サンティアゴ巡礼 Day 20 アプリア ~ ヴィアナ・ド・カステロ(31.3km)

サンティアゴ巡礼

ポルトガルの首都リスボンからスタートしたサンティアゴ巡礼は20日目を迎える。何日か休息日を挟んだものの、3週間近くも歩くのが中心の生活を送っていることになるのかとしみじみ。この日は、巡礼旅で最高のタコ料理に巡り会えたアプリアを出発して、30km 以上先のヴィアナ・ド・カステロを目指す。

賑やかなサンティアゴ巡礼

山道の巡礼路

ドイツ人とのおじさんの相部屋でツインルームでの宿泊。幸い、いびきはかかない方だったが、夜中にトイレに起きたのにつられて目が覚める。せっかくの静かな宿での滞在だったのに、睡眠の質としてはイマイチ。

前夜にこのおじさんに早朝に目覚ましが鳴ることを了解してもらい、同じくらいの時間に起床すると言っていたが、おじさん全く起きる気配なし。そんなおじさんは放っておいて、宿の広いキッチンでゆったりとした朝食。

6時に出発しようと思っていたが、少しだらだら。6時10分に宿を後にする。振り返ってみても快適な宿であった。

この日も延々とウッドデッキの一本道の巡礼路が続くのかと思っていると、初っ端から山道が目の前に続く。変化をもたらしてくれるという観点からは少しワクワクしたが、その気持ちに水を差すような体のコンディション。

左足の踵の痛みは相も変わらず。さらに両足の親指の爪がはがれそうな状態。それに加えてこの日気がかりだったのが、右足のふくらはぎ。軽い肉離れのような痛みがあり、特に上り坂では痛みから足がつりそうになる。少し歩いて筋肉が温まってきたら、痛みも和らぐだろうと祈るしかない。

町の電話ボックス

1時間ほどで Fão という村にたどり着く。コンパクトな町並みだが、チャーミングな雰囲気で趣のある場所。機能しているかどうかは不明だったが、赤い電話ボックスが哀愁を掻き立てる。村のレストランには巡礼者向けメニューまであり、サンティアゴ巡礼が商業化され、ビジネスに利用されているのが鼻につく。

建物の上部に「Bom Caminho/Buen Camino」のメッセージ

そのせいか、所々に巡礼者にエールを送るためのグラフィックや看板が目立つようになり、巡礼路に賑やかさが溢れ出す。

ここは本当に巡礼路だろうかと常に疑心を抱いていた巡礼のスタート時期が懐かしい。

橋を渡る巡礼の一日

カヴァド川に架かる Fão 橋

カヴァド川に架かる Fão 橋は、渋い趣のある姿。この日はこの後2つの橋を越えていくことになる。橋を渡り切ると、エスポセンデ(Esposende)に入る。旅行代理店の扉には、サンティアゴ巡礼の道順が掲示している。

この日の目的地のヴィアナ・ド・カステロまで、あと26km。ここまで4km ほど歩いてきたので、やはり30km 以上の道のりとなりそうだ。巡礼アプリでも、ヴィアナ・ド・カステロで宿泊するように推奨されているため、多くの巡礼者を回避すべく、その先か、手前の町で一泊したかった所だが、ポルトガル人の友人が以前にヴィアナ・ド・カステロに住んでいたことがあり、あんな美しい街に滞在しないとはあり得ないと、半ば強制的に宿泊を勧められる。

ポルトガル人が言うのだから、ここは素直にローカルの声に耳を傾けよう。

村の中心を抜けると、石畳の巡礼路が続いていく。上り坂も相まって右足の痛みが再発。何度かストレッチを施して先を目指す。次の Cepães 村まで休憩を取れば、出発から2時間30分ほど歩いたことになる。

数日前はスペイン人たちと朝の出発から3時間ぶっ通しで歩いていたのが信じられない。

村にはスーパーがあり、カフェも併設されている。客の半分が巡礼者という、巡礼のオンパレード。

朝のカフェ休憩

カフェでチョコレートクロワッサン、スーパーから持ってきたパンは共に同じ場所で会計ができるという。素晴らしいシステム。クロワッサンはねっちょりして、サクサク感ゼロ。期待外れの食感。

テラス席でコーヒーを飲んでいると、前日に出会ったドイツ人女性と再会。彼女は、この Cepães で宿泊したようだ。アプリアで出会ったのが昼食時だったので、そのあと、さらに2時間以上もかけてここまで歩いてきていたとは、なかなかの強者。まずは朝ごはんを済ませてから、この日の巡礼を始めるという。

しばらくおしゃべりしているうちに、体は十分に休息できたが、足の状態は変わらず。目的地まで無事に到着できるか、不安が募る。

巡礼者を迎える石垣

巡礼路に立つ石垣

右足のふくらはぎの筋肉の状態を慎重にチェックしながら先へ先へと進む。Belinho に入ると、巡礼路の脇には石垣。守衛のために建てられたのか、その目的は定かではないが、午前中はその石垣の高さが日陰を作ってくれ、日光を避けることができる。

