サンティアゴ巡礼 Day 16 サン・ジョアン・ダ・マデイラ ~ ポルト(34.1km)

サンティアゴ巡礼

リスボンからスタートしたサンティアゴ巡礼は、2週間余りの旅程を経てポルトガルの第2の都市・ポルトまで目指せるポイントまでたどり着く。この日は、サン・ジョアン・ダ・マデイラからポルトまで約34.1 km の道のり。数日間共に巡礼路を歩いたスペイン人と別れの瞬間を迎える。

安かろう悪かろう巡礼宿

一泊5ユーロ(=約850円)と、この巡礼旅で最安値の巡礼宿。お財布に優しいのは有難いが、部屋にはクーラーがなく、夜の室内には蒸し暑さが充満。おまけに、窓際のベッドを選択したのが仇となり、月明りで目が覚めてしまう。

まだ午前2時、トイレに向かうも、この巡礼宿がホスピスのような施設の中に入っていることを寝ぼけて忘れていた。暗い院内を歩くのはちょっぴり恐怖心に襲われる。宿泊費が安いので、あまり不平不満を漏らすのはフェアではないかもしれない。けれども他の巡礼者も満足はしていない様子だった。

この日は 30km 以上の道のりを歩かなければならないので、出発時刻を午前5時に設定。4時20分に起床すると、同じ部屋に宿泊していたイタリア人が一番乗りで出発。

食事をするスペースがないので、バナナとリンゴだけ口にして準備完了。いつもはスペイン人に置いてきぼりにされ、1,2時間後に歩いて追い付くというのがパターン化していたが、この日は一緒に出発。

しかし、肝心の正面扉が閉まっていて外に出られない。前日にチェックインした際、この日の出発予定時刻を伝え、施設の方が扉を開けてくれるように手配していたはずなのに。呼び出しベルのようなものも見当たらない。

一刻も早く出発したいのに、時間のロス。院内の方を見渡すと、廊下で夜勤中の仮眠だろうか、看護師の姿。さすがに起こすのは申し訳ないのでしばらく待機。すると、この看護師の携帯のアラームが鳴り、こちらへ向かってくる。どうやらこの方が門番だったようだ。

早朝出発の巡礼旅

巡礼旅一番の早朝出発。時刻はまだ5時過ぎ。さすがに辺りはまだ暗く、涼しいというよりは寒いくらい。外がこれだけ冷え込むのに、巡礼宿の蒸し暑さは何だったのだろうか。

まだ朝5時過ぎというのにスペイン人のテンションは全開。止まらないおしゃべりに、低血圧で朝は苦手だから、しばらくそっとしておいてと伝える。病気にでもかかったのかと本気で心配するスペイン人。

1泊だけの滞在だったサン・ジョアン・ダ・マデイラだが、街はやはり想像以上に都会で、歴史的建造物も数多く遺されている印象。辺りがまだ暗闇に包まれるなか、教会の建物にイルミネーションが輝き、そのこじんまりとした美しさを拝見できたので、早起きの甲斐があった。

カフェが見つからない!

巡礼路に朝日が昇る

幹線道路を歩いているうちに日が昇り始める。それでも別の地域に入ったのか、霧に包まれて再び寒さが到来。

穀物貯蔵庫

前日から虜になってしまった穀物貯蔵庫のオレオの姿があちらこちらに。出発から2時間ほど経過した段階から、休憩のためのカフェを探し始めるが一向に巡り会えない。

出発が早かったせいもあり、せっかく見つけたカフェはまだ開店していない。唯一、見つかった町のカフェは、パンもオレンジジュースもなく、コーヒーのみ。さすがに、出発時に宿で果物しか食べてこなかったので、少し腹ごしらえが必要。スペイン人の1人だけコーヒーを飲み、後は次にカフェが現れるのを待つ。

さらに1時間ほど進み、足の疲労が蓄積し始めた頃、Lourosaの町に入ると、雰囲気が一転。カフェやレストラン、パン屋が立ち並ぶ。久しぶりにメニューのあるカフェで休憩。

カフェで朝ごはん

スペイン人の1人は、この日の移動は 30km を超える長丁場なので、休憩時間もほどほどに切り上げて先を急がないといけないと言っていたのに、いざ朝食が始まると、おしゃべり止まらず。

そろそろかなと思ったタイミングで、別の2人のスペイン人が店で合流。前日の巡礼宿の環境を愚痴り始めると、話は尽きず。結局1時間近く休憩することに。

スペインのアンダルシア地方出身のこの2人とはここでお別れ。数日間、一緒に歩いた中だったが、信仰心を高めるためにサンティアゴ巡礼に勤しむ巡礼者である彼らとの出会いは、本来の巡礼の姿を垣間見させてくれる機会となった。

共に、残りの巡礼の健闘と幸運を称えてお別れ。

Grijó の街並み

カフェでの長すぎる休憩からさらに2時間ほど歩くと、Grijó の町に入る。巡礼アプリで推奨されているのは、ここまでの道のり。だが、時刻はまだ午前10時30分。ポルトを目指してさらに北上。

スペイン人との別れ

30km 以上を歩かなければならないこの日のルート。唯一の味方は雲に覆われた空模様。そのおかげで随分と気温の上昇が抑えられ、暑さによる体力の消耗を防いでくれている。

