旅の日程は前後する形になるが、ヨーロッパから一旦去る際、スウェーデンの首都・ストックホルムのアーランダ国際空港で、スカンジナビア航空(SAS)のゴールドラウンジを利用した際の話。
ANA搭乗でSASラウンジ利用

ストックホルム・アーランダ国際空港から東京・羽田国際空港までは、ANAのビジネスクラスに搭乗。SAS航空は、かつてANAと同じスターアライアンスに加盟していたが、スカイチームに移行。

ストックホルムへの新規就航を果たしたANAだが、アーランダ国際空港では自社ラウンジは整備されていない。ラウンジ利用の際は、また他のスターアライアンス加盟社のラウンジではなく、SASのラウンジを利用することになる。
アライアンスが異なる航空会社のラウンジを利用できるのは、画期的な連携ではあるが、難点はラウンジと搭乗口の移動距離。
SASラウンジから、ANA便の搭乗口までは20 – 25分の移動時間がかかるという。この点は、ラウンジに入室した時点でチェックしておくのが無難。
ラウンジ到着前にトラブル あわやパスポート紛失の危機
チェックインを済ませ、保安検査を通過してラウンジに向かう途中、汗ばんだ体に香りを与えてあげようと、免税店の香水を試し塗り。
香水のボトルをプッシュするために、手にしていたパスポートケースを一旦、香水が置かれていた棚に置いたのがトラブルの始まり。香水の香りに気分を上げて、ラウンジへ急ぐが、ふと手にしていたパスポートがないことに気が付き、パニック状態。
落ち着いて、最後に見た瞬間を思い出す。保安検査場に忘れたのか、その後なのか。ひとまず、ラウンジまで向かっていた道のりを急いで引き返す。
ギフトショップや免税店など、歩いてきた導線を思い出す。パスポートが無ければ飛行機に搭乗できない!せっかくのビジネスクラス搭乗なのに。
落ち着きを取り戻そうとするが、パニックが収まらない。顔面蒼白になりながら、歩いていると、見覚えのある顔の店員さんが逆方向から歩み寄ってくる。
その手には見覚えのあるパスポートケース。奇跡といっても大袈裟ではない。店員さんによれば、香水棚に置き忘れていたのを見つけたけど、姿がもう見えなくなって…。慌てて探したけど、見当たらなくて…。パスポートがないと飛行機に乗れないので、どうなるかと心配だったけど、見つかってよかった。
店員さんの安堵の10倍以上、ほっと胸をなでおろす。感謝の意を伝えながら。
ラウンジ空間は北欧デザイン

パスポートと搭乗券を手に、気持ちを新たにSASのラウンジへ。初めて訪れるラウンジは、航空会社の特徴と、そのお国柄も反映されるので、空間のデザインを鑑賞するのが飛行機への搭乗前の楽しみの1つ。
SASゴールドラウンジは、スペースはそれほど広くなく、早朝のせいか、利用客もそれほどいないので、手狭な印象は受けない。
フローリングの床に、華美ではなく洗練された北欧デザインの家具が並ぶラウンジ空間は、どこか洗練された印象。中東の航空会社のラウンジのような、イケイケの華やかさは全くないが、必要なスペースは隈なくカバーされているという印象。

ワークスペースに、休憩を取れるゆったりとしたソファが配置されている場所、食事を取るテーブルなど抜け目がない。

ラウンジ利用客の8割ほどは男性。ジェンダーギャップの少ないとされる北欧においては、意外な印象。
シャワーはシャワーのみ!トイレは先駆的なユニバーサルデザイン

パスポート紛失の危機に遭ったのは、そもそも重い荷物を運んで空港まで到着して汗ばんだから。ここはシャワーで汗を流そう。ラウンジの受け付けでシャワー利用を伝え、係員に案内されシャワー室へ通される。
ついでにトイレも済ませようと考えていたのに、シャワー室にはシャワーのみ。
世界中、どの航空会社のラウンジのシャワー室は、トイレと一体になっていることが多いが、SASのラウンジはシャワー室はシャワーのみ!潔いが、トイレがあると想定していた身としては、一旦、シャワー室から退出してトイレを済ませる。その旨をシャワー室の清掃係りにも伝える。

シャワー室の設備に加え、男女共通のトイレもユニークな特徴。まだどの航空会社のラウンジもトイレは男女で分かれていることがほとんど。
ラウンジに限らず、女性トイレの前の行列を見かける度に、男に生まれてきてよかったと思う瞬間の1つ。どれだけ時間がかかるか読めない中、女性はよく我慢できると思うのが本音。
しかし、女性の視点に立てば、女性トイレの方だけに行列ができるのは不平等。男女共通のトレイにすれば、利用客がいない場合は、男女問わずすぐに個室に入れるし、混雑していれば、男女関係なくどちらも並ぶ必要がある。SASラウンジ内の男女共通トイレを目にしたことで、新たな気付きを得る。
トイレ1つをとってもジェンダーギャップを埋めるための取り組みが必要ということだ。
ラウンジ飯はシンプル

午前中の便に搭乗するため、朝ごはんを食べずに出発したので、ラウンジ内で朝食。SAS航空の気になるラウンジ飯だが、朝食の時間帯ということもあり、シンプルさがさらに際立ったメニュー。

サラダ、チーズ、ハムに、フルーツとヨーグルト。ホットミールメニューはベーコンにスクランブルエッグ。暮らすように旅するスウェーデン#6 スウェーデンのグルメを探るで紹介したスウェーデンの伝統的な硬いパン・クネッケブロードを含めたパンの種類は豊富。

さらに、スウェーデンではかかせないマスの魚卵、キャビア。ゆで卵に付けていただこう。
シンプルな朝食メニューのラウンジ飯ではあるが、スウェーデンを旅していた際に拝見した、地元の人たちの朝ごはんにより近い印象。
ここにも、スウェーデンの派手さよりも実践さを重んじる姿勢を感じる。
パスポートを一瞬、紛失した際はどうなるかと思ったが、無事にSASゴールドラウンジを体験。搭乗口まで少し距離があるので、早めにラウンジを退出して東京行きの便へ搭乗する。