コロンビアでの初バス旅は想像以上の長旅に

コロンビアに赴任してきからというものの、全国的なデモやコロナの影響で、旅行に出かけられるような雰囲気ではなかった。しかし、コロンビア国内でワクチン接種も進み、この間、テレコミューティングのためにブラジルまで旅行したこともあり、旅行に対する心理的なハードルが下がった。3連休を利用してコロンビア赴任後、初となるバス旅でポパヤン(Popayán)という街に向かうことに。

オンライン予約はスムーズ チケットは割安

月曜日が祝日となっていた週があった10月に旅の計画を立てた。3連休ということもあり、早めにチケットを予約した方が賢明と判断し、オンラインで2週間ほど前に予約。サイトでは、コロンビア第三の都市・カリから1時間ごとにバスが出ているようで、座席指定も可能となっており、クレジットカード決済後、QRコードの付いたチケットをダウンロード。バス旅といえどもコロンビア、案外テクノロジーが進んでいる。感心。

金曜日の午後3時30分発のバスに乗車すべくターミナルを目指す。ターミナル到着手前の道路は連休前のせいか混雑していた。しかし、考えてみるとおおくのコロンビア人は土曜日も働くので、彼らにとってはこの週は3連休ではないのだ。この混雑はターミナル周辺のいつもの喧騒であろう。

オンラインで予約したチケットには前述の通りQRコードが付いていたが、そもそもどの出発口からバスが出るのかがチケットには記載されておらず、バスターミナルには電光掲示板のようなものも存在しない。バス会社の職員に尋ねると、まずチケットを窓口で引き換えるように指示された。

いやいやもうチケットにQRコード付いているし、予約の際に座席指定もしたから、乗車時にQRコードを読み取られて、そのままバスに乗ればいいだけじゃないの?初めてのコロンビアでのバス旅。いまいち勝手が掴めない。

指示された通り、窓口に並んでチケットと引き換える。特にQRを読み込むわけでもなく、名前とIDで予約を検索していた。オンライン予約の時は、ハイテクさに驚いていたが、一気にアナログ感が漂う。旅の先行きに暗雲が立ち込める。

唯一、オンラインで予約してよかったことはその価格差。窓口では25,000コロンビアペソ(約750円)だが、オンラインでは18,000ペソ(約540円)で購入できた。

カリのバスターミナルは、主に2階がチケット売り場、3階がバスの出発口となっている。3階に上がっても、旅人に出発を知らせる電光掲示板らしきものはなく、係員が行き先を大声で叫んでいる。耳を澄まして、自分の行き先を聞き取らなければならない。

3連休となる人は少ないのか、やはりターミナル内が人で溢れているということはなかった。コロナ対策の観点からは、混雑していなくて助かった。

まさかの満員御礼で出発

定刻の出発時刻を過ぎても、係員のポパヤンという叫び声は聞こえてこない。ラテンなので、時刻通りに出発することは期待できないが、仮に乗り遅れたとしても1時間おきに便はあったのでどうにかなるだろう。

時間通りに事が進まないのにはもう慣れたが、やはり待つこと自体は忍耐が求められ、徐々にイライラが募る。16時になったので一度係員に尋ねるも、「まだ」とつれない短い返事。辛抱強く待つしかない。さらに5分ほどしてもう1度たずねたら、奥に停まっているエコというバスに乗ってと指示される。

奥に停められているくらいだから、まだまだ出発する気配もない。言われるがままに乗車し、指定した座席番号を探すも、番号などあったものでもない。オンライン予約した際は、正面向かって左に2席、右は1席の座席配置だった。

コロナの感染予防の観点から、右側の1席の最前列を指定したが、そもそもバスの座席配置が左右対称の2席ずつと異なる構造。オンライン予約の時の感動がどんどん薄れていく。車内にはすでに3,4人に乗客がいたが、運転手の姿もなく、午後の太陽に照らされた車内の温度は不快さを感じるレベルだった。

額に汗がにじみ出そうになった16時20分頃、ようやく運転手が乗り込みバスのエンジンをかける。エコという名が何をもってエコなのかは不明だったが、エアコンのない車で、その意味ではエコだった。

定員は20名ほどだが、乗客は結局4,5人ほど。オンライン予約の際は、1時間おきに便があったが、実はあまり需要のない路線なのか。と思ったら、運転手とタッグを組む呼子がパパヤンと叫びながら、路上で待つ乗客の注意を引き付ける。まさかの各駅停車並みの各地点で停車しては乗客を拾っていく。予定ではカリからポパヤンまでは3時間だが、集客をしながら本当に3時間で到着するのか。

そんな不安を抱かされたものの、ターミナルで待たされた疲労からか眠りに落ちてしまった。太陽が西日に変わり、暑さを感じて目が覚める。携帯に目をやると、1時間近くも眠っていた。汗ばんでいるのは、バスにエアコンがない上、バスが停車していたため、風通しも皆無だったせいだ。

いまどの地点だろうか。地図アプリを使用してGPSで確認すると、まさかのまだカリ市内。人が寝ていたこの1時間、何をしていたの?もうこの時点で17時を過ぎている。18時55分の目的地到着はもはや不可能。

ターミナル以外での主要な乗り場なのか、とはいっても普通の公園の前に停車しているだけなのだが、ここで乗客が集まるまでひたすら待つ。予約時は1人席側で感染予防になると安心していた座席も、座席指定は存在せず、結局他の乗客と2人席で隣り合わせ。

いつもの旅なら、スペイン語の練習にもなるので、ちょっと話しかけて会話を楽しむところだが、隣に座ったおじさんの鼻がマスクから出ているのが見えて、会話する気が起らなかった。スペイン語が分からない旅人のふりをしてやり過ごす。

満員御礼となったバスはいままでの遅れを取り戻すかのようなスピードで道路を駆け抜けていく。日没との競争だが、あっという間にライトで道路を照らさないと十分な街灯がないエリアに差し掛かった。途中の主要停車地のサンタンデール・デ・キリチャオにて乗客の入れ替え。多くの人がバスを降りたため、再び満員御礼になるまで呼子が道路で客引きに励む。

再び車内が立ち乗客で溢れるくらいになったら、出発。辺りはすっかり闇に包まれ、片道一車線の山道を進んでいくにつれて、標高も上がり肌寒さを感じる。交通量はそれなりにあるので、夜道の移動にもそれほど不安を感じないし、道路も舗装されているので、車体がガタガタと揺れることはそれほどなかった。

終点までに、徐々に乗客が降りていき家路に向かっていく。街灯の明るさに照らされたポパヤンの街に入り、無事にターミナルに到着。結局、予定時刻より3時間ほど遅れて到着。5時間前後も車内にいたせいか、どっと疲れに襲われた。コロンビアのバス旅、満員御礼で出発システムに当たる可能性を覚悟しておく教訓が得られた。

タイトルとURLをコピーしました