旅をしていると、各名所を効率よく回りたいという衝動と、目的もなくぶらぶらと街歩きをしながら偶然の出逢いや発見を楽しむのも悪くないというスタンスの間で葛藤が起きる。
旅先によっては公共交通機関が発達していなかったり、車社会で歩くように街が設計されておらず、街歩きに適さなかったりと、移動手段は道中の行動範囲に大きく影響を及ぼす。
スウェーデン旅行中、首都・ストックホルムでの滞在を通して、臨機応変に移動方法を使い分けて街を楽しむ方法を紹介する話。
首都中心地はコンパクトで徒歩圏内

ノーベル博物館やノーベル賞の晩餐会が開催されるストックホルム市庁舎、ストックホルム宮殿など、多くの名所を抱えるスウェーデンの首都・ストックホルム。
観光名所が集中するストックホルム市内中心部は、コンパクトな印象で、歩道も十分に整備されているため、徒歩で十分に巡ることができる。
旅行者には気になる治安だが、周囲を見渡しても、路上で堂々と携帯を操作している。肌感覚としては過度な心配は不要とみられる。治安にそれほど気を取られないで済むかわりに、その神経を研ぎ澄ませてストックホルムの美しい街並みに見とれる。
徒歩の最大のメリットは、車や自転車では一瞬で通り過ぎてしまうような光景とも、じっくり向き合い小さな発見が生まれること。
公共交通機関も充実

宿泊先がストックホルム中心部から離れていたり、日程がタイトなために急ぎ足で名所を回りたい場合は、公共交通機関が便利。
地下鉄は3つの路線のみで、東京などの世界の大都市と比較すると、初めて利用する外国人でも分かりやすい。さらには、暮らすように旅するスウェーデン#5 駅構内が美術館? のブログ記事で紹介したように、地下鉄のブルーラインの各駅には、アート空間が広がり、移動だけでなく芸術作品の鑑賞も可能。
料金は、最も一般的なものは75分間の乗り放題で42スウェーデンクローナ(=約665円)1回の乗車だけの場合は割高に感じられるが、事前に訪問場所の時間をうまく調整して複数回乗車できれば、物価の高い北欧において、交通費を抑えられる。
人生初の電動キックボードに挑戦

地下鉄やバスの路線沿いではなく、歩くには少し距離を感じるときは、ストックホルム市内の街中でレンタルできる電動自転車や電動キックボードの利用が便利。
以前のヨーロッパ旅で利用した配車アプリのBoltが、レンタルサイクルと電動キックボードのサービスをストックホルムで提供しており、携帯のアプリから利用を進める。
人生で初めての電動キックボードに挑戦。他の人が道路で利用しているのを見かけると、実にスムーズな印象を受けたが、実際に乗ってみると、思ったよりもスピード感が出て、初めのうちは恐怖感も芽生える。
原付を乗っていたころの感覚を思い出しながら、バランスを崩さぬよう、また歩行者や他の自転車に気を配りながら進む。一旦、要領を得ると、立っているだけで先に進める便利さを実感。

しかし、市内中心部に近付くと、人の数も増えるので、電動自転車の方が安心して移動できる。電動キックボードも自転車も同じアプリから利用が可能なので、場所によってうまく使い分けたいところ。

注意が必要なのは、駐輪禁止区域が存在するという点。これを知らずに電動自転車を走行中、突然、鉛のように乗り物が重たく感じ、ペダルを漕ぐどころか、重量感のある自転車にまたがっている状態のバランスを保つのが精一杯な状態に。
最初は、電気自転車の充電が切れたのかと思ったが、携帯で確認すると、駐輪禁止エリアに入ったため、時速5キロに速度制限をかけたという。
自動で速度制限がかけられる技術に驚かされながらも、重い車体を引きづるようにして、駐輪禁止エリアから脱出を試みなければならなかった。
気になるレンタル料金は、電動自転車を利用した際は、27分間4.3キロの移動で88.62クローナ(=約1,400円)、電動キックボードは13分間、3キロの利用で50.87クローナ(=約805円)
割安感はないが、時間を節約したいとき、ストックホルムの街を颯爽と駆け抜けたいときには便利な移動手段。料金を浮かせるには、数日利用などのパッケージがお得。

ヨーロッパで自転車といえば、真っ先にオランダを連想するが、スウェーデンも自転車大国。夕暮れ時には、自転車で家路へと急ぐ人たちの姿がみられる。
自転車という初期投資はかかるが、長く利用できれば経済的にも安上がりにある上、環境にも優しい。そう、スウェーデンは環境活動家のグレタさんの故郷でもある。
水路の移動はフェリー網が充実

今回の旅では利用する機会はなかったが、26万以上の島を抱えるスウェーデンでは、各島を訪れるのにフェリー網も発達している。
ストックホルムの船着き場には、フェリーの乗船を待つ乗客の姿。また、観光客向けに、ストックホルム中心部から近隣の島を巡るフェリーツアーもある。
ストックホルムでの旅は、様々な移動手段をうまく組み合わせることで、迅速に名所を巡ることができるほか、街歩きや公共交通機関を利用して地元に暮らしているような気分を味わうこともできる。