サンティアゴ巡礼 Day 19 ヴィラ シャ ~ アプリア(27.1km)

サンティアゴ巡礼

ポルトガル第2の都市・ポルトからサンティアゴ巡礼の雰囲気は一気に変わり、巡礼者の数が断然増えた。また、単独やカップルでの巡礼者が多かったこれまでの道のりとは異なり、夏休みの思い出作りだろうか、学生のグループも目立つ。

静けさを享受してきた巡礼から、賑やかさをどのように避けながら先に進むか作戦を練らなければならない。ヴィラ シャからアプリアまでの 27.1km はこれでもかという数の巡礼者を目の当たりにする。

冬の日本海?ポルトガルの青空はいづこへ?

どんより曇り空の時化た海

この巡礼旅一番の宿の混雑のせいか、寝付きは良かったものの、夜中に2度も目が覚めてしまった。5時20分のアラームで起床。前日にある程度荷物はまとめていたので、オープンスペースに移動させて最後の荷造り。温かい紅茶とフルーツを朝ごはんにして出発準備。

韓国人のおじさんが準備に取り掛かっているほかは、みな熟睡中。巡礼宿のドミトリーにいびきが響き渡る。

外に干して置いたパンツは、夜の冷気のせいか半乾き状態だが致し方ない。先に起きて準備をしていたこの韓国人のおじさんはなかなか出発する気配がない。誰かを待っているのだろうか。

宿から一番手でこの日の巡礼に出発。巡礼を始めた頃は、朝、宿から出ていくのは最後の方だったので、なんという変化。ポルトからスタートした巡礼者は、過日、ヨーロッパを襲った熱波の影響を体験していないので、朝はゆっくりと過ごしているのだろう。

午前6時、すでに辺りは夜が明けていたが、どんより曇り空。見渡す海は、風の影響もあり、まるで冬の日本海のよう。この日もポンチョが登場することになるかもしれないと思いながらウッドデッキの巡礼路が始まる。

延々と続くウッドデッキの巡礼路

この日も一日、延々とこの一直線を進まなければならないかと思うと少し億劫になる。実際には、市街地を通る箇所もあるが、出発した時点では、それを知る由もなかった。

出発から1時間30分ほど、同じ景色が続く。あまりの薄暗さに人さらいにでも遭いそうなほどの不気味な朝。すれ違った清掃員に天気について尋ねると、いつもは朝から晴れているが、この日はあいにくの天気という。空が晴れないときは暑くならないので、その分、体力が温存できる。物事のポジティブな部分を見よう。

サンタクララ教会/修道院

アヴェ(Ave)川を渡ると、目の前にはサンタクララ教会/修道院の建物がそびえ立つ。ここからはしばらくウッドデッキの巡礼路とはおさらばして、市街地の中を歩く。

ヴィラ・ド・コンデの街並み

まだ午前8時前ということで、通りにはほとんど人がいない。それでも建物の雰囲気や商店の数からしても、町ではなく街の規模であることが伺い知れる。

Igreja Matriz de São João Batista Vila do Conde

市街地を進んで行くとIgreja Matriz de São João Batista Vila do Conde が姿を現す。巡礼中は数えきれないほどの教会を目にするが、この教会の程よく雄大さを感じさせる規模感に惚れ込む。おまけに教会の視線の先には水道橋。

アズレージョハンターでもあるが、水道橋にも目がない。水道橋を見るたびにその歴史のロマンに引き込まれる。本来なら近くまで行ってじっくりとその構造を観察したいところだが、巡礼中はなかなかそうはいかない。

通りがかった別の小さな教会も1500年代に建てられたと説明書きがあったので、歴史溢れる街。ここで一泊してもよかったかなとも思う。

街としては栄えているように見えたが、巡礼路沿いにはカフェはなく、少しコースを外れて地元のカフェへ。

地元のカフェで朝ごはん

巡礼とは無縁のカフェ。地元の人々の朝の時間が流れている。宿ではフルーツしか口にしていなかったので、いつもの全粒粉パンにチーズ、チョコレートパンを加えて朝食。街の朝の様子を眺めながら取るこの休憩時間は、巡礼旅でも好きなひと時。

カフェを後にすると、しばらく市街地沿いの道が続き、街のエネルギーや活気が感じられて歩くのも苦でなくなる。そんな高揚した気分の腰を折るかのように再び海沿いの長い一本道のウッドデッキの巡礼路に導かれる。

