ニュージーランドハイキング@プナカイキ/南島西海岸 (前編)

ニュージーランド

前日のクイーンズタウンから11時間のドライブ旅でたどり着いたプナカイキ。長時間のドライブの疲れは残るものの、どんより雲の雨模様から一転、青空が垣間見えているのでハイキングを楽しまないわけにはいかない。ニュージーランド南島のこれまでのハイキングでは、湖や頂上が雪に覆われた山々の景色を楽しできたが、西海岸は別の大陸に移動したのかとさえ錯覚させられるくらい、全く様相が異なる。緑溢れるプナカイキのハイキングコースを紹介する話。

潮風と波の浸食がみせる絶景

今日のハイキングコースは天気と相談しながら、ポロラリ川に沿って歩こう。時間とも要相談だが、体調はすこぶる順調なので、少し長い距離でも問題なさそうだ。

まずは、トゥルマントラックに到着。入り口の反対側の道路に駐車場に車を停めて向かう。海岸沿いの15分ほどのコース。

道路を車で走行中に既に気づかされていたが、ハイキングコースの中に進むと、別の大陸の熱帯雨林に迷い込んだような錯覚に陥るほど、これまでニュージーランドの南島で見てきた景色とは全くの別物。

乾燥した空気で、ハイキング中はリップクリームが欠かせなかったほかの地域とは違い、湿度も高い。そのせいもあり、緑豊かな森林が広がる。

ジャングルのようなハイキングコースを進んでいくと、海岸まで降りれるように階段が整備されている。晴れ間が雲に覆われ、少し雨粒が落ち始めたが、天候が荒れる気配はなかったので、そのまま海岸へ。

潮風と波によって長い年月をかけて浸食された岩山には、自然の洞窟のようなスペースが出来上がっている。波は穏やかとは言えないが、荒々しい様子もないので、その洞窟の中へ。

パラパラと舞っていた小雨から身を守ってくれるような広々とした空間。振り返ると波を立てる海が広がる。満潮の際には、この洞窟のあたりまで波が押し寄せるのだろうか。この空間が作り出されるのに要した年月を思うと、人間の営みはなんと刹那だろう。

朝から大自然と対峙して、ハイキングができる贅沢な時間。

トゥルマントラックは15分と表示された案内板の通り、それほど時間は要さず後に。

南米?東南アジア?NZのイメージとかけ離れた自然

トゥルマントラックに別れを告げた後は車で移動。10分も運転しないうちにPororari Punakaiki Loopの駐車場に。この駐車場からWaikori Roadの駐車場まで8キロ、所要時間は2時間30分と表示されている。Waikori Roadの駐車場からこの車を停めた地点までどのように戻ってくるかが、いまいちよくわからないが、なんとかなるだろう。このハイキングも2時間ほどなので、駐車場に戻ってくる体力も余りそうだ。

目の前にそびえる断崖絶壁の岩山に生い茂る植物、湖と雪山の景色に見慣れたニュージーランドのハイキングから一転、南米か東南アジアに移動したのだろうかと本気で勘違いさせられる風景が出迎える。ここは本当にあのニュージーランドなのか。

雲行きが少し怪しくなり始めたが、雨が降らないことを祈るのみ。

駐車場から少し歩き進めると、10時10分ごろポロラリ川トラックの入り口の案内表示に到着。この川沿いのハイキングコースを進み、どこかの地点でInland Pack Trackとの合流地点で、引き返してくればポロラリ・プナカイキループのハイキングコースを堪能したことになるだろう。と、頭の中でイメージをしていたが、実際には思わぬコースを突き進むことになるとは、この時は予想すらしていなかった。

これまで見てきたニュージーランドの川は、山々からの雪解け水が溶けだして流れを作り、少々深くても、その透明度のおかげで川底まで十分、透き通ってみえた。しかし、この西海岸の川の様子は全く異なる。

前日の雨の影響もあるだろうが、透明度とは無縁の濁った水。森の中を大蛇がうねるように水流を形成している。今いる場所がニュージーランドという事実に疑いをかけたくなるくらい。どこか南米のアマゾンやギアナ高地にでも迷い込んだのではなかろうかという錯覚。

晴れ間が少し出たかと思ったら、10時45分頃から雨が降り始める。木陰や岩陰の中を縫うハイキングコースでは、ハイカーは少々の雨では大きな影響を受けない。レインジャケットでまだ十分。

