暮らすように旅するイギリス#5 旅のトラブル ロンドン地下鉄ストライキ&携帯電話の一時紛失

イギリス

トラブルのない旅は珍しい。いや、むしろ毎回、何かしらの問題が発生し、それが旅に彩りを加えてくれたり、旅の記憶を鮮明にとどめておくのに役立ったりする。

今回のイギリス滞在中の大きなトラブルは地下鉄のストライキとの遭遇と携帯電話の一時紛失。

交通網が麻痺、徒歩でロンドンを巡る

地下鉄への入り口が封鎖された状態

BBCニュースを見ていると、流れてきたのはロンドン市内の地下鉄のストライキ。旅の途中は、通勤や通学への影響を気にせずに済むところだが、今回はそうはいかなかった。

ロンドン地下鉄の各線運休の案内

ロンドンの展望スポット「Sky Garden」と「Horizon22」の入場を申し込んでいた日がストライキと重なってしまった。

入場料は無料なので、今回はあきらめて、別の日に再びトライすることも考えたが、次に予約できる枠は、イギリスから離れた後の日程しか空いていなかった。せっかくの機会なので、徒歩で巡ろう。

ロンドン・ヴィクトリア駅からスカイガーデンまでを目指す。この夏は、サンティアゴ巡礼で1日数十キロと歩いたので、歩くのはもはや苦ではない上、ロンドン中心部は治安もそれほど悪くはなく、歩いていても不安はあまり感じない。

ビックベン前のデモ活動

ロンドンの観光名所の1つでもあるビックベンの前を通り過ぎると、政府機関の職員で構成される労働組合・PCS(Public and Commercial Services Union)がデモ活動を展開していた。

PCSにはロンドン地下鉄の職員も一部含まれるようで、抗議活動を目のあたりにして、ストライキを改めて実感。ストは労働者の権利の1つではあるけれども、公共交通機関に影響を及ぼすともなれば、他人事ではない。

それでも労働者が尊厳ある生活を送るために、交渉を求めなければならないくらい、物価上昇に賃金が追い付いていない、あるいは労働環境に改善が求められている状況と察する。

テムズ川超しのロンドンアイの眺め

夏と言えども太陽がガンガンに照り付ける気候ではないロンドン。なんとか徒歩で目的地までたどり着けそうだ。ビックベン以外にも、所々にロンドンの観光名所が姿を見せ、街歩きを楽しませてくれる。

クレオパトラの針

テムズ川沿いを進んでいると、オベリスクが姿を現す。説明書きにさっと目を通すと、紀元前15世紀にエジプトで建てられたものがロンドンに運ばれてきたという。

エジプトの歴史的建造物は大英博物館のロゼッタストーンだけでなく、ロンドンのこうした屋外の公共スペースにもたたずんでいるのを目の当たりにする。地下鉄のストライキでもなければ、この場所を歩くことはなかったので、ロンドンの新たな発見。

地下鉄ストのため代替えのバスは混雑

このような歩いたからこそ見つけられた小さな発見に喜んでいるのは旅人くらい。ロンドンで暮らしたり仕事をしたりしている人にとってみれば、地下鉄のストの影響は多大。代替えとなるバスは、この日はどの停留所も多くの乗客で溢れかえっている状態。

ロンドンの地下鉄はそれなりに馴染みがある一方、バスはほとんど利用したことがないので、路線図が頭に入っていない上、この日の混雑具合を考慮すれば、歩いて回る方が賢明な選択。

万歩計で計測をしてなかったが、感覚としては10キロから15キロくらいを歩いた疲労具合。これまで地下鉄では通り過ぎていた場所も、歩いたからこそ見えた新たな景色との出会いに恵まれた地下鉄のスト日。

一瞬の出来事、携帯電話を見失いパニック

カフェでの雨宿りのはずが…

ロンドン観光の最大の敵とも言えるのが、突如と振り出す雨。小ぶりなら、ロンドンっ子は傘もささず、そのまま通りを闊歩している。

雨への備えとして、防水のジャケットを羽織っていたが、それでは対応できない本降りになったため、逃げ込んだカフェで、トラブル発生。

10分くらいもすれば雨も収まるかと、何も注文せずに少し店内で待機。その期待が遠のくように、どんどんと雨脚は強まり、空模様も一層どんよりしていく。しばらく天気が回復する見込みがないと判断して、カフェでコーヒー休憩も兼ねて雨宿り。

携帯の充電が減っていたので、コンセントが近くにある席を探す。突然振り出した雨に、考えることは皆、同じ。よって、空いている席がなかなか見つからず。ひとつの席に目星をつけた途端、別の窓際の足元にコンセントのある席が空いたので、ささっとそちらに移動。

コーヒーを手にして、雨宿りの間、しばらく携帯電話を充電しようと思ったのに、その携帯がない!

ポケット、鞄の中を探すも見つからない。一瞬、パニックになる。自分自身に落ち着けと言い聞かせながら、再び、ジャケットのポケット、鞄をチェックするも、どこにもない。

もしかして、最初に目星をつけた席に置き忘れたのかと、そちらの方をチェックするも、なにもなし。家族・友人とのコンタクト、旅行の日程、写真、決済などなど、すべてを携帯に依存している状態。しかも異国の地で、それを失くすとなると、リカバリーが困難。そんな思いがパニックに拍車をかける。

明らかに、テンパっている様子でモノを探しているのに、隣の席のおじさんはすまし顔。もちろん、他人が何を探してようが知ったこっちゃないというのは理解できるが、あまりの涼しげな表情に、もしかしたらこのおじさんが携帯をくすねたのではないかという猜疑心さえ芽生える。イヤホンで耳が塞がれているため、気軽に「携帯が見つからなくて困っている」とも話しかけられず…。

一旦、席に着席して、パニック状態を落ち着かせるべくコーヒーを一口。最後に携帯を見た瞬間を思い出そうとするも、全く記憶が蘇ってこない。雨宿りのために店内に入ったときには手に持っていたのだけが覚えていた。しかし、そのあとの記憶が完全に飛んでしまっている。

新しい携帯を購入する、データーのバックアップ等々、コーヒーを飲みながら考える。

ダメ元でレジの店員に携帯の届け出がないか尋ねる。「どんなモデルか」と聞き返されたので、返答すると、何と店員の手には探し求めている携帯電話!夢か?

思わず「それっそれっ!」と、声を上げてしまう。こちらの興奮とは一線を画し、冷静な店員。「ログインできるか見せて」と言われ、パスワードを入力。当然ながらロックが解除され、持ち主であると証明できた。

誰がどこで見つけてレジに届けてくれたのかは不明だが、九死に一生を得た。その安堵の表情に対し、店員が「今回、お前は幸運だったが、普通は携帯なんて失くしたら絶対戻ってこない。十分気をつけろ!」と釘を刺される。仰る通り。ロンドンで紛失物が見つかる可能性なんて、限りなく期待薄。

携帯が届けられたということは、最初に目星をつけた席が空いた瞬間に、携帯を机の上に置いて、窓際の席に移動するときにそのまま放置してしまったということだろうか。そんな推測をしても、記憶が全く蘇ってこなかった。

ともあれ、計ったかのように、携帯が戻ってきた頃に雨は止み、そのままカフェを後にする。

ロンドン滞在中のトラブルは、地下鉄のストライキは外的要因で、自力では避けられなかった一方、携帯電話の一時紛失は自分で蒔いた種。

トラブルがない旅が理想だが、ミュージカルや美術館巡りなどの思い出や美しい景色よりも、トラブルの方が強く印象に残ってしまうのが旅の常なのだ。

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