ベネズエラ駐在生活の終わり 荷造りから送別会、思い出作りまで最後のカウントダウン

生活

ベネズエラでの任期満了が近づき、南米での駐在生活も終わりを迎える。仕事はさておき、ベネズエラでのトッププライオリティだった、エンジェルフォールへの訪問も果たし、心置きなくベネズエラを離れることができる。とはいえ、任期終盤は、仕事以外でも送別会、荷造りに最後の思い出作りと慌ただしく日々が過ぎていく。毎度のことながら、荷物がまとまるのは離任直前。色々な出来事が起きたベネズエラでの最後の時間の話。

海藻尽くめの料理でミニ送別会

カラカス事務所での勤務は、配置転換から4ケ月ほどだったので、わざわざ送別会をしなくてもと考えていたが、周りの同僚の雰囲気から実施しないという選択肢はなさそう。個人的には盛大なパーティーのような形式は好みではないので、同じ部署と、同じ階のフロアで働く同僚のみを招待してこじんまりと送別会を計画。

ベネズエラでは、状況にもよるが、離任する職員が自ら送別会を企画して同僚を招待するのが一般的。その為、費用は離任者が負担し、同僚たちはプレゼントで応えるというのが習わしのようだ。金曜日にベネズエラを発つフライトに搭乗する為、翌日を気にせず花金の送別会で朝まで盛り上がるという選択肢は消え、職場での仕事の最終日の朝に、朝食を兼ねて送別会とすることに。

日付が決まると、同僚の1人が休暇で参加できないということで、その前に、ミニ送別会。この同僚、海藻がマイブームのようで、毎日海藻をミキサーで混ぜたゼリーのような飲み物をアンチエイジング等の効果を期待して飲んでいる。さらに、海藻が頻繁に登場する日本食への造詣も深いということで、全品に海藻を使った料理で送別会。

海藻オンパレードの食事

メニューは、ひじきの煮物、キュウリとわかめのサラダ、豆腐じゃがあおさ載せ、ワカメ入り味噌汁、白米に海苔 これでもかというくらい、日本から持参した乾燥海藻をふんだんに使う。海藻にハマっている同僚は大喜びで、無事にミニ送別会の第1弾が終了。任期終了まであと1週間。

荷造りにはまだ手付かず。

最後の週末はビーチバレー大会

ビーチバレー大会の会場

金曜日にベネズエラを出発するため、最後の週末で思い出づくりと離任の準備を進めたい思惑が交差する。

丁度、ビーチバレーの大会が開催されるということで、普段一緒に練習する仲間と最後の思い出作りとして参加する。何年かプレーしていない期間があったとはいえ、かれこれ7年近くビーチバレーに取り組んでいるが、試合ではまだ一度も勝利を収めたことがない。悲願達成のため、最後の週末にかける。

チームのメンバーが上級者レベルのグループに登録し、ブラジルと違ってベネズエラなのでどうにかなるだろうと高を括っていたら、対戦相手の前哨戦をみると、レベルが明らかに上。初勝利が遠のくと思ったが、実際の試合では最初にマッチポイントを握ることができたが、ものにすることが出来ず逆転負け。2試合目はリズムが完全に崩れて、格下にみえた相手チームに敗戦。次の試合で初勝利をかけたかったが、試合会場はカラカス中心部から離れており、勤務先の規定で門限が適用される地域。

2試合目終了時点で門限オーバーとなってしまったので、3試合目は出場を断念。またしても初勝利はお預けとなってしまったが、ビーチバレー仲間とのよい思い出に。

結局自宅に戻ったのが夜になってしまい、荷造りなどの準備は全く進まないまま週末が終わる。

離任直前にまさかの自損事故

車体が擦れ、テールランプが一部破損

ベネズエラでの最後の週が明け、朝一の会議の為、オフィスに出向くが自宅にパソコンを忘れてたことに気付く。普段は家で仕事をしないように、パソコンを持って帰らないのだが、なにせ離任直前。報告書やら通常業務にプラスした仕事もこなさなければならないので、週末もパソコンで作業をしていた。

急いで家まで戻り、再びオフィスの駐車場に車を停めようとしたら、ガシャーンと鈍い音が地下の駐車場に響き渡る。一瞬、何が起きたのか事態が飲み込めない。ふと、冷静さを取り戻すと、先ほどまで全く視界に入っていなかった柱がバックミラーに映し出されている。

もともと地下の駐車場は柱が多い上、他の同僚の何人かもこのスペースで自損事故を起こしているとは聞いていたが、まさか離任直前になって自分の身に起きるとは。

いつもなら、駐車場に他の車が停車してあるので、慎重になるところだが、この日はガラガラだった為、その慎重さが失われ柱への注意が行き届かず。さらに、パソコンを家に撮りに帰ったことで、会議に遅れているという心理状況も、事故を引き起こすのに拍車をかけてしまった。離任まであと4日での事故。修理代金は給与からの天引き。送別会代など出費がかさむ離任時にさらなる痛手。

仕事を終えると、週末に全く進まなかった荷造りを開始。まずは、郵送で送る荷物と機内預入荷物とに分け、前者から取り掛かる。トランクケース2個に収まるように工夫していく。