石垣が成す日陰を見て、いつの間に空が晴れ渡っていたのだろうかと気付かされる。先ほどカフェで休憩した際は、まだ曇空だった。

精巧に積み上げられた石造りの家

太陽の日差しが巡礼路に差し込んでくると、視線の先には他の巡礼者の姿。再び、アスリート魂に火が付いてしまい、競争ではない!右足の状態を考えて!と自分自身に言い聞かせるものの、目に入った他の巡礼者を全員追い越していく。唯一、自転車の巡礼者には先を越された。当然か。

巡礼宿のチェクイン開始時刻には行列

石造のセバスチャン橋

巡礼路は緑の中へと導かれ、近くを流れる浅瀬の小川は底がくっきり見えるくらい水が透き通っている。水のせせらぎが響き渡る。

道しるべには、サンティアゴ・デ・コンポステーラまで 187km と表示されている。まだ 100km 以上も残されているのかと感じる一方、毎日 25km 前後歩いていけば、あと1週間ほどで目的地までたどり着く。

残された巡礼路のほうが、これまでの歩みより遥かに短いことに、モチベーションが上がる。

石造りのセバスチャン橋は、高さがない分、自然の中に溶け込んでいる。両サイドに転落防止の柵さえない小さな橋をウキウキしながら越えていく。

石垣が続く巡礼路

石垣が作り出す空間の雰囲気に魅せられていたが、上り坂の度にふくらはぎの痛みが増していく。この日の宿の受け付け開始は午後1時30分からだが、足がうまく持ってくれれば、チェックイン開始時刻くらいに、ヴィアナ・ド・カステロの街に到着できるだろうという見込み。

橋の先に見えたヴィアナ・ド・カステロの街並み

目的地のヴィアナ・ド・カステロまでの距離が徐々に短くなったところで、まさかの心臓破りの上り坂。足がさらに痛む。おまけに体力もそろそろ限界。先行く巡礼者の姿がモチベーションになり、追い付け追い越せ精神で、痛みに耐えながら最後の気力を振り絞る。

ここからこの日3本目の緑色が特徴の橋を渡った先が、この日の目的地ヴィアナ・ド・カステロの街。確かに遠目に見える街並みからも、友人が言っていたように、華麗な様相を呈する。

橋は上下に別れ、上は自動車と歩行者、下は列車が通行する構造。ちょっぴりレトロな雰囲気を醸し出しているのも味わいがあって、思わす写真を撮りたくなる。

橋だけで1km 位の距離があったのではないだろうかという、最後の難所。橋を渡りきったら巡礼宿まで残り90m の表示。この距離ですら長く感じた疲労度合い。

この日の巡礼宿・Albergue de peregrinos São João da Cruz dos Caminhos は教会の施設内のようで、大きな扉のベルを鳴らしても応答なし。しばらくして扉が開いたら、チェックイン開始時刻の丁度、午後1時30分というのに、中には10人以上の巡礼者がすでに待機している。

なんだかカオス状態。一番乗りかと思ったが、先には先が。料金はドミトリーで15ユーロ(=約2,550円) この巡礼宿のドミトリーは、他の場所と異なり、大きな空間のスペースをパーティションで区切り、その中に2台あるいは3台のベッドが配置されている。カップルやペアの巡礼者は優先的に2台のベッドが配置された空間に通される仕組み。

パーティションで区切られた巡礼宿のドミトリー
巡礼宿のスタンプ

トイレとシャワーは宿泊数のキャパシティに準じて、数も十分かつ設備も新しくて問題ないが、手洗い洗濯場が1台しかないのはいただけない。洗濯機もあったが2台のみ。洗濯は順番待ちが生じる状況。

名残惜しいヴィアナ・ド・カステロの街並み

ヴィアナ・ド・カステロの街並み

巡礼宿にチェックインした後、シャワーを浴びて洗濯を済ませたら、時刻は午後3時を回っている。おまけに小雨まで降り出す。

事前に友人から街で訪れるべき場所のリストを共有してもらっていたが、さすがに 30㎞ 以上の歩いてきた上、足の状態、あいにくの空模様を考慮すると、観光する気力・体力は残っていなかった。

市街地中心部のカフェで昼食でだけいただこう。 イカ墨のシーフードパスタ。前日は、巡礼旅No.1のタコ料理に巡り会えたが、この日のパスタに盛られたシーフードはおそらく解凍されたもの。色合いは、墨の黒とシーフードの色合いが映えて申し分ないが、味は特筆なし。クリームベースだったので、お腹は一杯に満たされた。

食事の間に少しは体も休めたので、食後に街歩きをしようと目論んでいたが、さすがに体が悲鳴を上げている。ここは大人しくスーパーで買い出しをして宿に戻ろう。

巡礼宿で夕食

夕食はスーパーで買ったスープにパンとプロテイン入りヨーグルトで簡単に済ませて、早めに就寝。パーティションで区切られているだけのドミトリーなので、話し声は筒抜け。

家族に電話する人、友人同士でおしゃべりに盛り上がる若者たち、なかなか騒がしいが、これも相部屋の宿命。

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