サンティアゴ巡礼 Day25 ヴィーゴ ~ アルカデ(22.1㎞)

サンティアゴ巡礼

いよいよカウントダウンが始まったサンティアゴ巡礼。日に日に増える巡礼者を避けるべく、この日は巡礼アプリGronze.com が推奨するヴィーゴからレドンデラまでの約16㎞ のルートから更に先のアルカデを目指す。中途半端な位置にある町のようなので、巡礼者で満員御礼は回避できると信じて歩き始める。

夜明けの巡礼開始

夜明け前のヴィーゴの街

1部屋に20人も巡礼者が寝泊まりしていたヴィーゴの巡礼宿。片耳に耳栓を着用してベッドに横になったが、いびきに気を取られてなかなか眠れず。朝も予定より1時間前の午前4時30分に目が覚めてしまう。

2段ベッドの上で寝ていた巡礼者はさっさと起きていなくなっていた。午前5時30分に起床し、ロビー横のキッチンスペースで朝食を取って身支度。前日は午前6時に出発して外が暗すぎた反省を活かして、この日は30分ほど出発を後らせよう。

しかし、思っていたより準備が早く済んだので、6時10分に宿を後にする。しばらくはヴィーゴの街の中心を歩くことになるので、街灯が助けになるはずだ。しかし、暗いせいか、同じように宿から出発した巡礼者と一緒に道に迷う。

巡礼の目印を発見

朝はフルーツしか食べずに出発したので、どこかでコーヒーでも飲もうかとも考えたが、パンも置いてあるカフェが見つからず、そのまま巡礼路を進むことに。

ヴィーゴの街を出ると、急勾配の上り坂が待ち構える。早朝でまだ体があったまっていない状態なので、このレベルの上り坂は体に堪える。いつの間にか、同じ宿にいた巡礼者が目の前に現れ、その距離が縮まっていく。

しかし、この急な上り坂では積極的に追いつき追い越せというモチベーションは湧かず、一定の距離を保ちながら先を進む。

サンティア・デ・コンポステーラまで残り100㎞切り

朝焼けに照らされるヴィーゴの街並み

急な勾配の上り坂を歩んできたご褒美と言わんばかりに、朝焼けに照らされるヴィーゴの街並みが一望できる。心臓破りのような道を駆け抜けてきた甲斐があった。ふと、いつものように巡礼の黄色い矢印に目をやると、サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの残りの距離の表示が91.38km と100㎞ を切って、残りの距離が2桁に突入。

頭の中で1日 25km 前後の距離を歩いたとして、残りは3-4日。いづれにせよ、早起きして日が昇らないうちに巡礼を開始して、巡礼者宿に到着したら手洗いで洗濯して…この生活とももう少しでおさらばだ。

朝日が差し込む巡礼路

ヴィーゴの街を見下ろせた巡礼路は、山の中へと方向転換され、前を歩いていた巡礼者が休憩を取っている間に、追い越して先を行く。

正面から朝日が昇り、木漏れ日の中を進んでいく。山道の途中にカフェが現れることは期待できず、そのまま歩き続けるが、フルーツしか口にせずに出発したため、空腹に襲われる。

カフェではなく、パン屋でがっつりモーニングを食べたいところ。グーグルでチェックすると、レドンデラの街までパン屋さんはない。残された距離は2㎞ ほど。パン・カプチィーノと頭の中で連呼しながら、先を行く。

犬の散歩をする地元住民

吐く息が白くなるくらいの気温だが、上り坂と湿度のせいでかなり汗ばんでいる。出発からすでに3時間以上。体の状態はというと、左足の踵は痛いまま、右足の脛の外側の痛みはいつの間にか消え去り、まずまず。

レドンデラの街に入ったのは出発から3時間40分ほど経ってから。確か、前日にヴィーゴで分かれた競歩並みのスピードで歩くデンマーク人は、この町まで歩いて一泊すると話していた。別れた後、3時間以上も歩いていたのだろうかと想像すると、その体力にあっぱれ。

モーニング休憩でエネルギーチャージ

またもフォークが刺さったパン

道路を挟んで2軒のパン屋が軒を連ねていたが、1軒はテイクアウト専用のようだったので、もう一方の店舗へ。ツナのエンパナーダでがっつり空腹を満たし、Cama de Chocolate と言われる菓子パンとカプチィーノで4時間近く歩いてきた体に甘味のご褒美をあげる。

