サンティアゴ巡礼 Day 7 ファティマ ~ カシャリアス(20km)

サンティアゴ巡礼

休息日を明けの巡礼旅は、7日目を迎える。遭難の危機、猛暑の中の巡礼、足の化膿などから出発する際に、トラウマや恐怖感に苛まれる。無事に次の目的地までたどり着けるだろうか。自信を取り戻すべく、この日はファティマから少し短めの 20㎞ ほどの道のりを歩いてカシャリアスを目指す。

足の状態をチェック

少し腫れが引いた足首

前日に薬局で薬を購入した際、塗り薬が効かない場合、巡礼は断念すべきとの提言を薬剤師さんから受けた。痛み止めを飲んだおかげか、睡眠を妨害するような痛みはなく、午前5時に起床。まずは足の状態チェック。

ゾウの足のように腫れていた状態だったので、劇的に改善することは期待できなかったが、それでも踝の丸みが見て取れるくらい腫れが少し収まっている。この状態ならば巡礼を継続できそうだ。適切な診断と薬が効いてくれたことに感謝。

サンティアゴ巡礼路への合流へ

ファティマからは東へ行きトマール(Tomar) という町でファティマ巡礼路からサンティアゴ巡礼路に戻るルートがある。トマールの街も美しいので訪れる価値はあると、ファティマのホテルの従業員に進められたが、ここは時間を有効に使用するため、ファティマから北上してAnsião でサンティアゴ巡礼路に合流することに決める。

天気予報では、この日の目的地・カシャリアスの最高気温は41度。まだ6月というのに…。熱中症を回避すべく、お昼ごろには到着したい。そのためにも、道しるべにはこだわらず、グーグルマップを信じて進もう。道に迷わないように、水分は早めに確保することを肝に銘じて午前6時出発。

1日オフを挟んでの出発は、巡礼を再開する高揚感よりも、恐怖感に包まれていた。また道に迷って命の危険すら感じるのではないだろうか、猛暑で脱水症状の危機に陥らないだろうか。ネガティブな思考を払拭し、自信を取り戻すためにも、何としてもこの日の巡礼を成功させたい。

辺りはまだ薄暗く、肌寒さまではいかないが、涼しさは感じられる。日が昇って気温が上昇するまでが勝負だ。

暁で一日の始まりを感じる巡礼

道に迷わないように、念には念を入れてルートをチェック。慎重に巡礼を進める。早速、道しるべとなるサンティアゴ巡礼の黄色い矢印を発見。しかし目的地が トマール(Tomar) と書かれているので無視。トマールはファティマから東に位置する一方、目指す カシャリアスは北に進まなければならない。

矢印ではなく、グーグルマップを頼りに進むと、再び矢印が現れ、通過地点のオウレン(Ourém)まで導いてくれるようだ。

巡礼路に登る朝日

グーグルマップが示す経路は一般道だけを通ることを覚悟していたが、舗装されていない道が現れ、巡礼らしさを感じながら進む。出発から30分ほどで、正面から太陽が昇り始める。

日常生活で、日が昇る瞬間に立ち会うことはほとんどない。目覚ましのアラームに、文字取り “起こされ” 眠気と闘いながら朝を迎える。そんな生活とは一変、巡礼中は地平線から上る朝日を眺めながら朝を迎える。この歴然とした差。暗闇から太陽の光が大地を照らし始め、1日の始まりの知らせを体で感じる。自然の中で生活のリズムが刻まれていくのを実践できるのは巡礼のおかげ。