巡礼者で賑わうルート

巡礼路には多くの巡礼者

長い直線の巡礼路。先を見渡しただけでも両手では数えられない数の巡礼者。リスボンから始めた巡礼では、最初の1週間で出会った巡礼者の数を足しても、ここまでの人数に達しないくらいだったのに。

他の巡礼者を見かけないので寂しい気持ちがあったのは事実だが、こうも多くの巡礼者がいると若干疎ましくもあるのが正直なところ。それでもすれ違いざまには「Bom Caminho」と互いの巡礼の健闘を祈る。

巡礼者の数は増えてきたが、急ぎ足でなくとも普通に歩いているだけでも身長のせいか、ほとんどの巡礼者を追い越していく形となる。生粋のアスリート魂に火が付いたのか、他の巡礼者を追い越し始めると、さらに先に見える巡礼者を “ターゲット” として認識してしまう。

巡礼は競争ではないので、逸る気持ちを押さえて1回目の休憩から2時間ほど歩いたところで2回目の休憩。

オーシャンビューのコーヒーブレイク

海を眺めながらコーヒー休憩を取れる幸せ。確かに海沿いの道は一本道の単調さに飽きてしまうのが本音だが、一服する際は、この海の眺めに癒されるのは何にも代えがたい。

遥か彼方の水平線に視線を合わせて、しばしの休息を味わいたいところだが、カフェの前をさきほど追い抜かした巡礼者たちが次々と通り過ぎていく姿が目に入る。先を越されている感が否めない。巡礼は競争ではない!と言い聞かせるが、予約を受け付けない巡礼宿のベッドは早い物勝ちの競争になってしまうが…。

海沿いのウッドデッキの巡礼路が続く

2度目の休憩後は、再び海沿いのウッドデッキの巡礼路。出発時の空模様は別の日だったのではないかと思わせるくらいの青空が広がる。しかし、気温はそれほど上がらず20度前後といったところ。至って快適。あの猛暑に苦しんだ序盤の巡礼路が幻のようだ。さらに潮風が体温の上昇を抑えるのにも一役買ってくれる。

巡礼旅No.1のタコ料理

巡礼アプリGronze.com による推奨ルートでは、ポルトから2日目は Póva de Varzim までとなっているが、巡礼の距離、さらにはおススメコース通りでは、より多くの巡礼者が宿で混み合うことを想定。推奨ルートの各ステージの最終執着地点の前後の町で宿泊するようにする。

この日は Apúlia という町を目指す。町の入ると、ウッドデッキの巡礼路から石畳の道なりに。脚の疲労が蓄積された終盤に、この凸凹とした石畳は歩きづらい。

この日の巡礼宿まで500m の看板が見えたが、これは別の宿だった。前を行くドイツ人のおじさんの背中を追いかけるが一向に差が縮まらず。そうこうしているうちに、巡礼宿到着。

ドアの張り紙には、前日は諸事情により休業していたという。この日でなくて助かった。チェックインの午後2時前だが、扉が開いていたので中に。階段を上がっていくが、その先には人の気配はなく。呼んでも誰も出てこない。

さすがにもう 27km も歩いたのだ。これ以上この重いバックパックを背負って歩く気にはなれず。巡礼宿の階下のレストラン・Solar da Praiaで食事にしよう。

海沿いを歩いてきたので、シーフードを食べないわけにはいかない。イカかタコか。どちらが新鮮でおススメか店員に尋ねたら、「どちらとも」とつれない返答。前日のランチはイカだったので、この日はタコにしよう。

いつものようにパンとオリーブが運ばれてきたが、ランチメニューの付け合わせかと思いきや、お通しのようで別料金であることがお会計時に判明。パンは2ユーロ、オリーブ1ユーロ。グラスワインも割高だったのでビールを選択。昼から何のためらいもなく、アルコールを摂取する自分自身の姿に慣れてきているのに驚き。

しばらく、オリーブをあてにビールで火照った体を冷やしていると、メインのタコが運ばれてきた。お皿から溢れんばかりのボリューム。ブロッコリーとキャベツなどの野菜にジャガイモ。食べ応えがありそう。

タコはシンプルにグリルされただけで、味付けも塩のみ。ナイフを入れるとすっと切れる柔らかさ。早速口に運んでみると、生臭さゼロ。鮮度が高いことが伺える。その上、小分けにするために切ったときに既に実感していたが、その身の柔らかさは、口の中で2、3口噛めば溶けてしまうほど。身が硬くていつまでも噛み続けなければならないタコとは一線を画す。

