ベネズエラが誇る名産品のラム酒-サンタテレサ農園でその神髄に迫る!

ベネズエラ

ベネズエラの名産品を尋ねられても、よほどの現地通でなければ知る由もないかもしれない。コーヒーや以前に紹介したチョコレートの他、ベネズエラ人が愛して止まないのがラム酒!その中でも歴史と伝統を誇るSanta Terresaのラム酒の神髄に迫るべく、その農園を訪問する。

農園見学は現地ツアーか代理店ツアー

サンタテレサ農園

サンタテレサ農園では、ラム酒の神髄に迫るべく、農園内を巡るツアーに加え、テイスティング、カクテルの作り方を学べる体験コースが用意されている。公共交通機関を使用して農園までたどり着くのは至難の業なので、自家用車で向かうか、代理店のツアーに参加することになる。ツアーでは、ラム酒を試飲することになるので、運転の必要がない代理店のツアーが賢明な選択。首都カラカスからはwawa社の日帰りツアーが便利。

ベネズエラでの任期も僅かとなり、送別会も兼ねて近しい同僚とサンタテレサを訪れることになったが、ラテンあるあるの直前にならないと予定が確定しない。行くのか行かないのか、結局2日前になってようやく全員の参加の確認が取れ、wawa社のツアーに申し込もうとしたが、あいにく満席。ツアーの申し込みは是非お早めに。

仕方なく諦めようとしたが、同僚たちは行く気満々。ひとまずサンタテレサ農園に直接問い合わせをして、農園内訪問ツアーとテイスティングに空きがあるかチェック。幸い、予約できるということで、心行くまでラム酒を試飲することはできなくなるが、自家用車で向うことに。代理店のツアーに空きが無い場合は、交通手段を確保した上で、Santa Teresaのサイトから申し込むか、電話で直接問い合わせてみるのがよい。

自然の中に佇む農園

ゲストを受け入れるレセプション

今回の訪問では、午前中に農園内を巡るツアー、午後にテイスティングを予約。その間は、農園内のレストランで昼食を取ることに。2つの体験で、料金は50米ドル。時間に余裕を持って出発したはずが、ピックアップする同僚の自宅が上手く見つけらず、ぎりぎりの到着。しかし、ここはラテン。時間通りにツアーがスタートする気配はなく、なんとか間に合う。

レトロな駅舎がチケット売り場

チケットを購入したら、農園内を巡るツアーの呼び込みまでしばし待機。

辺りを一見しただけでも歴史を感じさせるサンタテレサ農園。それもそのはず。ラム酒のボトルに示されているように農園が設立されたのは1792年にまで遡る。農園が位置するアラグア渓谷は、豊富な水源と昼夜の寒暖差がラム酒の原料となるサトウキビの栽培に最適な場所。

この農園では、サトウキビの栽培から、ラム酒の蒸留、特徴的な瓶詰までの工程を全て担うという。

農園内巡るツアーの車両

サンタテレサはベネズエラで最も歴史のある家族経営のラム酒会社で、現在は5代目がビジネスを引き継いでいる。

農園を巡るツアーの車両に乗り込んだら、早速ラテンのハイテンション。音楽に合わせてガイドが施設内を案内していく。

農園内のヤシの木がそびえる一本道

まず案内されたのは、農園内のヤシの木がそびえる道。それぞれの一本道が縦横十字に交差する。十字は、Santa Teresaのラム酒のボトルの底にもデザインが施されており、十字の4つの点は、「Orien (起源) 」「Maestria (熟練)」「Historia (歴史) 」「Propósito (決意) 」の意味に通じるようだ。農園の歴史に触れながら、学ぶモードに入り込みそうになったら、お祭りムードで1杯目のカクテルが提供される。

ツアーで提供されるカクテル

車の運転が控えているので、残念ながら思う存分堪能はできないが、軽く一口頂き、残りは同僚のコップへ。ラム酒の回りが早いのか、同僚たちのテンションはすでに最高潮に近い。

ラグビーボールを使って参加者全員でゲーム

農園の案内役となるガイドはラグビーのユニフォームに、手にはラグビーボール。ラム酒とラグビーにどんな関係があるのだろうか。

話は2003年、ギャング集団がサンタテレサ農園を襲撃した時に遡る。ギャングメンバーは、法の裁きを受けるか、サンタテレサの一員となるかの選択を与えられ、後者には職業訓練とスポーツ・ラクビーを通して、更生を促進させて社会復帰するプログラムが誕生した。

昭和のドラマスクール・ウォーズの「One for all, all for one」のように、ラグビーというスポーツの持つ規律、チームワークを学ぶことで立ち直る契機付けとなった。この活動はアルカトラス(Alcatraz)プロジェクトとして、これまでに200人以上のギャング構成員や元受刑者の社会復帰を手助けした実績があり、プロジェクトはベネズエラの刑務所内にも採用されている。