日が昇っても、夜のうちに冷やされた地表の温度が上昇するまではまだ時間がかかるので、今のうちに歩みを進め、距離を稼がなければならない。

足の痛みは消えていないが、一昨日の巡礼の終盤は時速2km ほどの速度でしか歩けていなかったのと比べ、この日は時速4km ほどにペースが回復。

巡礼路沿いのカフェ

2時間ほど、朝の涼しさの時間を活用したウォーキングの後、タイミングを見計らったかのようにカフェが現れ、迷わず立ち寄る。

ここまでの巡礼、グルメを楽しむはずが、道に迷ったり、タイミングが合わなかったりで、昼食を楽しむ機会にはそれほど恵まれていない。

一方、小さな村でも見つかりやすいカフェは、朝、巡礼をスタートして数時間歩いたところで、最初の休憩地として立ち寄ることが定番化しつつある。

地元の人がコーヒーを飲み、仕事に向かう姿や、近所の人と集まって井戸端会議をしている姿は、その地の生活の一端を映し出している。その様子を眺めているだけでも、違う世界と繋がったような気持ちにさせてくれる。

カフェでの注文も日に日に様になってきた。ポルトガルでコーヒーと注文すれば、エスプレッソが運ばれて来る。ここに少し牛乳を付け加えた「Café Pingado」がお気に入りに。パンは、全粒粉でその日の気分でチーズを挟んでもらったり、もらわなかったりと。

今回の巡礼までに、ポルトガルには2回旅行で訪れたことがあったが、いずれもポルトガル語が話せない時の訪問だった。類似している言語ということで、スペイン語で押し通していたが、ポルトガル語も習得した今、コミュニケーションがスムーズになり、食べ物や飲み物1つ取っても、自分のその日の気分に合わせて注文し、それを楽しめるようになった。

猛暑の巡礼、観光はお預け

丘の上にオウレン城壁

コーヒーとパンでエネルギーチャージをしたら、巡礼再開。日が照り始めているが、まだ太陽の高度が低いので木陰が地表の温度の上昇を防いでくれている。

30分ほどでオーレン(Ourém)の街に到着。前日、タクシーの運転手が、街にある城を訪れるようにお勧めしてくれた。

確かに目の前の丘の上には家屋とは一線を画す建造物。天守閣のような城ではなく、城壁が遺されている模様。地図で道のりをチェックすると、巡礼路から外れて、丘の上まで上っていかなければならない。

所要時間とバックパックを背負って消費するエネルギー、午前8時30分という時刻に城を見学できるかという点を考慮して、下から眺めるだけに止めておこう。この日も、最高気温は 40 度を超える予想なので、できるだけ涼しいうちに先へ先へ進むのが賢明。猛暑下の巡礼では、通過する村や町を十分に観光する時間を割けないのが残念。

午前中に巡礼終了!

カシャリアスの町の入り口

オウレンを過ぎた後、この日の最終目的地カシャリアスの町に入る。時刻はまだ10時25分。この調子ならば、午前中に宿に到着できそうだ。出発時に感じていた不安や恐怖が少しずつ払拭され、足取りも軽くなる。

道路標識には、一般道を歩いたりあるいは自転車で通行する巡礼者に注意を促す標識があるにもかかわず、すぐ脇を猛スピードで駆け抜ける車も。油断は大敵だ。

線路脇の巡礼路

この日の宿は、巡礼宿ではなくカシャリアス駅近くのホテル。線路が見えてきたので、この日の巡礼路は残すところあと僅か。

一昨日の遭難の危機に端を発した1日11時間にも及ぶ巡礼とは打って変わって、この日は順調そのもの。自信を取り戻すために、少し移動距離を短く設定したのも奏功。小さな成功体験を積み重ねる作戦。

高台にある教会の日陰で最後の休憩。目の前にはカシャリアスの町並みが広がる。タイミングを計ったかのように、教会の鐘が鳴り響く。11回、つまり11時を回ったということ。午前6時に出発したので5時間ほど歩いたことになる。

カシャリアスの駅舎

線路の高架下をくぐり、すぐに右折すべきポイントを見逃してしまい、また迷いそうになるが、妙な予感がして引き返したことで、惨事には至らず。

カシャリアスの駅舎が視界に入る。宿までラストスパート。

アーリーチェックイン成功

ホテルの部屋

カシャリアスには巡礼宿・アルべルゲはないので、一般のホテル・Pensão Manalvo でシングルルームを予約。宿泊費は38ユーロ(=約6,765円)

