登山の果てにスマホ故障

トラブル

プラセ火山への登山を通して、人生で最も標高の高いポイント(4528m)まで到達できたが、スマホの故障という代償を払わなければならなくなった。

山頂で携帯電話が突然不調に

プラセ火山の頂上に到達した時、小雨に強風。天候は最悪に近かった。しかし、ところどころ雪に覆われていて、火山石の黒との銀盤のコントラストは思わず写真に納めたくなる景色だった。

スマホで何枚か写真の撮影ができたが、突然バッテリー切れの赤い電池マークが表示された。最初は寒さで電池の消費が加速したのだろうと思った。そんなこともあろうかと、携帯用の充電バッテリーも持参してきた。

充電のために繋ぐと、画面表示にバッテリー残量42%と表示された。はて?電源が切れたと表示されたのはなぜだろうか。

思考を巡らせているうちに雨足が強まってきたので、スマホは防水ジャケットにしまい込んで、下山。

ライトが点灯も電源入らず

下山して小屋で昼食を食べている際、スマホをチェックしたが電源が入らない。おまけにカメラの下にあるライトがずっと点灯したままで、スマホ本体の温度がぐんぐんと上昇しているのが分かる。

登山を通して出会った仲間と連絡先を交換しようにも、携帯の電源が入らないのでどうしようもない。相手方にワッツアップの番号を登録してもらったが、最悪、スマホが故障した場合、使用しているワッツアップはブラジルで使用していた電話番号なので、コロンビアで新しい機種に引き継げるのか不明だ。悪天候の登山を一緒に成し遂げたことで、仲間意識が芽生えたのに残念だ。

Airbnbに戻ってもスマホの電源は入らず、ライトが点灯したまま。翌朝になると、携帯のカメラの部分に水滴が浮かび上がっていた。最初は、雨に濡れて携帯がダメージを受けたと思っていたが、ひょっとすると、山頂の気温が低くて、スマホ本体内で結露が発生してしまったのかもしれない。

結露?か湿気か?

スマホ以外にパソコンやタブレットの端末は今回の旅行に持ってきていなかったので、時間も分からない、地図も調べられない状況になり、途方に暮れてしまい、予定していた時間より早く旅行を切り上げることにした。

自宅に戻ったのは、祝日の午後6時過ぎだったため、翌日にスマホの修理に出向くべくグーグルマップで近所の店舗をリサーチ。歩いて15分位の距離の店舗が見つかった。

スペイン語でうまく説明できるように、準備しておかないと。結露なんて単語はスペイン語で今まで一度も使ったことがない。辞書で調べると「Condensación」と出てきた。とりあえずこの単語に、登山をして山頂に気温が低かったため、結露が発生したと言えば伝わるだろう。

グーグルでヒットした店舗の住所の番地は、電気街のようになっていて小さな商店がひしめく。番地しか控えてこなかったので、もはやどの店舗を目指していたのか不明。一見すると、修理というよりは、携帯電話関連の部品を販売している店舗ばかりだ。本当にこの場所であっているのかという不安を抱えながら、手持ち無沙汰そうにしていたおばさんに尋ねてみる。

スマホを見せてごらんなさいと早速対応してくれた。カメラの部分の水滴を見て、これは湿気が問題だわと。一応、登山をして、山頂の気温云々、そして覚えたての結露という単語を使用してみたものの、あーつまり湿気ね。と、このおばさんは「humedad(湿気)」という単語で片づけようとする。

湿気だと、携帯を水で濡らしたり、水の中に落としたりといったような事故で発生してしまう印象を与えると思い、何度も結露!と訴えたものの、湿気が問題よと相手にされず。伝票に、名前と携帯の機種を控えられ、明日また来なさいと伝えられる。

期待半分、あきらめ半分

翌日、昼休みを活用して再び、おばさんのいる店舗へ。この小さな店舗でどのように修理するのか。あるいは、このあたりの店舗一体で共有の修理屋さんがあるのか、ビジネスモデルが謎だ。このごちゃごちゃした雰囲気を写真に残したかったが、いかんせんスマホが機能しないのでは、写真も撮れない。

