旅にトラブルは付き物だ。最も多いのは忘れ物だが、今回の日本への一時帰国では、スーツケースの破損とメキシコの空港での検疫検査で携帯品の一部没収の憂き目に遭ってしまった。
スーツケースに30センチもの亀裂
約2日間をかけてコロンビアからパナマ、メキシコを経由して日本にたどり着き、回転台のそばに置かれていた自分のスーツケースをピックアップして、到着ロービーの扉をくぐる。3つのスーツケースとともに成田空港から羽田空港に移動してさらにそこから国内線に搭乗するのは億劫なので、2つのスーツケースを空港から宅配便で送ることにする。
マスターカードの国際線手荷物優待サービスを使用すれば、1個は500円の格安で荷物を送ることができる。ただし、海外で所有するマスターカードで支払いをした領収書やレシートの提示が必要。
宅配カウンターに向かい手続きを進めると、窓口の担当者から「スーツケースが破損していますが、これは承知済でよろしいでしょうか?」と尋ねられる。指摘された箇所に目を向けると、コロンビアを出発した際には、古さは残るもののまだまだ現役で活躍中のスーツケースには何の破損もなかったが、その本体に亀裂が入り、中身が見えそうなくらいだ。
長旅で疲れていたものの、破損の補償などは空港で手続きをしてもらった方が事がスムーズに進むことを思い出し、宅配便のカウンターを一旦、離れる。
しかし、すでに到着ロビーに出てきてしまっていた為、インフォメーションカウンターの職員に事情を伝え、全日空の担当者を呼んでもらう。10分ほどして、現れた担当者に破損状況を確認してもらう。全部で3ケ所の破損があり、一番大きな破損は30センチほどに及んでいた。
全日空からの補償で提案されたのは以下の選択肢。
1. 新しいスーツケースへの交換
担当の職員が、スーツケースのカタログを持参しており、その中から選択する。
2.スーツケースの修理
全日空は「ヒデ工房」という修理会社と提携しており、修理を依頼する。
仕方ないとはいえ、まだまだ活躍して欲しいスーツケースなので、選択肢2の修理を依頼することに決め、全日空の担当者が「手荷物破損報告書」を作成していく。
ポリカーボネートハイブリット樹脂を採用したスーツケースの本体の亀裂は、素人目には修理不可能なような気もするが、プロに任せるしかない。
コロンビアに戻るのが25日後な為、早急の修理を依頼。
出国2日前にスーツケース到着
手続きとしては、一旦スーツケースを持って帰り、中身を空っぽにして手荷物修理報告書の写しをスーツケース内に入れ、着払いで修理会社に送る。
修理の可否、納期が判明次第、全日空から連絡を頂けるとのことだった。3週間ほど経過してから、出発の5日前ぐらいにはスーツケースを配送できる見通しという連絡が入った。
しかし、その後待てど、スーツケースが届かなかったので、ヒデ工房に直接連絡を入れると、スーツケースは配送済のため2,3日中には到着するとのことだった。この時点で出国まであと4日。
最悪、間に合わなければ家族のスーツケースを借りて行けばよいと考えていたが、出国2日前に無事にスーツケースが到着。
あのナイフで抉り取られたような亀裂はいずこへ。なんの損傷もなかったかのように、修理されている。職人の技のすごさを実感。修理された箇所は、他の部分と違って、色合いに真新しさが残るものの、時間の経過とともに徐々に周りの色とも調和していくだろう。
修理費用は航空会社負担で済んだ。手際よく対応していただいた全日空の職員の方およびヒデ工房の担当者さんに感謝あるのみ。
海老没収@メキシコシティ
もう1つのトラブルは、コロンビアに戻る際にトランジットで1泊したメキシコシティの空港で起きた。成田からの長旅を終え、メキシコシティの空港に到着し、入国審査を済ませ、荷物の回転台に向かう。
3つ携帯したスーツケースのうち2つは、回転台から降ろされ、他の乗客の荷物とともにまとめられていた。もう1つの荷物が出てくるのを待ったが、一行に出てこない。ビジネスクラスを利用したので、荷物が出てくる際は、優先的に受け取れるように早く回転台に流されるはずなのに。
すると、回転台の奥にまとめられていた荷物を地上職員が運んできてくれ、その中に最後のスーツケース1個があった。カートにスーツケース3つを乗せ込み、税関をくぐり抜けようとすると、係員から奥の乗り継ぎ旅客用の税関で検査を受けてからまた、ここに戻ってくるように指示を受ける。まずい、なにか中に入れたものが引っかかったのか。
日本に帰国した際、買い出しをした商品の中に何かまずいものが入っていたのか。
コロンビアへ乗り継ぎはするが、今夜は一旦、メキシコに入国して、ホテルで一泊して明朝出発だ。そのため、乗り継ぎ用の税関に行く必要はないと訴えたが、効果なし。検査を受けてこなければここは通せないとの一点張り。仕方あるまい、税関から数十メートル離れた場所で荷物の点検を受ける。スーツケースを全て開けられ、中身を全てチェックしてく職員。
90%が食品なので、乾物などメキシコ人職員が見たことないものには、1つ1つ説明が求められた。一体、どれくらいの時間がかかったのだろうか。30分は裕に越えていた。しかし、特に何も没収されず事なきを得る。
最も恐れていたシナリオは、日本から持参した漢方薬に、禁止薬物などが含まれていたらどうしようということだった。
スーツケースに目を向けると緑色の見慣れないシールが貼られていた。荷物のターンテーブルから運び出された荷物に検疫探知犬が反応した場合に、このシールが貼られているようだ。おまけに、スーツケースのハンドルにも、黄色いテープのようなものも巻かれていた。これを目印に、検査を受ける乗客を定めているようだった。
検疫官から渡された書類を税関の担当者に渡せば、もうそのまま通過できるという。その書類を係員に手渡し、素通りしようとすると、探知犬を連れた職員が近づいてきた。こともあろうか、その犬が、スーツケースの前でお座りをしてしまった。空港職員にしてみればgood jobなのかもしれないが、乗客としてはヒヤヒヤする瞬間だ。
奥の検疫検査カンターで既にすべて荷物をチェックされたと説明したものの、税関の職員は一歩も引かず、もう1度検査が必要と譲らない。仕方なく、再び3つのスーツケースを開け、日本食品が詰められた中身を見せる。もはやお店屋さんごっこ状態。
税関の職員は、探知犬の嗅覚を信じて何かがあるはずと、意地でもなにかを見つけてみせるという意気込みが感じられた。漢方薬やぬか漬けはスルーされたので、一安心。
ほっとしていると、職員が「これだわ!」と何かを見つけた模様。一体なんだ?
職員が手にしていたのは久世福商店で購入した海老ちりめん メキシコへ入国する際は、たとえ乾燥されていた状態でも海老は持ち込めないとのことだった。
日本の食品で埋め尽くされたスーツケースのなかにうもれていた僅か30グラムの海老ちりめんの匂いを嗅ぎつけるとは、探知犬の能力にあっぱれ。税関職員の人とも、犬の嗅覚は本当にすごいねと感心し合う。
残念ながら、海老ちりめんは没収される。スーパーひとし君人形を失ったくらいの気分だ。残念。きっとおいしい海の香りが口の中に漂うちりめんだったに違いない。
職員が作成した書類を受け取り税関を通過。
メキシコに限らず、各国で入国の際に持ち込みが制限されているものは存在するが、乾燥していたら大丈夫だろうと安易な考えを持っていた。
海外に日本からの食品を持ち込む際は、禁止物などを事前にチェックすることが欠かせない。