚のTシャツで十分。下着や靴下も1ペアでも十分。予備の意識が働き、余分に衣服を詰め込み、荷物が重くなってしまったのは後々、巡礼の反省点となる。
巡礼宿の多くはタオルの用意されているが、中には準備がないところもあり、持参がベター。夏の巡礼は日差しの強さが半端ないので、防止、日焼け止、サングラス、ネッククーラーは必須。ポルトガルルートは一部海沿いの巡礼路もあるので、水着も加える。
後は、薬や靴擦れなど怪我をした際の、絆創膏、消毒液などの医薬品もマスト。
結局のところ、巡礼とは言え、ある程度の規模の街を通過し、足りないものは現地調達ができるので、過度に心配性になってあれもこれも詰め込んで、荷物を重たくしないことが大事。
パソコンはブログ更新などの為に最後まで迷ったが、結局、持参せず。これは大正解。正直、毎日歩き疲れた後に、パソコンを開けるエネルギーまで残っていないのが実態で、荷物の計量化にも貢献。代わりにiPadを持参。
巡礼者の証明・クレデンシャル

巡礼の目的がいかなるものであれ、巡礼者の証明となるのがクレデンシャル。巡礼手帳のようなもので、これを持参することで、巡礼宿に宿泊ができるようになるほか、ミュージアムなどが無料となる特典もある。

ポルトガルのリスボン到着後、市内中心部のリスボン大聖堂(Sé de Lisboa)内の売店でクレデンシャルを2ユーロ(約350円)で購入。大聖堂に入るのに入場料が必要となるが、売店でクレデンシャルの購入だけと伝えると、入場料を払わずに中に通してもらえる。
クレデンシャルには、スタンプラリーのように、巡礼宿やレストランでスタンプを押してもらう。巡礼路の道のりの個人宅でスタンプを用意している箇所があり、スタンプ集めに奔走する巡礼者の姿も。集め出すときりがないので、基本は巡礼宿のスタンプのみと決めてクレデンシャルに押してもらう。
クレデンシャルは巡礼者である証明だが、巡礼宿を利用する際には身分証明書が必要となるので、パスポートが巡礼には欠かせない。
お役立ち巡礼アプリ

ポルトガルルートは、フランスやスペインの巡礼路と比較すると、マイナーな為、巡礼ルートや巡礼宿などをリサーチしても得られる情報が限定的。
クレデンシャル購入時に、売店の方に尋ねると、Gronze.com というアプリを伝授してくれた。このアプリは、ポルトガルを含めた各地のルートを紹介しており、1日で移動するお勧めのルート、各所の巡礼宿の情報が網羅されており、巡礼者のほとんどが利用していた。
裏を返せば、多くの巡礼者がこのアプリで示されている “推奨ルート” 通りに巡礼するので、特定の地点が混雑する傾向が見られる。
もう1つ役に立つのは「BuenCamino」という矢印マークのアプリ。巡礼路では矢印「→」を道しるべに進むことになるが、時折、その矢印が見当たらず、道に迷うこともしばし。その際、このアプリが巡礼路に導いてくれる。オフラインでも地図は作動する。
このアプリをダウンロードせずに出発したため、悲劇が訪れることに。それはまた後の巡礼記で。
荷物の保管

巡礼の為の荷物は最小限に。とはいえ、巡礼の前後はヨーロッパの友人を訪問することになっていたので、“通常” の旅の荷物も持参してきた。巡礼の途中、この荷物をどうするかが、出発前の最大のネック。
幸い、ポルトガルには当てが2つ。1人は、ブラジル人の元同僚の姪で、コロンビアに暮らしていた際、偶然にも同じ街で働いていたので、元同僚を介して知り合った。とはいえ一度しか会ったことがない上、その後は、たまにメッセージのやり取りをする程度の仲。もう1人は、ポルトガル人の友人の家族。この友人はスイス在住で、その家族とは直接面識はない。
ということで、まずはブラジル人の知人に連絡。すると2つ返事で荷物の保管に協力してくれるという。おまけにありがたいことに、出発までリスボンの自宅に数日ホームステイも申し出てくれた。なんというホスピタリティ。
荷物の保管問題が解決したら、サンティアゴ巡礼の準備が完了。いよいよポルトガル・リスボンからサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの道のりが始まる。約1ヶ月、600kmを超える道のりに一体、どんなドラマが待ち受けているのだろうか。