イギリス南部の都市は海岸線が広がり、ロンドンから列車で１時間ほどで訪れることができるビーチタウンとしても人気だが、その美しい海沿いの景色に欠かせないカモメ。フィッシュアンドチップスを海辺食べていたら、カモメが空から降りてきて魚のフライを持っていかれた、あるいはカモメの糞が頭に落ちてきたなど、カモメにまつわる事件は絶えないのが常だが、今回はAirbnbに滞在していたときに起きたカモメとの闘いの話。
キッチンが使えないAirbnb
予約しておいたAirbnbはチェックインが午後２時以降ということだったが、早く到着する予定だったので家主にアーリーチェックインのリクエストを依頼すると、快く応じてくれた。今回の宿は、ビーチから歩いて５分ほどの距離にあり、周辺の宿と比較してもお値段もリーズナブルだったので、友人と合流するまで５泊ほどお世話になることに。
家主とはワッツアップでやりとりをして午前11時頃にAirbnbに到着。すると、荷物を置くだけでなく、部屋の清掃も終了しているので、チェックインも可能ということだった。ひとまず簡単に家の鍵の開け閉めなど基本的な滞在ルールを教わる。チェクインは午後からと思っていたので、計画通りそれまでの時間は部屋でくつろがずに街に繰り出す。
日用品の買い物などを済ませると、無性にサーモンが食べたくなり、今夜のメニューが決定。早速スーパーに買い出しに向かい、サーモンの切り身のほか野菜などを購入。食材が一杯に詰め込まれたエコバッグを抱えながら宿へ戻る。
その途中、なぜか不思議な胸騒ぎがしてきた。チェックインをした際に家主は玄関の鍵の開け閉めやリビングルームの案内等はしてくれたが、キッチンは案内してくれなかった。もしやこのAirbnbはキッチンが使えないのではという不安がよぎる。
宿に戻り、部屋に置かれていたゲストブックを確認すると、やはりゲストのキッチン使用は認めないと書かれている。念のためAirbnbの予約サイトをチェックすると同様の記載。予約したときになぜ気づかなかったのだろうか。ルールで定められている以上は仕方ないが、この買ってきた食材はどうしようかと途方に暮れる。
ひとまず冷蔵庫に保管させてもらうよう、家主と交渉だ。しかし、残念ながら不在。電話しても繋がらない。勝手に、冷蔵庫を開けるのは失礼だろう。しばし対策を考える。
窓際に出現したカモメ
この日は曇り空のため、夏と言えども暑さはなく、むしろ肌寒い天気。これなら少しの間、食材を部屋の中に保管していても問題はないだろう。とはいえ、冷気も必要だろうと考え、滞在する部屋の窓を少し開けて、少し肌寒い海風を取り込む。その冷気を浴びさせるべく、窓際に購入したサーモンなどの食材を置く。
しばし、部屋の中でくつろいでいるうちにうとうとと軽い昼寝に陥るが、ふとカモメの鳴き声で目が覚めた。最初は、海沿いのアパートに滞在しているので、カモメの存在もより近くになったのだろう程度に思っていたが、どうもカモメの距離が近いような気配がする。
慌ててベッドから起き上がると、食材保存のためにわずかに開けた窓の隙間からカモメがくちばしを伸ばして、食べ物を奪い取ろうとしているではないか！これは事件だ。
急遽、窓際に置いていた食材を一旦すべて回収。窓もしっかりと閉める。ふと、カモメは食べ物の匂いを嗅ぎつけてきたのか、あるいは視覚で食べ物を発見してきたのか疑問が沸いたが、素人の想像では後者だろう。
食べ物は窓際から引き上げられた後もカモメは一向に引き下がらない。むしろ、その鋭い口ばしで窓を激しく突き始める。カモメは意外と体も大きいので若干の恐怖すら抱かされるが、窓はきちんと閉まっている上、開け閉めにはかなりの力がいるので、さすがに口ばしで窓を開けられることはないだろう。
ワッツアップで家主に事情を説明し、冷蔵庫を使わしてもらうことに。無事に食材は保管され一安心。これで一件落着と思いやそうもいかなかった。
意外に記憶力もいいカモメ
Airbnbでの滞在２日目、窓から差し込む朝日で目が覚めたら理想的だったが、朝方からコツコツと何やら耳慣れない音が部屋に響く。家主の何かの趣味の活動なのか？目が覚めてしまったが、しばらくベッドから起き上がらずにゴロゴロ。
数分程度のインターバルを置いて、その音が部屋中にこだまする。音の発生源の方向を確認しようとすると、家主の寝室がある下の階ではなく、どうやら窓際から聞こえてくる。
ベッドから起き上がり、窓の外を眺めると、そこにいたのはカモメ！その口ばしで窓を突いていた。まさかそんな音が目覚まし時計代わりになって起こされるとは。
昨日と同じカモメかどうかは認識できなかったが、まだ食べ物があると思っているのだろうか。そうだとすれば、カモメの記憶力はかなりいい。海岸近くのアパートはどれも似通っていて、どの家かを記憶するのも困難なはずなのに。
このカモメの記憶力も去ることながら執念もすざましく、口ばしで窓をコツコツと突く行為がその後2，3日も続いた。
海辺近くの素敵なAirbnbに滞在したという記憶を残すはずが、今回の滞在はカモメとの闘いとして記憶されることになった。Airbnbを予約する際は、キッチンなどの設備が使用できるかどうか入念にチェックすることを忘れないように。