運ばれて来たパンには、前日と同様にフォークが突き刺さっている。これがスペインの提供スタイル。エンパナーダはサクサクとした食感で、生地が零れ落ちないように、背中を丸めて頬張りながら、パンの生地をお皿の上に落とす。チョコレートパンの甘さも体に染みて、カプチィーノを飲んで合計5.4ユーロ(=約918円) モーニングに1,000円はちょっと贅沢かもしれないが、店の雰囲気を考慮すればリーズナブルな印象。大満足のうちにパン屋でのカフェ休憩を済ませる。

歴史的建造物の保存の困難さ

鱗雲に映えるオレオ

この日も巡礼路には高床式貯蔵庫のオレオが時々姿を見せる。すっかりオレオハンター化とした巡礼者になったので、お気に入りを見つけては写真に収める。この日のお気に入りは、鱗雲に映えるオレオ。

用途を変更しながら、現在も維持・管理されているオレオが目立つ一方、適切なメンテナンスが施されずに廃れていくオレオがあるのも現実。

維持・管理されていないオレオ

地域を象徴する建築物だとしても、メンテナンスがなければ滅びていくのを食い止めることはできない。歴史的建造物を維持・管理しながら、後世に受け継いでいく難しさを垣間見る。

傾斜を優先させるか距離を優先させるかの掲示版

レドンデラの街を離れると、再び巡礼路は山道へ。おまけに次から次へと巡礼者が現れる。この日の宿の密具合が気になり始める。

道中に珍しい、道しるべの看板。左手は距離は70メートルだが、上り坂の傾斜が15度の急勾配。一方、右手は傾斜が5度と緩やかな坂だが、距離が360メートル。10人ぐらいグループのスペイン人巡礼者は、看板の前でどちらの道を選択するか白熱した議論を繰り広げている。

おしゃべりに熱中する時間があれば、どちらの道を選択してもとっくに坂を上り切っていると思うが…。そんなグループの盛り上がりを横目に15度の傾斜で自分自身を追い込む。

上りが急勾配ならば、下り坂も同じくらいの角度になる。思わず滑ってしまいそうになったので、慎重な足取りで坂を下っていく。

坂を下るとこの日の巡礼宿があるアルカデの町に入る。予想していたよりも早く到着。丁度午後12時を回ったところ。宿は午後2時30分からチェックイン可能ということで、先にランチにしよう。

巡礼者4人の静かな巡礼宿

巡礼宿近くにランチメニュー14ユーロ(=約2,380円)のレストランを発見。数時間バックパックを背負って歩いた後はいると、見比べの為にレストランを行ったり来たりする気力が沸かない。従って当たり外れはあるが、致し方ない。

前菜の生ハムとメロン

前菜は生ハムとメロン。メロンに生ハムが包まれて提供されるかと思いきや、文字通り、メロンの上に生ハムを載せただけ。映え度ゼロ。おまけにメロンに切り目が入っていないので、自分でメロンを切って生ハムと絡めて食べなければならない。

手間はかかるが、さすがはスペイン、生ハムは口の中で溶けてなくなるくらいの美味しさ。何年前だろうか。生まれて初めてメロンと生ハムを食べた時の事を思い出した。

メインはこの日も魚をチョイス。味は特筆する点はなく、あえてコメントを残すなら、メイン料理のボリュームが適度だったということくらいか。

デザートもフォークが突き刺さる

デザートはガルシア地方の名物というアーモンドケーキとコーヒー頂く。フォークが突き刺さった状態でお皿が運ばれてきても、もう驚かなくなった。慣れの恐ろしさ。

食事中、レストランのテラス席は巡礼路に面しているため、ほかの巡礼者たちが歩いて通り過ぎていくのを眺める。やはり、この町で宿泊する巡礼者の数は少なさそうだ。

この町の巡礼宿のチェックイン開始時刻までレストランで過ごす。

宿とレストランは目と鼻の先の距離。重い腰を上げると、隣の席にいた青い髪の毛のおばさんにつかまる。ガルシア地方出身でサンティアゴ巡礼をしたことがないので、いつも巡礼者を見ると感銘を受けるという。長い話になりそうだったが、幸い、おばさんの連れてきた犬が吠えだし、犬が苦手と言ってその場からお暇させていただく。

巡礼宿・Albergue O Lar de Pepa の前に到着すると、イギリス人の青年が待っている。中に誰もいないようと言う。おとなしそうな青年で、ただ待ちぼうけの状態。チェックイン開始時刻を過ぎているので、遠慮なく呼び鈴をもう1度鳴らしてみる。