到着すると、昨日はおばさん1人だけだったが、といっても、店舗は畳一畳くらいの広さなので1人でもスペースは限界に近い。だが、奥に置かれた机にもう1人の従業員が座り、スマホ本体を開けて修理をしている。どうやら、このごく狭の店舗は、修理屋も兼ねているようだ。

このもう1人の従業員が出てきて、またもや結露ではなく、湿気という単語を連呼しながら、状態はかなり深刻だから、ここでは直せない。他を当たってくれと、別の店舗を紹介される。ここから15メートルほどいったところだそうだ。修理できなかったせいか、ここの店舗では料金は請求されなかった。

教えられた店舗は文字通りすぐそこの距離で、新たに事情を説明するも、うまく伝わっている気配がしない。最初の店舗の従業員に付いてきてもらえばよかったと後悔。どうやら、この店舗では修理は取り扱っていないようで、同じ建物に入る別の店舗を巡る。

雑居ビルに何軒同じような店があるのというくらい、携帯関連の店舗が軒を連ねる。全部同じにしか見えないが、提供しているサービスで差別化を図っているのか。あるいは、密集することで、携帯電話といったら、ここに来るべしというような雰囲気を醸成しているのだろうか。

尋ねた店舗の方はとても親切で、一緒に雑居ビル内の他の店舗を回るのに付き合ってくれ、携帯の状態を他の店舗の従業員にその都度説明してくれた。これだけ店舗がひしめくと、互いにライバルでもあるはずだが、それよりもお客さんを皆で大切にしようというような印象すら受ける。

そのような優しさ溢れる雰囲気に心を打たれるも、肝心の修理を引き受けてくれそうなところは見つからず、3軒目にしてようやく引き受けてくれるというところが現れた。早速、スマホを分解して、顕微鏡を使って状態を確認していく。

分解されたスマホは洗浄の液体のようなものをかけられ、歯ブラシで掃除されていく。直るかもしれないという期待半分と、あきらめ半分。しかし、修理を担当してくれた方の顔は険しい。期待値があきらめの方に傾き始める。

いつまで待てばよいか分からないので、明日出直しましょうかと尋ねると、もう少し待ってと指示される。これは何のサインか。望みがないということを確定させるためか?15分ほどしてから、ちょっと難しそうだけど、また明日の夕方に来てと告げられる。 期待値が再び50:50まで戻った。望みがないなら、今日の時点でそう判断するだろう。素人ながらに思いを巡らせる。同じく、伝票に名前と機種を記入してもらい、明日出直すことに。

修理の結果は…

3日連続してこの電気街への訪問。もはや道に迷うことも、知らぬ場所を突き進む不安に駆られることもない。

競争と協働の精神で機能するこの電気街。修理を担当しない受付の従業員は、失礼を承知で言わせてもらえば、暇そうにしている。しかし、誰がどの携帯を預けていったのかをよく記憶している。

2日連続の訪問となったせいか、あるいは外国人というせいか、店舗に着くなり、修理担当の同僚にSonyのスマホと声がけをしてくれた。

昨夜の時点で50:50の期待値だったが、修理担当のおばさんのさえない表情から、結果は瞬時に推測できた。しかし、この携帯のために尽力してくれたことに感謝。この店舗でも代金は請求されなかった。コロンビアでは、修理できたら、お金を支払う仕組みなのだろうか。

もしそうだとしたら、修理できなかったとはいえ、取り組んだ時間に対する対価はゼロということになる。消費者としてはありがたいが、ビジネスとして成り立つのか考えさせられる。

最初に修理に出してから数日経過したため、携帯に対するあきらめの気持ちも芽生え、修理できないと判明した時にも、失うデーターや連絡先が頭をよぎったが、結果として受け入れる準備が整っていた。

結果は残念だったが、いままで訪れたことのなかった電気街を知る機会にもなったし、一見合理的ではないビジネスモデルの中にも、コロンビア人の人柄の良さを感じることのできる経験になったので、このスマホ故障のトラブルにも意味を持たせてあげよう。

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