サンティアゴ巡礼旅2度目の休息日を設けたコインブラ。長らく夢見ていたコインブラ大学への訪問を果たし、束の間の観光客気分を味わった後、再び元の巡礼者の生活に戻る。この日は、セルナデロまでの 24.8 km の道のり。オフで休めた体の調子かいかに。
騒音に悩まされる民泊ステイ
2連泊したコインブラではAirbnbの民泊を利用。個室でゆっくり休むはずが、前日はポルトガルの祝日。コインブラでは祭りが開催され、同じ建物の別の部屋の民泊の宿泊客が戻ってきたのは朝方。アパートが古いせいか、階段を上る音、上の階の室内を歩く音が響く。
せっかくの民泊ステイなのに、巡礼宿に泊まって別の巡礼者が出発の準備をしているのかと思い目が覚めてしまった。民泊の個室とは言え、耳栓をして寝るべきだった。
この騒音による睡眠妨害のせいで、朝5時にセットしたアラームでは、すぐに起きられず。妄想では、1日オフの後なので、気力・体力を新たにすっきりとした朝を迎えるはずが…。心を鬼にして、炎天下を歩く姿を想像すると、一刻も早く出発する方が賢明と現実と向き合え、ベッドから起き上がる。
部屋に冷蔵庫がなかったのが残念なポイントだったが、2日間、騒音を除いては、快適に過ごせた。
巡礼の救世主・地図アプリが大活躍
オフの間、同じくサンティアゴ巡礼を経験した友人とメッセージをする機会があり、道に迷ったり、猛暑に苦しめられたりして、想像していたより過酷だと伝えると、道に迷わないで済むようにアプリを教えてくれた。「Buen Camino de Santiago App」 - オフラインでも地図はアップデートされ、現在地と巡礼路を表示してくれる。
どうしてもっと早くこのアプリを利用しなかったのだろうか。これがあれば、あのファティマまでの道のりで遭難の危機に遭遇することもなかっただろうに。巡礼をしていると、ひとたび矢印マークが見つかると、レールの上に乗った列車のようにスムーズに巡礼路を進むことができるが、巡礼宿や民泊はそのルートから離れた場所にあることが多く、出発時に、再び巡礼のルートに時間のロスなく戻るというのが意外と難しい。特に方向音痴の身には…。
しかし、このアプリがあれば、現在地からどのように巡礼ルートに戻れるのかが一目瞭然。サンティアゴ巡礼の中盤に差し掛かる頃にして、巡礼の救世主が現れた!といったところ。

アプリに導かれて最初の矢印マークを発見。コインブラの市街地から徐々に離れて、水辺の川の傍を歩いていく。果てしなく長く見える一般道。退屈さに苛まれるが、雲がかかっている今のうちに、できるだけ先に進んで体力を温存させよう。

一般道を抜けて、農道に入ると辺りは一気に霧に包まれ、どこか別の世界に引き込まれそうな不安さえ芽生える。大きな分岐路では、運命の分かれ道とでもタイトルを付けたくなるような雰囲気。しかし、この日は、地図アプリのおかげで、分岐点に差し掛かっても何の不安もなく、先に進むことができた。
ポルトガルが悲しみに包まれた日

Trouxemil 村に入る手前でフランス人のおばさん2人の巡礼者が視線の先に入る。この日から、数日間お目にかかることになるが、70歳は超えているだろうか。それでも巡礼に年齢は関係ないと言わんばかりに、ストックを突きながら、しっかりとした足取りで巡礼を楽しんでいる。
村に入り、出発から丁度2時間ほど経ったところに、商店 & カフェが見つかったので最初の休憩。

生絞りのオレンジジュースに、ポルトガル名物のエッグタルト、ナタ。これはおそらく、前日の売れ残りのようで、新鮮さが感じられない味わいだった。エスプレッソを閉めに頂き、休憩終了。お店の人は、この時期はほとんど快晴の天気だが、この日のように霧に包まれるのは珍しいという。
太陽が姿を現さないで済んだ分、ここまでに道のり、特にカフェにたどり着く直前はかなり長い上り坂だったが、汗もかかずに済んだ。

一般道を抜けると、森の中の巡礼路へ。後から自転車の2人組に追い越された以外は、誰の姿も見かけず、森林浴さながらに、巡礼をしながら癒される。このまま、こうした静かな巡礼路が続いて欲しいと願っていたが、すぐに別の Mala 村に到着。巡礼路沿いにパン屋が現れる。
1回目の休憩はオレンジジュースとコーヒーにはあり着けたが、おいしそうなパンがなかったので、2回目の休憩。