ドミトリー部屋

中から人が現れてチェックイン手続きが始まる。ドミトリーは12ユーロ(=約2,040円)2段ベッド1台とシングルベッド2台。先程のイギリス人と同部屋に。この後、台湾人と、ポーランド人がチェックインしたのみで、巡礼者4人だけという静かな巡礼宿の環境に、大人数を避ける作戦が奏功した。

巡礼宿のテラス

こじんまりとした巡礼宿っだが、テラスもあり、湾まで見渡せる。前日から一転、静かな環境にほっと一息。

譲り合いの精神で機能する歴史的な橋

Ponde Medieval de Pontesampaio

アルカデの町は小さく、これと言って見所はなさそうだが、唯一気になったのが Ponde Medieval de Pontesampaio ローマ時代に建設されたという橋は、美しいアーチは何世紀もの月日を経ても色あせず、水面に反射されると、円形のフォルムを映し出す。

2日前に ア ラマジョーサの町でも歴史情緒溢れる橋を目にしたが、歩行者のみ通行可能だったのに対し、この Ponde Medieval de Pontesampaio は車両も行き交う。とはいえ、ローマ時代には後世の自動車が通行することを想定しておらず、せいぜい車1台が何とか通れる幅しかなく、対向して走行できるほどのスペースではない。

Ponde Medieval de Pontesampaio の橋の上

橋の手前には、交通整備員どころか、信号もない。しかし、どのように察知しているのか、順番が巡ってきたのを感知して、橋の片方側から車が橋に進入していく。

丁度、反対側から車が来たので、駐車していた車の運転手に、どのような仕組みか尋ねると、答えは至ってシンプルで、互に譲り合っているだけという。

つまり、前方に対抗車が来れば、橋の手前で待機し、互にすれ違うときにお礼の合図を交わすのみ。原始的。応えてくれた運転手の方は、地元の人は譲り合うマナーがきちんと教育されていると誇らしげに語っていた。

時間に追われる生活では成り立たない、この譲り合いのシステム。タイパが強調されるご時世において、ゆっくりと時間を取って、互に譲り合いの精神を持つ、心の豊かさを教えれた気がした。

自炊で宿のオーナーが不機嫌に

レンズ豆のサラダ

橋に感動したら、帰り道にスーパーに立ち寄り、自炊する夕食の買い出しをして宿に戻る。いつものようにレンズ豆のサラダに、この日は急にパスタが食べたくなったので、トマトソースとタコの缶詰を買ってパスタを茹でる。

パスタソースの材料

しかし、ここで事件発生。途中まで機能していたIHコンロが、パスタが半分くらい湯がき上がったところで電源が落ちて、スイッチが入らない。仕方なく、電子ポットで湯を沸かしてパスタを茹で、ソースはレンジで温めてから麺に絡ませる。トラブルに見舞われたものの、何とか夕食は完成。無事に自炊することができ、一見落着。

すると、同じ部屋のイギリス人も自炊を試みるが、IHコンロに電源が入らず困り果てている。おとなしそうな性格の彼は、途方に暮れている。せっかくスーパーで買ってきたラビオリが湯掻けず夕食にありつけないのだろう。スペイン語を話せないので、オーナーとのコミュニケーションも躊躇しているようだ。

ワッツアップ経由でオーナーに電話をかけてあげるも返答なし。玄関入り口の呼び鈴を鳴らすと、宿のオーナーがキッチンまでやってきた。IHコンロに電源が入らない状況を説明すると、チェックン時は優しそうな方だったのに、表情と口調が豹変。

もしやIHコンロを壊してしまったのかとさえ危惧するくらいの不機嫌さ。しかし、どうやら、IHコンロの上が水で濡れていると、作動しないようで、布巾で拭いてボタンを押せば電源が入るでしょ!とまくし立てるように説明するオーナー。

その剣幕に圧倒されるというか、完全にビビっているイギリス人青年。しかし、スペイン語が分からないため、何を言われているのか不明な状態。オーナーも英語を話せるのに、なぜかスペイン語でまくし立てている。

事情をイギリス人に説明すると、安堵の表情を浮かべ、彼も何とか自炊の夕食にありつけた。それにしてもコンロ1つのトラブルでそこまでかんしゃくを起こさなくても…と思った巡礼宿の夜。

巡礼者が少なく静かな環境と思ったが、巡礼宿に思わぬモンスターが潜んでいたというオチ。

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