ハイキングコースはすべてとはいかないが、歩道が整備されている箇所も多く歩きやすい。歩き始めてから、1人別の旅行者とすれ違ったくらいでほとんど人がいない。

川を流れる水が織り成す音と、時折落ちてくる雨粒が木々の葉に打ち付ける音が響き渡る以外は、静寂に包まれる。土砂降りの雨に見舞われたら、この森の中で引き返すのにも大変になりそうだが、天気予報通り、荒れそうな気配はなさそうだ。

静けさの中で歩みを進めていくと、1時間ほどで分岐点に差し掛かる。時間と装備の観点からPaparoa Trackを選択するのは賢明ではないので、Inland Pack Trackに進むことに。

このとき頭に描いていたのは、インランドパックトラックを通って、プナカイキ川の方へと抜ける南側のルートを辿るハイキングコースの選択。

しかし、実際には南側ではなくBullock Creek Roadに繋がる北側のルートを進んでいた。この地図を確認すればよかったのだが、Pororari Punakaiki Loopというハイキングコースの名前に、プナカイキ川の方に抜けて周回するようなコースになっているのだろうと勘違いをさせられた。

そんな勘違いをしていることに気づかされぬまま、インランドパックトラックを進んで行く。途中で鳥に遭遇。進行を妨げないように立ち止まっていると、勇敢にもこちらに向かってくる。人馴れしているのか。

あれよあれよという間に足下までやってきて、ハイキングシューズを口で突いてくる。スキンシップ?あまり動物は得意ではないがこれくらいのサイズならば、まだ恐怖心を抱くところまではいかない。

レインジャケットのフードで雨粒から身を守っていたが、気が付けば再び雲の合間から青空が覗きはじめる。少し日が照り付け、歩行距離も重なったのもあり、体がわずかに汗ばみ始める。

それにしても目の前に広がる森の景色は、何度も言うが本当にここがニュージーランドと感じさせてはくれない。少なくとも、これまで観てきた南島の景色とは一線を画す。雨の多い南島の西海岸ならではの緑豊かな風景。この地域を訪れた人が、お勧めと言っていた理由がようやく理解できた。

先程の分岐点で2人組の旅行者とすれ違った以外は、他のハイカーを見かけることもなく、静かにハイキングを楽しめるのも評価が高いポイント。

何か特別な景色が待ち受けているわけではないかもしれないが、この自然の中を歩いているだけで心穏やかになっていくのが感じられるハイキング。

谷に広がるもののけの世界観

思い描いていたハイキングコースとは反対側のルートを進んでいるのにも気づかぬまま、12時30分ごろ、Cave Creek Memorial Trackの分岐点に到達。

その名のとおり洞窟になるだろうから、行く先はハイキングコースと繋がっているはずはなく、行って帰って来ることになる。

案内表示板では往復50分となっているので、7,8がけとして、30-40分くらいなので、時間的には問題ない。せっかくなので行ってみよう。

知らぬ間に、川辺から随分と離れた高さに到達していたようで、行きはひたすら下り道。帰りはこれが上り坂になるかと思うと、少し気が重くなるような勾配。

最後の谷に降りる地点は階段が整備されており、無事に到着。そこに待ち受けていた景色はまさにもののけの世界!

滝とまでは呼べない大きさかもしれないが、渓流からマイナスイオンが湧き出ているのが感じられる。全く何の期待もしていなかったが、その分、目の前に広がるもののけの世界に心が躍ると同時に、自然からパワーを分け与えてもらえるような気持ちになる。

案内表示には往復50分と表記されていたので、さっさと降りて帰ってこようと思ったが、時間が許すならばいつまでもここに居たい!と思わせてくれるくらいの場所。

何か、インスタ映えするような特徴的な景色ではないかもしれない。しかし、水の流れ、計り知れないくらいの大きな岩、そこに蘇生する植物、すべての調和のバランスが計算されつくしている。長い年月をかけて自然が作り出した風景に心を奪われる。

この感動をさらに引き立てるように、雨の多い西海岸では貴重な太陽の光が注ぐ。照らされた風景はまた違った表情を見せ、エネルギーがより一層みなぎる。

さくっと見て回るはずが、近くの岩に腰を下ろし、しばらく自然と対峙する。こんな場所に巡りあえるとは。そして、太陽の光のプレゼントまで。

ハイキングはまだまだ残されているが、続きは後編で。

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