前任地でのパプアニューギニアでは、お面や太鼓、カバンなど民芸品のお土産をたくさん購入したので、トランクの中にどのように荷物を収めるか苦労したが、ベネズエラでは民芸品のお土産はほとんど購入しなかったので、手早く荷造りが進み、月曜日と火曜日でほぼ終了。手間なのが、トランクの中に入っている荷物を1つ1つリストに書き出し、その価格まで記入した書類を作成しなければならない点。仕事以外では見たくもないエクセルの表に、収納品を1つ1つリストに記載していく。

おにぎりで送別会

ベネズエラ離任まで残り3日。いよいよカウントダウン。荷造りに専念したいところだが、水曜日はビーチバレーの練習日。一緒に試合に出場したメンバー以外にも直接お別れを言うために練習場所へ。練習は午後8時から10時までの遅い時間帯なので、仕事が終わってから練習に出かけるまでの時間に、翌日の送別会の準備。

送別会の持参メニューのおにぎり

かつ丼を食べてみたいというリクエストがあったが、朝食に食べるメニューではない上、揚げ物は手間がかかるので却下。せっかくの機会なので、日本食に触れてもらうべくおにぎりを準備する。一応、炊き込みご飯バージョンとオーソドックスな白米バージョンと2種類をビーチバレーの練習の前に作る。

最後のビーチバレーとなるはずが、金曜日出発の旨を伝えると、「まだ翌日も一緒に練習できる時間が残されているじゃん!」という雰囲気になり、仲間の1人が早速コートを予約してしまう。もしかしたらこの仲間とビーチバレーを一緒にできるのは、最後となるかもしれないと思うと、断りづらくなる。一応、荷造りが順調に済んで、来れたら来るという曖昧な返答に留めておいた。

家に戻ったら、機内預入荷物の荷造り。処分する洋服を分けるとスペースと重量には問題なさそう。残り2日にして8割くらいの荷造りが完成。

木曜日、いよいよ出勤最終日と同時に送別会当日。上述のように朝食を兼ねた会。持参したおにぎりの他、デリバリーでチーズを揚げたベネズエラ名物の1つテケーニョとエンパナーダを注文して、おにぎりが口に合わない時のバックアップ。朝一の会議がある同僚に支障がないように、7時30分からの開始にしたら、時間通りに集まったのは2人というオチ。結局、8時30分くらいから送別会らしくなり、手短に感謝の言葉を述べて終了。海苔を巻いただけの白米のおにぎりにマヨネーズを付けて食べる同僚の姿を見て、日本食の味わいを感じるのは至難の業なのかもしれないと悟る。炊き込みご飯バージョンはなかなか好評であったので満足。

肩の荷が下りて安堵していると、朝食会にしたのがまずかったのか、日本食を食べたという噂がオフィス内で広まり、招待されていない同僚が冗談半分で愚痴り始める。オフィス最終日、さっさと仕事を引き上げて荷造りなどの準備に取り掛かりたいのに、カラカスにたこ焼きとタイ焼きがデリバリーできる場所があるということで、日本人にその味が本物が確かめて欲しいとなる。

よって、業務終了後にまた、ミニ送別会。こちらは人事課のボスが音頭を取ったので、その方がすべて手配してくれ、皆でたこ焼きとタイ焼きを食べる。正直、味は可も不可もないというところだが、食べ物より即席で送別会をしてくれたことに謝意。カラカス事務所でのIDなど備品を返却してオフィスを去る。

徹夜回避で荷造り完了

荷造り完成

ビーチバレー仲間から是非練習に来て欲しいというメッセージが届き、結局断り切れず最後の練習に参加。別のビーチバレー教室で出会った仲間の1人が紹介してくれて参加できるようになった地元のビーチバレーグループ。メンバーの誕生日には練習後にケーキでお祝いをしたり、大会に出場したりと、ベネズエラでビーチバレーを通してよい思い出作りができた。

そんな余韻に浸る時間的余裕もなく、最後の夜。午後10時の練習が終わったら、仲間に最後の別れを告げて自宅へ急ぐ。シャワーで汗とビーチバレーで付いた砂を落としたら、最後の荷造り。

徹夜も覚悟したが、2025年初にカラカス事務所への異動のため、ベネズエラで一度、国内引っ越しをしていたのが奏功したのか、順調に荷物の整理は進み、徹夜を回避して、自室のベッドで最後の夜を寝て過ごすことができた。追い込まれないと始動できない性だが、結局いつも通り、事なきを得て任務が完了するので、なかなかこの癖は治らない。

ベネズエラを懐かしむ

オフィスの植木に姿を見せた鳥

最後の夜、ベッドに横たわりながらベネズエラを懐かしむ。国際的には良いイメージで語られることが少ないベネズエラだが、実際に暮らしてみてその魅力に惹かれた。まずは、豊かな自然とそこに生息する生き物。首都カラカスの大都会でも、山との距離は近く、車で45分ほど走ればビーチが広がる。

緑豊かな自然環境は鳥たちにとっても楽園。鳥のさえずりに癒されたり、大きな鳴き声で目を覚まさせられたり、鳥が身近に感じられる空間。職場のテラスの植木には、時折、鳥たちが訪れてくれ、その愛らしい姿に仕事でのストレスが軽減。

動物も去ることながら、ベネズエラ人の懐の深さと温かさには随分と助けてもらった。異国の地で生活し、仕事をすることは海外駐在生活が長くなっても、そう簡単なことではない。いつも笑顔を絶やさず陽気な雰囲気な一方、一旦、本気の仕事モードのスイッチが入った時のパフォーマンスの高いベネズエラ人の同僚と過ごせたことは人生の中でかけがえのない財産となった。

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