暮らすように旅するスウェーデン#10 ミュージアム巡り

スウェーデン

旅先の歴史や文化に触れるのには、博物館や美術館を巡るのが一手。スウェーデンの首都ストックホルムには、各テーマに沿っていくつものミュージアムが存在する。その中からいくつかの場所を紹介する話。

世界一開館時間の長いミュージアム

写真美術館の入り口

ミュージアム巡りの最大の敵は何といっても月曜日。ほとんどの場所が休館日となる中、世界一開館時間が長いミュージアムを謳う写真美術館は、月曜日も開いている。

週明けに開館していることにも驚きだが、開館時間が午前10時から午後11時までという点にも仰天。夜遅くまで開館していれば、仕事終わりや、さらには夕食後にでもふらっと立ち寄ることもできる。

長時間労働のイメージのない北欧において、半日以上もミュージアムが開館しているとは。当然ながら、そこで働く職員は、シフト制が組まれ、13時間ぶっ通しで働くというわけではないだろう。入館料は平日200クローナ(=約3,100円)、週末は230クローナ

館内には、歌手から活動家まで世界の著名人たちのモノクロのポートレート スマホで手軽に写真を撮れる時代においても、モノクロの作品が持つ力強さを印象付けられる。

万事に精通しているわけではないが、それでも作品として飾られている著名人の中には、名前やその功績を知っている人もおり、親近感が湧く。

デザイナー・山本耀司氏のポートレート

ポートレートの展示を巡っていると、遠目からでも見覚えのある顔が目に入る。

世界的なファッションデザイナー・山本耀司氏。黒を中心とした服をデザインするブランドのイメージとモノクロがマッチしている。

思わぬ日本人との「遭遇」を、ストックホルムの写真美術館で果たす。

美術館の上の階にはカフェ・レストランが入っており、対岸のストックホルムの街を眺めながらコーヒーブレイクや食事を楽しむことができる。

ストックホルムで人気No.1 ノーベル博物館

記念撮影用のノーベル賞のメダル

毎年秋に発表されるノーベル各賞。平和賞を除いた部門は、スウェーデンの王立科学アカデミーなどスウェーデンの機関が選考にあたる。

その所縁で、ストックホルム市内にはノーベル博物館があり、多くの観光客を引き付ける。スウェーデンを旅している際、最も多くの観光客を見かけたのは、この博物館だった。入館料は大人150クローナ(=約2,400円) 

博物館自体は、外観からの印象とは異なりコンパクト。賞の由来であるダイナマイトを発明したノーベル自身の人生についての説明や歴代の各部門の受賞者の愛用品が展示されている。

上から4本目が吉野彰氏の愛用ペン

2019年に化学賞を受賞した吉野彰氏のペンを展示の中に見つけて、日本人として誇らしげな気分になる。

平和賞受賞者の元南ア大統領のネルソン・マンデラ氏のポートレート

博物館の天井にはレールが敷かれ、歴代の各賞の受賞者たちの写真が館内を周回する。偉人たちがそれぞれの専門分野での功績には、頭が上がらない。

上述のように、博物館内はコンパクトなので、1時間もあれば主要な展示は説明文も含めて一通り目を通すことができる。それ故、もっと壮大な博物館をイメージしていたので、期待外れ感は否めない。

息を呑む黄金の間!ノーベル賞授賞式の晩餐会場のストックホルム市庁舎

ストックホルム市庁舎

ミュージアムではないが、ノーベル賞繋がりで、受賞の晩餐会の会場となるストックホルム市庁舎も訪れる。

市庁舎は、ガイドツアー形式となっており、英語かスウェーデン語で、午前9時30分から午後4時まで30分毎にツアーが提供される。

事前にオンラインでも時間を指定してチケットを購入することは可能。料金はネット・窓口ともに大人150クローナ(=約2,400円) 

訪れた日は、混雑のせいか、直後のツアーは満員の為、さらに30分後のツアーまで待機する必要があった。

1923年に完成したストックホルム市庁舎は、旧市街地の他の建造物のように何世紀にも渡る歴史があるわけではない。これは計画段階で、市庁舎の建物が他の歴史的建造物と調和が取れ、歴史を感じるような趣を醸し出すようにデザインを考案。さらに使用されるレンガの色味などに工夫が施された結果、実際よりも建物の年月を感じさせるよな印象を残す。

ノーベル賞受賞の晩餐会が開かれる青の広間

30人ほどのグループで市庁舎内をガイドの案内に従って、市庁舎内へ。まず通されたのが青の間。この広間こそが、ノーベル賞の晩餐会が開催される場所。

全く青の色味はないのに、名前は「青の間」という。何も置かれていない広間は、殺風景で広々とした印象。しかし、晩餐会の時には最大1,300名もの出席者が一同にここで食事を介するということで、さすがに1,000人を超える人がこの広間に入れば、食事中は隣席の出席者と肘がぶつかり合う距離に違いない。

ツアーでは、この最もアイコニックな場所以外にも、市議会の議場も訪れる。晩餐会の華やかなイメージが先行するが、市庁舎は行政の場としての機能が主なため、訪問者が勝手に立ち入り禁止区域に入らないように、警備員も目を光らせている。

黄金の間

最後に訪れたのは黄金の間。その空間に足を踏み入れるや、圧巻のスケールに思わず息を呑む。

「青の間」とは対照的に、こちらは文字通り壁一面、輝く金色。青の間以外は、事前に詳細な情報をリサーチしてこなかったので、それ故に、感動もひときわ際立つ。

古代エジプトの時代にタイムスリップしたような気分にもさせてくれる華やかさ。

壁画はすべてモザイク画

色もさることながら、すべてモザイク画で装飾されている点がさらに魅了させてくれる点。自称・モザイクハンターとして、世界のモザイク画を巡って旅をしたこともあり、これまではキプロスで出会ったモザイク画が最も印象に残った作品だったが、記憶が文字通り塗り替えられた。

思わず言葉を失い、ガイドの説明も耳に入ってこないくらいの衝撃。年齢のせいか、あるいは旅経験の所以か、心が動かされる場面が少しずつ減少してきているように感じる中、この黄金の間は今旅で一番の感動。モザイク画に使用されている金は、本物の貴金属の金のようだ。

ガイドツアーはあっという間に終了し、黄金の間の感動に酔いしれる。別のミュージアムに足を運ぶことも考えていたが、きっとこの後は何を鑑賞しても、この衝撃的な感動を上回ることはできないだろうと察知。ここは潔く、黄金の間の記憶で切り上げるのが賢明だろう。

他のミュージアムに巡りを断念させられたほどのストックホルム市庁舎の訪問だった。

今回は3つの場所を取り上げたが、ストックホルムには別名ミュージアム島とも呼ばれるユールゴーデン島には、ABBAミュージアムなどいくつものミュージアムが点在する。

スウェーデンの歴史や文化を触れるのに、様々なミュージアムを巡りながら造詣を深めていくのは、旅の楽しみの1つ。ストックホルム滞在中は、是非、どこか1つでもいいので、ミュージアム訪問を予定に入れてみてはいかがだろうか。

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