こうしたサンタテレサ農園の社会活動の一面も学んだところで、ツアーの参加者を2組に分けて、どちらのグループが早くラグビーボールを手渡すことができるか、すでにカクテルでいい気分になった参加者たちのチームワークが試される。簡単な遊びなのにラテンの雰囲気に大盛り上がり。

サトウキビを発酵させてラム酒が製造される行程

このツアーでは、製造ラインの見学は含まれていないが、写真撮影禁止のラム酒を樽付けした保管庫を訪れる。その頃には3杯目のカクテルが提供され、晴天も相まって同僚たちのテンションは最高潮に。

滴るフォルムが特徴のワックス

Santa Terezaの特徴であるボトル上部の赤いワックス部分。液が滴るようなフォルムは、コルクを密封するため、職人が一本一本、ワックスの釜にボトルを入れて手作業で仕上げているという。

ベネズエラの老舗企業の歴史に触れることができ、運転が控えているためカクテルは存分に味わえなくても満足いく内容。

テラスで優雅にランチ

サンタテレサ農園内のレストラン

満足のうちに農園巡回ツアーを終えたら、午後のテイスティングまでは昼食を楽しみながら過ごす。サンタテレサ農園内にはレストランも設置されており、ここに食事をするためだけに訪れる人も多いという。

それもそのはず、テラス席からの緑豊かな風景を見ながらの食事は、優雅なひと時を与えてくれる。カクテルを楽しめなかった分、食事を楽しもう。すでに出来上がっている状態に近い同僚の1人は、サラダで簡単に済ませるという。

ランチメニュー

パンチの効いたものが食べたいと牛肉を注文したが、同僚が頼んだ鶏肉の方がおいしそうだったというオチ。それでもこの空間で話に花を咲かせながら、ほろ酔い気分の同僚たちとの時間も、ベネズエラでの任期が残り僅かのため、名残惜しくなる。

カクテルと食後の眠気に襲われる同僚に発破をかけて午後のテイスティングへ。

ラム酒の醸造の奥深い世界に

それぞれのオーナーが保管するラム酒の樽

ラム酒のテイスティングの前に、個人や企業が保有するラム酒の樽の保管庫を通りに抜ける。

正直、これまでの人生でラム酒を好んで飲んできたというわではなく、カクテルに配合されているのを味わった程度。

製造方法についても、サトウキビを発酵させて簡単にできるものと想像していたが、ワインや日本酒、ウィスキーに引けを取らないくらい奥深い醸造の世界が広がっている。

ラム酒のテイスティング

テーブルに並べられたグラスにラム酒のボトル。案内役の方がSanta Terrezaのラム酒の製造方法を要約して説明する。ラム酒は4-35年の間それぞれ個別に熟成され、異なる熟成年数のラム酒をRoneroと言われる匠がブレンドする。異なる熟成年数の原液がブレンドされたラム酒はソレラ方式と呼ばれる手法で、4つの樽を縦に並べて、ラム酒を上の樽から下の樽へと流していく。最終的に一番下の樽が満たされたら、樽の半分のラム酒を抽出し、空いた半分のスペースは、再び上部の樽からラム酒が満たされるという。

想像していた以上に奥が深いラム酒の製造工程。

それを知った上でテイスティングに挑むと、単にアルコール度数が強いという印象よりも、その緻密な製造工程を経て出来上がったラム酒の味の世界を感知しようとなる。

繰り返しになるが、この後、運転が控えているので、舌先で軽くテイスティングにするだけにとどまったが、口の中に広がるラム酒の世界に浸る。

テイスティングの機会のように、一度に異なるタイプを試飲できれば、さすがにそれぞれの味わいの特徴を感じることができる。この日試飲した中で最も印象に残ったのは、ウィスキーの樽にラム酒を入れて熟成させたボトル。一瞬、ウィスキーを飲んでいるのかと錯覚するくらい、その香りが充満し、ラム酒の味わいが後から追いついてくる味の変化に驚かされる。

ベネズエラ人の同僚はラム酒がウィスキーの香りを漂わせるなんて邪道だ!と述べていたが、個人的にはウィスキーの方が飲みなれているので、飲みやすい。

ウィスキー樽で熟成したラム酒

ということで、ウィスキー好きの同僚を訪問するときの手土産として、農園内のギフトショップで1本お買い上げ。事前に、同僚がカラカス市内のスーパーでの店頭価格をチェックしてきてくれ、このギフトショップ内で購入した方が少々割安であると判明。

ツアー終了後、レストランのテラスでコーヒーで一服してから帰路へ。さすがに酔いが回ったのか、爆睡する同僚たちを横目に、安全運転の宿命。

それでも、ベネズエラのラム酒の世界を知ることができた上、同僚との離任前の最後の小旅行で思い出作りに。

タイトルとURLをコピーしました