元同僚を尋ねてスウェーデンのストックホルムまでたどり着いた旅は、偶然にも夏の幕開けを祝うミッドサマー(夏至祭)と重なった。現地の人たちのお祭りに招いてもらい、1年で一番日が長い一日をスウェーデン流のお祝いで楽しむ話。
ミッドサマーとは?
実のところ、この元同僚と別の国で一緒に働いていた2023年、その国でミッドサマーを祝ったのがこのイベントを初めて知る契機となった。
日照時間の短い長い厳しい冬を終えた北欧では、一年で一番日が長い夏至の日に近い土曜日とその前日の金曜日が祝日となり、夏の到来を祝う。2025年は6月20日(金)から21日(土)がお祝い期間となり、この日は家族や友人と食事を囲みながら、短い夏の始まりを共に過ごす。
街もお祭りモード

日本人の6月のイメージはじめじめした梅雨に固定されがちだが、スウェーデンの街はミッドサマーのお祭りムード一色に包まれる。
お祭りでは、花の冠を身につける習慣があり、それをモチーフとした装飾がストックホルムの市街地にも飾られ、祝賀ムードを高める。

6月のミッドサマーの週末に家族や知人と過ごすために、人の移動も活発となるため、スウェーデン発着の航空券は値上がりするので要注意。
ヨーロッパの夏のバカンスは一般的に7月からだが、6月に北欧を訪問する場合には、ミッドサマーの日程を頭に入れて置くのが賢明だろう。
食事から乾杯ソングの合唱まで スウェーデン人の陽気さが垣間見える1日
ありがたいことに、元同僚のガールフレンドの友人が主催するミッドサマーホームパーティに招待していただき、スウェーデン本場でのミッドサマーのお祭りを体験する。
大学の友人同士とその配偶者などであるというホームパーティーの参加者たち。それぞれが事前の打ち合わせ通り、料理を持ち込み、パーティーの準備が始まる。

ストックホルム郊外の一軒家には、10人を超える参加者が一同に座れる大きなテーブルのあるテラスに、食事の後、ゲームを楽しむための庭まで。
実のところ、人生でスウェーデン人と出会い、これまで交流したのはこの招待してくれた同僚と、別の同僚の2人しかしない。スウェーデンの人口は約1,000万人、それほど大規模ではなく、スウェーデン人と関わる機会は少ないのが実情。
このミッドサマーのパーティで、10人以上のスウェーデン人に囲まれ、文化交流ができるのは絶好の機会。

元同僚と一緒に働いたことで、少しはスウェーデンに馴染みを持てたような気もするが、それまでは H&M や IKEA, Volvoくらいしかイメージが思い浮かばなかった。スウェーデン料理に関しては、IKEAの店舗で見かけたミートボールくらいの知識。スウェーデン人は、お祭り時にどのようなものを食べるのだろうか。
今回のホームパーティーは、それぞれの参加者が1品持ち寄る形式となり、サーモンやサラダ、ポテトにサーモンクリームケーキにクネッケブロードと呼ばれるクラッカーのようなスウェーデン特有のパンなどがテーブルに並ぶ。

特に目を引いたのは、手作りのクリームケーキ!魚卵がミックスされ、サーモンのトッピングと合わさり、ピンクの色合いがアクセントになっている。

胃にずっしりとくるボリュームだが、魚料理が食べられスウェーデンの食事に少し親近感が湧く。食事を囲みながら、それぞれの近況報告や夏のバカンスの予定など、話は尽きない。

テーブルの上には料理のほか「Snapsvisor」のリーフレット これはスウェーデンの乾杯ソングとでも言おうか、スウェーデン人なら誰もが知っている曲がいくつかピックアップされており、飲み物を頂く前に皆で合唱する。

一曲一曲は数分にも満たない短い歌ばかりで、食事中、いつでも合図を取り、歌いたい曲を指定して、みんなで大きな声で歌い、その後杯を交わす。
残念ながらスウェーデンの歌謡曲に関する知識はゼロだが、幸いアルファベットで記載されているので、周りに合わせながら口ずさむことはでき、一体感を感じる。
高揚した気分で合奏するスウェーデン人は実に陽気に映る。寒い冬のイメージが強い国の人々に対し、どこか神妙な印象を抱いていたが、このSnapsvisorを通して、スウェーデン人の朗らかな一面が垣間見えた。
夏至祭では大人も真剣にゲームを楽しむ

昼食後、少し落ち着いたら今度はゲームが始まる。ゲームと言うより、ミニ運動会を形容した方が適当かもしれない。
夏至祭の出席者をチームに分けて、様々な “種目” で競い合う。例えば、目隠しをしたメンバーを他のチームメンバーが口頭で誘導しながらコースを周ったり、チームで風船を挟んで競争したり、勝負にこだわって大人たちが真剣な面持ち。

それでもすでに、お酒も入っているので、足下が少々おぼつかなかず、笑いが絶えない。
いくつになっても、童心を忘れずに、その瞬間瞬間を楽しめるのは素晴らしいこと。たかがゲーム、されどゲーム、微妙な判定には、皆がクレームを付けるなど、時折、緊張感が漂う。

それにしても、スウェーデン人、北欧の一画というだけあって、平均身長が高い。それゆえ、ゲームでもそのフィジカルが優位に働く局面も。
夏至祭はスウェーデンの一大イベント

本気になって楽しんだゲームの後は少し休憩。

スイーツ好きにはたまらないケーキ。コーヒーと一緒に、午後の時間をリラックス。
ミッドサマーは招待いただいた家でのみのイベントかと思いや、至る所でイベントが開催されている模様。ティータイムでのんびりした後、近くの広場へ。
路上には、これでもかというくらいの車の列。ミッドサマーの日だけ、このような混雑になるという。
広場に着くと、たくさんの人が芝生でピクニックを楽しんでいるではないか。さらに音楽が響き、イベントを盛り上げている。

広場の中心には、塔が立ちその周りを人々が囲んでいる。北欧の国なので、十字架がモチーフかと思いや、元同僚が、あれは男性の生殖器がモチーフで、女性がモチーフの大地に立っているという解釈のようだ。
そのモチーフを歌を歌いながら周回している。これもミッドサマー恒例の光景のようだ。
夏至って祝うものなのかという印象から、スウェーデン人にとっては楽しむのに欠かせない日なのだという認識に変わった。
お開きは“夕暮れの”午前0時
スウェーデンのコミュニティでのミッドサマーを体験した後、再び元の会場へ戻り、今度は夕食。
文字通り、夏至なのでまだまだ明るく、体が夕食の時間と感知していない。

昼食は魚料理が中心だったが、夕食はがっつり肉料理。

ポテトグラタンとともに頂く。
出席者の中には、小さな子供連れの方もいて、そろそろ子どもを寝かしつける時間。それでも外がこんなに明るければ、子供も夜と認識できず、寝付くのも一苦労だろう。
夕食を囲みながら、尽きない談話。

それでも辺りが徐々に暗闇に包まれていき、肌寒さが感じられる。日付が変わろうとする頃、ようやく日が沈んでいき、それが合図となったかのように、夏至祭の会のお開き。
元同僚を通して、スウェーデンの貴重な1日を体験させてもらうことができた。
1年で一番日が長い日の持つ意味が、北欧・スウェーデンの人たちにとっていかに重要か、それを味わうように1日を楽しむ姿を通して、スウェーデン人を新たな一面を見ることができた。まさに暮らすように旅した瞬間だった。