宿の入り口を探すのに手こずった上、チェックインは午後3時からなのでまだ数時間残されている。入り口の扉は電子キー式のようで、受付に人がいないパターン。これではアーリーチェックインの交渉どころか、荷物を置かしてすらもらえないのではないか。

試しに扉を押すと、鍵がかかっていなかったので開いた!声をかけてみたが、中から反応はなし。廊下が続いていたので、聞こえていないのかもしれない。奥へと進むと、作業部屋にハウスキーパーのおばさんを発見。

早く到着した事情を説明すると、チェクイン業務の権限はないので、オーナーに問い合わせてくれるという。おばさんがオーナーに電話すると、電話口で、「どうして勝手に中に入れているんだ!鍵をかけていなかったのか!」と怒鳴り声が響いている。まずいことをしてしまったか。

おばさんは、気にする必要はないと言って、キッチンスペースで待機するようにと。待っている間に、トレッキングシューズを脱いで足を解放。消毒も済ませる。オーナーがチェックイン手続きに関するメッセージをワッツアップで送信したというが、このメッセージが届かない。

オーナーはホテルから2軒隣のスーパーにいるということで、直接訪ねる。先程、電話口で怒っていたので、どうなることかと身構えたが、入り口の扉、それから部屋の扉のコードを紙に書いて手渡してくれ、チェックイン完了。アナログ最高!アーリーチェックインに成功したので、早速シャワーを浴びて汗を流す。

久しぶりのグルメを楽しむ巡礼

ノスタルジックなレストラン

シャワーを浴びてもまだお昼時。この日は、なんという素晴らしい巡礼だったのだろう。カシャリアスの町に入って宿に着くまでに、何軒かのレストランを目にしたが、あまりピンとこず。

宿の隣のレストランは、ちょっぴり古びて、ノスタルジックな雰囲気が漂う。駅前になければ誰も利用しそうにないローカルな場所。カード払いは受け付けなさそうだが、確認するとOKという。ということで、レトロな場所で久しぶりにグルメを楽しむ巡礼旅の目的を果たそう。

数日、鶏肉が続いたので、この日は魚!と心に決めていた。タラの塩漬けバカリャウで決まり。

ドリンクは、巡礼の味方・白ワイン。このレストランは250 ml と少し量は少なかったが、昼から乾杯できるのは至福。

お通しのオリーブは塩分摂取の為にも必須。 メインのバカリャウはジャガイモと混ぜられ、塩漬けの塩分がジャガイモに上手く乗り移り、両者を引き立てている感じ。白ワインにも合うメイン。

久しぶりにグルメも楽しむサンティアゴ巡礼という目的を果たせて大満足。胃もテンションが上がり、デザートまで。

デザートもプリンにホイップクリームが飾られた、洗練されたスイーツというより、懐かしさを感じさせる一品。コーヒーも頂き、ランチは16.8 ユーロ(=約2,800円)

町の規模、店の雰囲気の割には少々お高い印象は拭えなかったが、久しぶりにまともに昼ご飯を食べれたので文句はなし。

食後に、夕食用と翌朝の朝食用にフルーツとヨーグルトなどを購入したら、後はホテルの部屋で休むのみ。この日も BBC のニュースでヨーロッパの猛暑がトップニュースで伝えられている。ポルトガルの一部の地域の最高気温は 44度 に達している。暑さがピークを迎えるまでに、目的地に到着することができ、グルメも楽しめて、充実した巡礼の1日を終える。

後は翌日の準備。次に目指すアルヴァイアゼレの町には巡礼宿があり、予約の受け付けが可能とのことなので、ワッツアップでメッセージを送る。簡単なメッセージをやり取りしただけだが、一応、予約手続きが完了した模様。

気温は高くても湿度は低く、夜には気温がしっかりと下がるので冷房なしでも寝れるのが唯一の救い。

タイトルとURLをコピーしました