巡礼中の定番メニューなりつつある、全粒粉パンにチーズを挟んでもらったサンドウィッチ。
パン屋に置かれたテレビは、先日に交通事故で28歳の若さにして他界したサッカーのポルトガル代表ディオゴ・ジョタ(Diogo Jota)選手の葬儀の様子が中継され、スーパースターの早すぎる死にポルトガルが悲しみに包まれていた。この日の濃霧の天気はもしかしたらそれを反映したのかもしれない。
ニュース映像を見ながら、人生いつ何時、何が起きるか分からないということを改めて実感させらる。心からジョタ選手のご冥福を祈る。
ある女性巡礼者との出会い

カフェを後にすると、トウモロコシ畑の中を巡礼路は進んで行く。収穫はまだまだ先のようで、その背丈は太陽の日を遮ってくれる高さではない。
緑溢れる景色の道を抜けると、再び村の中へ。この日は、7割くらいが市街地の中を歩いているような印象。

Mealhada の街に入ったところで、中心の大通りに薬局を見つける。右足のマメは完治した模様だが、左足の靴擦れはまだまだ治るのに時間がかかりそう。丁度、絆創膏がなくなるので購入。使用していた同じ絆創膏を購入したかったが、在庫がなく代替品。結構な値段がしたのに、使ってみたらいまいち踵の形状にはフィットせず。高い買い物になってしまった。
薬局から出ると、目の前のカフェで休憩中のスペイン人・アルフォンゾと再会。アルヴァイアゼレの宿で出会って以来、数日ぶり。どうやらこの日は、同じくセルナデロの巡礼宿に宿泊するよう。後ほど宿で落ち合うことを約束して先に進む。
ここから、残り 1.5㎞ の道のりが遠い。暑させいか、体が重くラストスパートが全く効かない。

地図アプリのおかげでこの日は道に迷うことなく、午後12時20分に巡礼宿・Residencial Hilárioに到着。宿泊費はドミトリー12ユーロ(=約2,000円)

受け付けの人は、誠実そうだがフレンドリーさゼロ。部屋に飾られたミニカーのコレクションを会話の糸口にしようと試みたが、「父の物」とつれない返事。

ドミトリーは2段ベッドではなく、シングルベッドなのがありがたい。マットレスの薄さは気になったが、宿泊費を考慮すれば、不満は控えるべきだろう。
洗濯、シャワーを済ませて少しベッドで休んでいると、同じ部屋にはアメリカ人、スペイン人巡礼者が次々にチェクインしてきた。
他にも、朝に追い抜かしたフランス人もこの宿に到着し、アルフォンゾとも再会。

巡礼宿近くのレストランに目星を付けていたが、休業中であえなく選択肢がなくなる。日差しが強く、レストランを探し回る気力は湧かず。
夕食と朝食の調達がてらスーパーのフードコートで済ませよう。たまにはレストランよりもカジュアルに食事するのもあり。

メインをタラと海老のグラタンのような一品にして、ブロッコリーを副菜に。サラダとワイン、スープを加えて8.98ユーロ(=約1,500円)お財布に優しいフードコートはみんなの味方。地元客で賑わう中、昼食を食べ始めると、同じ部屋にチェックインしてきたスペイン人も到着。
既にスーパーで昼食を購入したようで、飲み物だけフードコートで注文して一緒に食事をすることに。
2度目の巡礼として、コインブラからサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指すという小学校の先生。夏休み期間中を利用して、この日が巡礼初日のようだ。
話は盛り上がり、昼食だけでなく、宿に戻ってからもテラスで一緒に夕食も食べる。意気投合したかにみえたが、彼女は、この巡礼旅は自分と向き合うための時間。前回、スペイン国内のルートでサンティアゴ巡礼をした時、初日に出会った他の巡礼者たちと意気投合して、一緒に歩こう!と誘われたけど断ったという。
ここまで犬と以外は、誰かと共に巡礼路を歩いたことがなかったので、これだけ話が合うなら、一緒に歩いてみたいという思惑はすぐさまに音を立てて崩れた。もちろん、彼女の意志が尊重されるべきであり、それぞれが目的を持って、それぞれのスタイルで挑むのが巡礼の醍醐味でもあるのだ。
夜はなかなか気温が下がらず、部屋の中はまだまだ暑いということで、宿のオープンスペースで他の巡礼者も交えて、これまでの巡礼道のりの思い出話などに花を咲かせて、この日の巡礼は終了。