屋久島旅 Day2 縄文杉

屋久島

屋久島旅メインの目的である縄文杉。運よく天気予報で快晴が巡って来た日、数年来ずっと見てみたかった縄文杉に出会いに向かう話。

ガイド付 or 個人でハイキング?

縄文杉へのハイキングについては、ガイドを付けてツアー型式で向かうか、個人でガイドを付けないか、意見の分かれるところ。

ゲストハウスで出会った大学の卒業旅行で来ていた旅人は、前日に縄文杉を訪れ、ガイドを付けないと、道順に迷いそうなポイントがいくつかあったと述べていた。しかも、大学の元野球部員だったのに、引退してから月日が経っているせいか、このハイキングが相当堪えたという。体育会系の20代がきついと感じるハイキングはいかほどなのか、少々不安が芽生える。

念の為、観光協会の方にも自力で縄文杉を目指せるか確認してみると、目印がきちんとついてあるので、よっぽどのことがない限り、迷うことはないということだった。もし不安になれば、途中で遭遇するであろうツアーの方に聞けば何とかなるだろう。

もちろん、植物の生態や屋久島の歴史などをハイキング中に知りたいというのであれば、ガイドを付けるべき。

早朝ハイキングは灯りが必須

星空が広がるくらい天気は良好。長年夢に見た縄文杉に出会いに向かえるのには胸が躍るが、難点はやはり早起き。登山口となる場所には屋久杉自然館からバスに乗って向かうことになるが、ダイヤは午前5時、5時20分、5時40分、そして縄文杉近くの山小屋に滞在する人用に午後2時の便。(2024年3月~11月の運行時刻)

この屋久杉自然館発の5時台のバスに乗るには、ゲストハウス近くのバス停を4時42分に出発するバスに乗らなければならない。いろいろ逆算していくと4時起き。なんてこった。

普段なら、2度寝3度寝してようやく起きれるところだが、旅行中はなぜか一度のアラームで目が覚める。

4時35分にゲストハウス最寄りのバス停に到着。あまりの静けさに、本当にバスが来るのだろうかという不安に駆られる。その不安を消し去るかのように、予定時刻より早い4時38分にバスが近づいてくる。この時間帯なので、交通量もないから、早く到着するのだろうと思っていると、無残にもバスは停車せずに通り過ぎる。一体今のはなんだったのか。夢?それとも運転手に存在を気づかれなかった?

まだ本来の予定時刻ではないので少し待ってみよう。しかし、予定の4時42分になってもバスが来ない。まさか、あのバスだったのか。逃してしまうと挽回のチャンスはゼロ。他に車も走ってないので、遅れるはずもないのに。

予定時刻を2分過ぎたころ焦りのピーク。ひとまず、まつばんだ交通センターに電話。まだ4時なのに電話が繋がり、職員の方が応答してくれた。バスが来ない旨伝えると、その返答を待っている間に、遠くの方からバスの姿が。電話越しに失礼して、バスに乗車。初っ端から先行きが危ぶまれるスタート。

屋久杉自然館から荒川登山口へのバス

3月上旬はピークシーズンではないようなので、屋久杉自然館5時の始発バスに乗車。荒川登山口までは35分ほどの道のりだが、これからハイキングをしないといけないので、眠りに落ちてしまってはまた体を運動できる状態まで始動させるのに時間がかかるため、バス内では寝落ちしないように耐える。

荒川登山口に到着すると、ガイド付きのツアー参加者の多くは、朝ごはんを取り始める。道のりは長いが、空腹ではないし、なによりこの間にスタートした方が、混雑を避けられそうだったので、軽くストレッチをして、登山口入り口のボックスに登山届を提出したらハイキング開始。

ハイキングのスタート時の空にはくっきりとした月の姿

集団を引き離して勢いよくスタートしたものの真っ暗。月明りだけが頼りな状態。懐中電灯を持ってくることを完全に忘れた。ひとまず携帯のライトで対応。バッテリーが持ってくれることを願う。この日は、星も見えるくらいに空が澄んでいたので、快調に進んで行く。

前半のトロッコ道は快調

縄文杉までの案内地図

縄文杉までの道のりは大きく2つに分けられる。前者は、荒川登山口から大株歩道入り口までの約8.1キロのトロッコ道。その名の通り線路の上を歩いていくので、平たんな道のりにちょっぴり物足りなさと退屈さを感じる。特に往路の初めは、辺りが暗いこともあり、全く先に進んでいる気がしない。

