夏至を迎えたらスウェーデンは本格的な夏に入り、太陽との時間を満喫しようと、様々なアウトドアイベントが開催される。音楽のライブや、アウトドアシネマ、ダンスなどで、無料で楽しめるものも多い。
今回は、スウェーデン滞在中に訪れたアウトドアイベントを通して、スウェーデンでの夏の楽しみ方を紹介する話。
ピクニック気分で楽しむアウトドアシネマ

毎年秋に国際映画祭が開催されるストックホルムは、芸術都市としても洗練された印象を与えてくれる。今旅でお世話になっているスウェーデン人の元同僚が無料で楽しめるアウトドアシネマのイベントを見つけてくれ、家族や他の友人を誘って出かける。
映画の上映までまだ数時間ほど先だが、会場となる広場には多くの人。「密」という言葉を久しぶりに思い出させられる。
ストックホルムは北欧最大の都市とは言え、人口は中心部で約100万人弱。鉄道のセントラル駅ですら、混雑していても新宿や東京駅の比ではないくらい落ち着いた雰囲気。
それが、無料でかつ短い夏を楽しむ野外のイベントとなれば、人々を引き付ける。夏休みの終わりに近いせいか、参加者の多くが学生。
元同僚と友人、家族たちとで少し場違いな感じに失笑しながら、アウトドアシネマを楽しむ。

映画も去ることながら、友人や家族と集まって、夕暮れの時間を屋外で楽しもうという雰囲気の中、会場に着く前にスーパーで食材を調達。元同僚の家族も家からお菓子などを持ち寄ってくれて、映画の上映までピクニック。太陽が1日の役割を終えて、西に傾き始める最後の時間を惜しみなく外で楽しむ。

上映された映画は「10 things I hate about you」 1999年のスクールロマンス作品。携帯電話が普及していない時代の学校での恋愛の展開には、発せられる言葉の重み、駆け引きが今の時代とは随分と変わっただろうと感じさせられる。
映画が始まる頃には、日も傾き、8月とは言え夜は肌寒いスウェーデン。元同僚からコートを借りてきて大正解。さもなければ、寒さで映画を楽しむどころではない。
映画の中のキスシーンには、会場のあちこちから雄叫びが上がるほどの盛り上がり、大盛況のうちにアウトドアシネマが終了。
これだけの人がどのように会場からはけていくのか気になったが、大きな混乱もなく、実にスムーズに人の流れが出来てそれぞれが家路へと向かう。
アーティストに表現の場を提供

アウトドアシネマで顔を合わせた元同僚のお姉さんに誘われ、別の日にはコンテンポラリーダンスのショーに出かける。
バレエなど古典的なダンスは劇場などで観覧したことはあるが、現代ダンスはあまり精通していないのが実情だが、これも新たな体験。
現地合流で約束をし、目立つように全身緑の服で行くという、ちょっぴりチャーミングな元同僚のお姉さん。しかし、会場に着くと、意外と緑の服の来場者が多くてなかなか見つけられず。
結局、電話でやり取りをして互いの位置を確認して落ち合う。
5人のダンサーによる演目。演者の中にはクラシックバレエで基礎を築いたであろうという動きをするダンサーや、バイオリンの演奏も入り、独特な演出。正直なところ、不可解な部分もあったが、芸術の解釈はどれも一つ縄にはいかない。
元同僚のお姉さんとその友人と共に、ショーの後に色々その内容について議論したが、それぞれ異なる印象を受けていたということが分かり、同じ演目でもこうも感じ方が変わるのかと、気づかされた。
2つのアウトドアイベントを通して、夏の間の日が長い1日を存分に楽しもうとするスウェーデン人の姿を垣間見る事ができた。また、物価の高い北欧において、こうしたイベントが無料で開催されているのは、多くの人が芸術に触れられる機会を社会が提供しているという側面も、北欧スウェーデンならではかもしれない。
会場には、フードトラックとして、ピザなどの軽食も購入することができるが、多くの人がフィンガーフードやワインなどを持参して、ショーとともに、ピクニックも楽しむという姿にも、スウェーデン人の日々の暮らしの中で楽しみを見つける方法にヒントをもらったような気がした。