ここ数日は20数km だけ歩く巡礼だったので、昼前には宿に到着していたが、この日はまだまだ先が長い。

スペイン人との定番となった巡礼旅のコーラ休憩

出発から20km ほど歩いたLoureiro の町で巡礼路沿いにカフェが現れたので、全員迷わず休憩を取ることに賛成。スペイン人との2回目の休憩は、決まってコーラ休憩となるのだ。一人だけジュースを注文させてもらう。どうやらこのコーラ休憩は、お会計を順番で回しているようだ。

追い討ちをかける上り坂

残された距離を考慮すれば、あと数時間のうちにポルトまでたどり着けるだろうという希望的観測を抱いたが、その先行きに暗雲が立ち込めるように、休憩直後の再スタート地点からは上り坂が続く。その上、石畳のような道のりで、見栄えは美しさもあるが、微妙な傾斜があり、足への負担は大きい。

ポルトに到着後は、翌日に休息日を設ける予定だが、スペイン人2人はそのまま巡礼を継続。もう1人のスペイン人も1日休息日で休んだ後、サンティアゴ巡礼のポルトガルルートのうち、海沿いではなく、内陸部を通る巡礼路を進む予定のため、このメンバーで一緒に歩くのも最後の瞬間。

セルナデロの巡礼宿で会ってから、4日間、一緒に巡礼してきたが、サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指すという共通の目的の下で過ごしてきた時間の濃密さゆえだろうか、数カ月くらい同じ時を共有しているかのような錯覚にすら陥る。年代もバックグラウンドも様々だが、それぞれがグループの中で、個性を発揮して1つのチームのような雰囲気が生まれた。

出逢いには必ず別れが待ち受ける。最後の時間の名残惜しさゆえか、上り坂の厳しい巡礼路を進む時間はあっと言う間に過ぎ去り、Santo Ovidioに到着。ここからポルトまではメトロで目と鼻の先。

それぞれポルトで宿泊する場所が異なるため、最後に一緒に食事をする。

ポルトガル料理に欠かせないスターターのスープ

前菜としてスープ、メインはバカリャウ。ポルトガルではランチメニューでも一般的だが、ブラジルではクリスマスなど特別な時に食べるバカリャウ。

スペイン人との最後の晩餐ゆえ、このバカリャウの料理にも特別の意味合いを感じる。このスペイン人たちと出会う前は、遭難の危機や猛暑により、軽い気持ちで始めた巡礼に対して恐怖すら感じていた。しかし、彼らと過ごした時間のおかげで、その恐怖心が去り、日々の巡礼を達成できるという自信を植え付けてくれたほか、おしゃべりをしながら巡礼を楽しむということも教えられた。

最後のコーヒーを一緒に飲みながら、感謝や寂しさなど様々な感情が湧き出てきた。

巡礼のルール違反?地下鉄利用

ポルトの地下鉄駅

食事を終えてカフェから去ると、ポルトまではあと少し。歩くのかと思いきや、スペイン人はもう30km ほど歩いてきた上、ほぼポルトに到着したのも同然。ここまらは地下鉄でそれぞれの宿に向かうという。

歩いて巡礼路を進むという巡礼のルール違反?かとも思ったが、スペイン人は誰もチェックしていないと冗談っぽく笑いに変える。どうしてもルールを守りたいなら、ポルトから出発する時に、この地下鉄の駅まで戻ってからスタートすればいいし、あるいは休息日にこの地下鉄からポルト中心部までの距離を歩けば、巡礼路を全て歩いたことにはなると主張する。

なんとも臨機応変。この柔軟さも、このスペイン人たちと一緒に過ごして心地よく感じていたポイント。それぞれ、異なる駅に向かうので、最後のハグをしてお別れ。

ポルトは、上述のように休息日を設けるので、Airbnbで民泊を利用。2泊で110.79ドル(=約16,000円) 

最後は地下鉄を利用して少しずるをしたとは言え、30km 近く歩いてきた身に最後の試練となる4階の民泊の部屋までエレベーターなし。階段を上り切る頃には足がガクガク。

アパートには3部屋あり、すべて民泊用でオーナーはこの場所には住んでいる気配はなし。部屋は広々として風通しもよく、前日の最安値巡礼宿とは雲泥の差。

ポルトに到着したらやりたかったことは、マッサージ!5日前にコインブラでマッサージの施術を受けた際、毎日数十キロメートル歩く身に、マッサージが効きすぎた感覚が忘れられず、ポルトでは EcoMassage を事前に予約。スポーツマッサージ80分で90ユーロ(=約15,000円)。お値段は張るが、体のメンテナンスは巡礼のトッププライオリティ。

マッサージのはじめの方は、リラクゼーションのような施術だったので、指圧を強めてもらい、筋肉を解きほぐす。同じ時間でも巡礼路を歩く時間は時として永遠のように長く感じることもあるが、このマッサージの時間に限っては瞬く間に過ぎてしまう。この時間が数時間続いて欲しい。

セラピストの腕の違いなのか、体の状態のせいなのか、満足度は前回のコインブラで受けた施術の方か効果をより実感できたのが正直なところ。

近くのレストランでスズキのグリルを夕食にして、この日はそのままベッドに倒れ込んで、スペイン人との別れを迎えた巡礼の1日が終了。


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