後者は大株歩道入口から目的の縄文杉まで、距離にすると約2.5キロほどだが、文字通り山登りになる。

観光協会で頂いた案内図には、それぞれのポイントまでの距離と所要時間が記載され、ペース配分を保つのに非常に役立つ。

ヤクシカに遭遇

荒川登山口をスタートしてから45分くらいの時間が経過すると、ようやく空に明るさが広がり始め、携帯電話のライトが不要となる。バッテリーもそこまで消費しなかったので、何とか乗り切れた。

明るさとともに、足下に目をやると、本当に線路の上を歩き続けていることを認識させられる。非常によく整備されているので、歩きやすい。

かつては小杉谷は集落があり、この山奥に小中学校まで立てられて、児童が学んでいたという。廃校となり、集落もなくなったいまは人影もなく、ひっそりとしている場所に、突然、シカが現れる。動物が苦手なので、野生の狂暴なシカだったらどうしようと距離を一定に保つ。すると気配を察知したのか、足早に森に逃げて行った。

杉の合間から朝日が覗く

朝日が昇り始めると、快晴の空がハイキングのペースを速める。5時40分に荒川登山口を出発してから、1時間ほどの6時50分に楠川分かれに到着。

このポイントではバイオトイレが設置されているのでトイレ休憩。水で流さずに、土が排泄物を分解・処理する。ついでに、チョコレートでエネルギーを補給して先に。

線路の枕木には苔が生息 

平たんなトロッコ道と言えども、雨の日にここを歩くとなると、滑らないように注意も必要となり、体力が一層、消耗しそう。改めてこの日の天気の良さに感謝。

ハイキング道から見えた翁岳

快晴の空は、ハイキングコースから翁岳が見渡せるほど。スタートが早かったせいか、あまり他の登山客とも一緒にならず、静かに自然の中の歩みを楽しめる。中には、競歩のようなスピードで追い越していったグループもいたが、全体的にトロッコ道は、まったく混雑がなく快適に歩けた。

出発から約2時間、7時50分に大株歩道入口に到着。ここにもトイレがあったので、トイレ休憩を兼ねて10分ほど休憩。

後半、いよいよ登山のスタート

大株歩道入口の案内板

荒川登山口から大株歩道入口までのトロッコ道が前半とすると、正直なところハイキングと形容したほうがよい道のり。大株歩道入口から縄文杉までは登山と言うのにふさわしいだろう。

看板には、往復の所要時間が4時間、10時までにこのポイントを出発するよう注意書き。まだ8時なので時間には十分余裕がある。

急な階段から登山がスタート

大株歩道入口の出だしから急な階段。これまでの道のりとは全く違うという覚悟が芽生える。ここまでのトロッコ道は迷う術もなく、ただ線路の上を歩けばよいだけだったが、ここからは、大部分のパートが登山道が整備されているが、時折、ピンク色の目印で行く先を確認すべきポイントがいくつかある。しかし、彷徨うほどの複雑さではないので、ガイドなしでも問題はない。

木の根が張り巡らされるとはまさにこのこと

さすがにトロッコ道とはことなりすいすいと進んでいる感じはせず、コツコツと登っていくのみ。さらに随所に、思わず見とれてしまう自然の美しさが木々によって作り出されており、写真にその姿を収めたい衝動に駆られる。もちろんその写真がこの壮大な自然を表現するには十分でないことは承知しているが…。

ウィルソン株は中から見上げるとハート型に

8時20分にウィルソン株に到着。道中、写真を撮って立ち止まる回数が多かったせいか、目安となる時間通り。これまでのように、想定より早い時間ではない。

先に到着していた大学生のグループが、ウィルソン株の中から空を見上げると、ハート型に見えることを教えてくれた。10分ほど休憩して最後の縄文杉までラストスパート。

地図によると、残り約1.9キロ、85~105分の所要時間。

ゲストハウスで出会った体育会系の大学生がきついと漏らしていたのは、恐らくここからのパートのことだろう。一体どんな道のりが待ち受けているのか。

少し急な上り坂もあったが、ほとんど階段が整備されているので、それほど足への負担がかかるわけではない。むしろ心配をよそに順調に進み、継続して時折、ユニークな木々の写真を撮りながら先を行くが、想定所要時間より早く、ウィルソン株から1時間ほどで縄文杉に到着。