メインプレートが運ばれてきた時のボリュームは、たこ焼きにしたら何個分に相当するだろうかと、その量に食べ切れるかの不安がよぎったが、その柔らかさ、シンプルな味付けが次々とタコを口の中に運んでくれる。

日本食ではタコが主役になる料理はそれほどないが、このグリルタコは、サーロインステーキと同格くらいの位置づけ。お値段も18.5ユーロ(=約3,150円)と、円安のせいもありちょっぴり贅沢。前菜に頼んだスープも含めて合計で27ユーロ。

5,000円近い食事代となったが、満足度は巡礼旅でもトップレベル。この後の巡礼路は、タコ料理で有名なスペインのガルシア地方を巡り、何度かタコ料理を食すことになるが、それでもこのレストランの一品が、タコ料理部門では間違いなくNo.1 !!

静かでアットホームな巡礼宿

巡礼宿のツインルーム

大満足のうちに食事を終えたら、チェックイン開始時刻まではまだ時間が残されていたが、レストランの2階にある巡礼宿・Albergue Santiago da Costaに上がる。従業員らしき方がいて、チェックインをさせてあげるという。

相部屋のドミトリーの利用希望を伝えたが、ツインルームが空いているので、その部屋に宿泊させてくれるという。他の巡礼者がきたら、ツインルームで相部屋となることだけ了承。料金は17.5ユーロ(=約3,000円) 

巡礼宿のキッチン

2段ベッドでないので天井まで視界が遮られないのがよい。あわよくば一人でこのツインルームを利用できたらと願ったが、後でドイツ人のおじさんが到着して、相部屋に。他にはシングルルームに2人の巡礼者。

巡礼アプリの推奨コースでは、宿泊地点になっていないので、巡礼路では多くの巡礼者を見かけたが、この場所の宿は混雑しておらず静か。おまけに、キッチンの雰囲気もアットホームで文字通りくつろげる雰囲気。

洗濯機があったので、久しぶりに手洗いの洗濯から解放させてあげよう。その間にシャワーで汗を流す。宿にはドライヤーもあり、至れり尽くせり。タコ料理に続き、この宿も巡礼宿としてはトップ3に入る快適さ。

巡礼宿のスタンプ

この日はテニスのウィンブルドン選手権の女子決勝が行われていたが、ニュースでその様子は伝えられていたが、試合そのものは宿のテレビでは観戦できず。午後の最高気温に達する時間帯を避けるべく、しばらく宿で休む。

巡礼旅の癒し、ビーチでチル

青いテントハウスが特徴のアプリアのビーチ

昼寝から目が覚めても、まだまだ日は明るい。猛暑というよりカラッとした暑さなので、ビーチに繰り出そう。

アプリアのビーチには、ビーチパラソルならぬビーチハウスが砂浜に並ぶ。太陽は照り付けるが、気温はそれほど高くないので、しばらくビーチで日光浴を楽しみながらチル。

サンティアゴ巡礼のポルトガルの海岸ルートを選択した1つの理由が、巡礼の合間にビーチで癒されることだったので、その目的を果たす。砂浜で横になっているだけで、巡礼で歩き疲れた体がほぐされていくような感覚。

日が傾きかけた頃に、ビーチから引き上げ宿に。昼のタコ料理があまりにヒットだったので、別のレストランを試そうかとも考えたが、素晴らしい記憶のまま、この町の印象を残すため、夕食は軽く自炊することに。

スープとサラダの夕食

自炊と言っても、スーパーで買ってきたスープを温めて、サラダを作っただけの簡単な食事。巡礼中の料理は体に疲労を残さないためにも、これくらいで十分。

ライダーたちの行列

静かな巡礼宿でのんびり食事をしながら夜を過ごそうと思ったら、けたましい音が窓の外から伝わって来る。何やらこの日は近くで、バイクのイベントがあるようで、ライダーたちがツーリングの列を成して道路を行き交う。

幸い、耳を突くようなエンジン音はすぐに遠くに消えていったので、騒音になやまされることなく静かに宿で夜を過ごす。相部屋となったドイツ人のおじんさんが、いびきをかかないように祈りながら、翌日の早朝にアラームが鳴ることを了解してもらい、就寝。

タイトルとURLをコピーしました