縄文杉とついに対面

縄文杉

頭に入れた想定所要時間と、ゲストハウスで出会った体育会系大学生の情報から、まだまだ先と思いながら歩みを進めていると、いつの間にか縄文杉に到着。正直、拍子抜けしたくらい。所要時間は約3時間40分。想像していたよりも、楽にたどり着けた。天気がよかったのも奏功したのかもしれない。

角度を変えると全く違う姿にみえる縄文杉

ロールプレイングゲームでいうところのラスボスのような存在感。でも、縄文杉は敵はなく、この地を数千年にわたり見守り続けている主なのだ。人間では成しえない長期の生命力を少し分け与えてもらうべく、少しでも近づきたいところなのだが、残念ながら縄文杉の保全のため、展望デッキから眺める形になる。できれば、縄文杉に触れて両手を伸ばしてハグしてみたいところだが、観光客の数を考慮すれば、縄文杉との距離を保たせる、自然の保護の観点からも賢明な選択だろう。

少なくともこうして対面することができたし、大木ゆえ、数十メートル離れた距離でも湧き出るパワーが届いてきそう。しばらくデッキに腰かけ、縄文杉と対峙。

縄文杉との惜別後、往路の道のりへ

帰りのバスの時間から逆算してギリギリまで縄文杉と一緒にいたいところだが、まだまだ縄文杉に登ってくる観光客の数を考えると、狭い階段の道のりは互いに融通しないといけないので、想像以上に時間取られる。ということで、10時に縄文杉に別れを告げて下山開始。

竹皮包みのおにぎり弁当

帰りは下りのパートが多いので、行より早く11時15分頃に大株歩道入口まで戻ってこれた。時間も丁度よい頃合いなので、昼食休憩。ゲストハウスで事前に手配していたおにぎり弁当。大自然の中で、ハイキング/登山の後に食べるものは、シンプルだけれども味わいが増す。12時まで少し休憩を取って再出発。

南中高度を過ぎた太陽が森に差し込み、木漏れ日に照らされる。行きは、暗くてよく見えなかった場所にも、美しい自然が広がっているのに気付かされる。

驚かされたのは川の水の美しさ。朝は暗くて、水の色は全く伺い知ることができず、流れる音に川の存在を認識したまでだったが、こんなエメラルドグリーン色の川がハイキングコースのすぐそばを流れていたとは。

14時30分、荒川登山口に到着。

観光協会の方に進められたプランでは、荒川登山口16時発、屋久杉自然館16時35分着、そこから16時45分発の宮之浦港行きのバスでゲストハウスに戻ってくるというものだった。しかし、想定より早く、荒川登山口15時発、屋久杉自然館15時35分着、その後、15時48分に屋久杉自然館を出発する、紀元杉~から合庁前行きのバスに乗車して、ゲストハウス近くのバス停まで戻ってくることができた。

疲れた体を温泉で癒す

想定より早く戻ってくることができたので、歩いた体をケアすべく温泉へ。バスで向うこともできたが、バスの時刻を気にしながら急かされて風呂に入るのは御免なので、翌日、屋久島一周のために借りた自転車で尾之間温泉へ。グーグルで調べようも、自転車での所要時間が表示されない。30分くらいで着いたらと思ったが、アップダウンがきつくゲストハウスのある安房から1時間もかかってしまった。

屋久杉ハイキング/登山をした後に、まだこれだけ自転車をこげる体力が残っていたのは自分でも驚き。

尾之間温泉は源泉49度と、湯舟には5分と浸かっていられない熱さ。その熱さが歩き疲れた足を癒してくれる。

この温泉は、地域の銭湯として機能しているようで、入るときには「こんばんは」と大きな声であいさつをし、上がるときは「お先です」と言って去っていく。日本の銭湯では敬遠されるタトゥーも問題ないようで、地元の入湯客の中の何人かは体にデザインが彫られていた。

温泉でリラックスして最高の1日だったと思いたいところだが、まだ1時間かけて自転車で戻らないといけない。ちょっぴり自転車を選択したことを後悔。

それでもこの日の夜空は澄み渡り、ありえない数の星が迎えてくれた。帰りは幾分下り坂が多く、満天の星空に励まされながらなんとか、ゲストハウスまで到着。

長年思い続けた縄文杉との対面を果たせた最高の1日が終わった。

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